Web音遊人(みゅーじん)

上野通明

今月の音遊人:上野通明さん「ステージで弾いているときが、とにかく幸せです」

パラグアイで生まれ、幼少期をスペインのバルセロナで過ごし、ドイツ、ベルギーで音楽を学んだ上野通明さん。世界中で活躍するコスモポリタンであると同時に、日本の文化に根ざした邦人作曲家の作品を取り上げたリサイタルを開催するなど、多様な角度からチェロという楽器の魅力、可能性を探求している若き逸材に音楽への想いをうかがった。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

バッハ『無伴奏チェロ組曲』でしょうか。4歳のときに、ヨーヨー・マ『インスパイアド・バイ・バッハ』のビデオを観て、チェロという楽器に魅せられました。ヨーヨー・マがバッハ『無伴奏チェロ組曲』全6曲を弾きながら、アイスダンスなど各界の6人のアーティストとコラボレーションした作品で、「かっこいいな」と憧れました。両親にチェロを弾きたいと何度も手紙を書き、5歳のクリスマスにやっと買ってもらいました。バルセロナで師事した先生に「バッハが弾きたい!」と言ったら、「弾きたいなら弾いてごらん」と、第1番から自由に弾かせてくださいました。2023年、バッハ『無伴奏チェロ組曲』のアルバムをリリースし、ガット弦を張って、温かい人間味のある音色で自分なりの表現を追求しました。バロック奏法にはとくにこだわりませんでしたが、繰り返しのフレーズでは装飾音に変化を加えるなど、ごく自然な優雅さと遊び心を大切にしました。小さいころから多くの名チェリストの録音を聴きましたが、自身の録音の前によく聴いたのは、ギターやバイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバで録音された演奏。様々な楽器の演奏からインスピレーションを得て、この作品の魅力に迫ってみたいと思ったのです。

上野通明

Q2.上野さんにとって「音」や「音楽」とは?

言葉を使って自分の気持ちを伝えることがあまり得意ではないので、心の中にあるものを、チェロをとおして音楽で伝えられたらと思っています。生まれたときから、母や姉たちが奏でるピアノやバイオリンの音色に包まれて育ちました。音楽があるのが当たり前で、音楽がない人生というのは想像できないです。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

「遊ぶ」というと、一生懸命学ぶというより、余裕を持って楽しむというイメージがありますが、プロの音楽家にとっても、そういう要素は必要だと思います。音色の表情を楽しみながら、自由に遊びながら弾く。それが音楽の本質ですよね。オーケストラや室内楽とのコラボレーションでは、相手に合わせてクリエイティブなインスピレーションを刺激されながら演奏しています。それが音楽の醍醐味ですね。

上野通明

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

ステージで弾いているときが、とにかく幸せですね。気づいたら演奏が終わっていたというような集中力でコンサートが終わったときは、充実と喜びを感じます。音楽をやっているおかげで世界中の素敵な人々に出会い、たくさんの刺激を受けて自身の糧にしています。なかなかそう多くはないですが、コンサートが終わり、自分の演奏に満足でき、聴いてくださった方たちの反応もそれに呼応していただけたときの幸福感は最高です。

上野通明〔うえの・みちあき〕
パラグアイ生まれ。2009年、13歳のときに第6回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールで全部門を通じて日本人初の優勝。翌年2010年、第6回ルーマニア国際コンクール最年少第1位、ルーマニア大使館賞、ルーマニア・ラジオ文化局賞をあわせて受賞。その後も数々のコンクールで入賞し、ソリストとして国内外オーケストラとの共演を果たす。2021年には、ジュネーヴ国際コンクール・チェロ部門で日本人初の優勝およびYoung Audience Prize、Rose Marie Huguenin Prize、Concert de Jussy Prizeと3つの特別賞を受賞。現在は、ベルギーのエリザベート音楽院に在籍し、ゲーリー・ホフマンに師事。主にヨーロッパと日本で活発な演奏活動を行なっている。

オフィシャルサイト

オフィシャルFacebook オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

photo/ 宮地たか子

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

上野耕平さん

今月の音遊人

今月の音遊人: 上野耕平さん「アクセルを踏み続けることが“音で遊ぶ”へとつながる」

12380views

音楽ライターの眼

連載2[多様性とジャズ]マスク着用率が高い日本で“音楽と個人主義”が語れるのかを考えてみた

1968views

ヤマハギター50周年を機にアコースティックギターのFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギターFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

19436views

エレキベース

楽器のあれこれQ&A

エレキベースを始める前に知りたい5つの基本

3096views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

10036views

オトノ仕事人

あらゆるトラブルに対応できる、優れたリペア技術者を世に送り出す/管楽器のリペア技術者を育てる仕事

5661views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

8257views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

13596views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14636views

AOSABA

われら音遊人

われら音遊人:大所帯で人も音も自由、そこが面白い!

11419views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

6677views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29502views

大人の楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

19287views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14636views

音楽ライターの眼

アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭の「イル・トロヴァトーレ」でヴェルディを堪能する

2878views

オトノ仕事人

子ども向けコンサートを企画し、音楽が好きな子どもを増やす/コンサートプロデューサーの仕事

8171views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8087views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカを進化させる「クリップ」が誕生

16214views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

13161views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5402views

楽器のあれこれQ&A

講師がアドバイス!フルート初心者が知っておきたい5つのポイント

18079views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

6773views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9824views