今月の音遊人
今月の音遊人:城田優さん「音や音楽は生活の一部。悲しいときにはマイナーコードの音楽が、楽しいときにはハッピーなビートが頭のなかに流れる」
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今月の音遊人:綾戸智恵さん「『このコンサート安いわー』って言われたい。お客さんに遊んでもらうために必死のパッチですわ!」
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2017.12.1
2017年、デビュー20周年と還暦を迎えたシンガーの綾戸智恵さん。20周年の集大成となるアルバム『DO JAZZ Gokko』をリリースし、コンサートも各地で大盛況。小柄な見た目からは想像つかないパワフルな声と本音満載のトークが観客を魅了しています。音や音楽に対する考え方も、まさに綾戸流。エンターテイナーとしての覚悟がうかがえます。
『スワニー』やね。映画『スタア誕生』の中で歌われる歌で、この映画は何百回と観ましたから。両親が映画が好きで連れて行ってもらったり、テレビで放送しているのだったり。2~3歳の頃から観ていて、今ではDVDも持ってます。家で、何か作業するときに流したりしてるけど、この歌が好きだからというわけやないんです。映画はジュディ・ガーランドが若手の歌手で、あるおっちゃんと出会って恋に落ちて成功していくんやけど、そのおっちゃんは落ちぶれていくというストーリー。何で?って疑問がわくところがおもしろい。この歌は映画の中で聴くからいいんです。
家で音楽を聴くことはありません。他の人のも、自分のも。静かなほうがいいんよ、自分がやかましいから(笑)。聴くんやったら、義太夫節などが多いですね。これも人形浄瑠璃や歌舞伎が好きやからかな。
気分ひとつで耳障り、気分ひとつで天国心地。
いらんときに音が鳴っていると、ガクッときます。反対にシチュエーションにぴったり合った音が鳴っていると、これくらいええもんはないですね。たとえば、寿司屋に入ったらジャズより海の男の歌のほうが「いい魚出てくるやろなぁ」って思うんです。単純な話、気分やね。
救急車の音とか、すぐに何の音かわかるのは好き。反対に、冷蔵庫のようなブーンとうなっているような音は苦手や。何の音かわからないのが嫌なんです。烏の鳴き声もあかんわ。上からフンが落ちてくるのがイメージされるから。
音はええとこもあるし、悪いとこもある。私の声かて息子には「うるさい」言われてますけど、わざわざ聴きに来てくれはる人もおる。以前、紅白に出たときに、「あっ、リメンバーのおばちゃんや」とか「テネッ♪テネッ♪のおばちゃんや」て言われた。清水ミチコさんがテレビで物まねしてくれたおかげやね。そうやって覚えてもらうのは嬉しいことやね。
見に来てくれてはるお客さんやね。お客さんに楽しんでもらえるようやってますから。もう、必死のパッチですわ!お客さんはお金を払って来てくれてはります。それやのに「なんでこんなんに払わなあかんねん」って言われたらえらいことですわ。「このコンサート安いわー」って言われたい。チケット代に見合う、それ以上に楽しんでもらわなあかんって考えてますよ。お客さんには遊んでもらいます。ほら、遊女は遊んでないでしょ。遊女で遊ぶのはお客さん。せやから、私も音で遊んだことはないですわ。私は自分のことをアーティストとは思ってないんです。“音楽屋”ですね。“八百屋”が野菜を売るみたいに、私も「音楽をおひとつどうぞ」って売ってるんですから。
以前、ライブ中にすごく体調が悪くなって、もうこれ以上歌われへんってお客さんに土下座して謝ったことがあるんです。そうしたら、みなさんチケットを払い戻すどころか「延期の日を教えてね」と言ってくれはった。そういうお客さんが来てくれはるんです。「今日の綾戸はどんなか、ひとつ観に行こう」って。だから私も、どんな形であれ楽しんでもらいたいって思ってます。その日の自分を全部出した上で「来てよかったわ」と言ってもらえるよう、音で遊んでもらおうと思ってがんばってます。
綾戸智恵〔あやど・ちえ〕
3歳からピアノを始め、中学生の時からナイトクラブでピアノ演奏する。17歳で単身渡米。1991年帰国後に、大阪のジャズクラブで歌い始める。1998年にアルバム『For All We Know』を全国発売、翌1999年には後の代表曲となる『テネシー・ワルツ』『アメイジング・グレイス』を含む弾き語りアルバム『LIFE』をリリース。2003年には紅白歌合戦で『テネシー・ワルツ』を熱唱し、大きな話題をよんだ。その後もアルバム、ライブのほか、テレビ、ラジオ出演など、精力的に活動を続けている。
綾戸智恵オフィシャルサイト https://www.chie-ayado.com/