
今月の音遊人
今月の音遊人:AIさん「本当につらいときも、最終的に救ってくれるのはいつも音楽でした」
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今月の音遊人:西本智実さん「音から『自然の摂理』に気づき、音楽は『起きているときに見る夢』」
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2025.7.1
指揮者として世界を舞台に活躍しながら、脚本や舞台制作プロデューサー、大学教授などの顔も持ち、「大阪・関西万博」ではローマ教皇庁およびイタリアパビリオンのアンバサダーを務めている西本智実さん。多才なマエストロの活動の中心にある、音楽への想いを聞きました。
生演奏やCDプレーヤーなどで聴くということではなく、“頭の中で再生して”聴いている曲で挙げると、ロベルト・シューマンの歌曲集『ミルテの花』の第1曲『献呈』です。
私は指揮者ですから、実際に音を出すことができるのはオーケストラリハーサルのときだけ。それ以外はいつも、楽譜を読みながら、または日常のさまざまな場面で、頭の中で音楽を再生しています。
ほとんどの場合、次のコンサートで演奏する作品や、先に予定されている楽曲を頭の中で再生し、構築作業をしているのですが、それとは別で、ふっと思い浮かべる音楽というものがありますよね。その中でもこの10年いちばん多いのが、この『献呈』なのです。こういった、歌とピアノによる歌曲は、公演では私自身が演奏する機会のない音楽。頭に思い浮かべることで、リラックスできているのかもしれません。
音から「自然の摂理」を知ることができます。例えば、たえず心臓は鼓動していますが、普段はそのことを意識していません。しかし、激しく緊張したときなど、その存在感と共に音と振動とドキドキリズム!を感じます。我々も身体のあちらこちらでさまざまな音を発していますので、生物や自然の音と共鳴したり安らいだりしています。
また、音楽は「起きているときに見る夢」だという考えが私にはあります。眠っている間に無意識に見る夢のことではなく、意識のある、または意識と無意識の間に見る夢です。
後者は私には瞑想と似ている感覚です。
その場合は、せせらぎや鳥のさえずりなど自然音などでその域に入るきっかけにしています。
赤ちゃんと幼児!ちゃんと見えてる世界があるんだな、と思います。
そして詩人です。または詩人の音楽家。
言葉にならないことを言語化または、音楽表現してくれる人。
これまで30か国以上の国で仕事をしてきました。外国で就労ビザで仕事をするということは、観光的な感覚とは全く異なる景色があります。
初めて演奏する国、共演する演奏家たちと文化的背景がたとえ異なっていても、音楽を通じて悲しみも共有することができます。作曲家に対する深い尊敬、人類の先祖たちへの敬愛や畏怖なども。
そんな価値観を共有しながら、音楽を一緒に創っていく。オーケストラ、オペラやバレエを基盤にした総合舞台では、さまざまな部署がある中、統合されたチームプレーとして、一つの作品を創り上げていきます。初めて出会った方たちとも、音楽を通じて繋がることができます。
我々の通常の公演では、マイクは使わずにその場で音が生まれて消えていきます。それはまるで雪の結晶や、ダイヤモンドダストのようです。零下25度の真冬の道を歩きながら、コートの上に美しい雪の結晶がついているのを見つけました。あまりにも美しく、手袋を外して手で触れると、溶けてなくなってしまいました。その美しいけれど儚いものに近い魅力を感じます。音も空中でキラキラしているダイヤモンドダストに似た美しさがありますね。
西本智実〔にしもと・ともみ〕
世界約30か国の各国を代表するオーケストラ・名門国立歌劇場・国際音楽祭より招聘。ダボス会議ヤンググローバルリーダー、大阪音楽大学客員教授、ビューティー&ウェルネス専門職大学客員教授、大阪国際文化大使、東洋文庫諮問委員他。日本を代表する芸術家として、ドキュメンタリー番組がCNNインターナショナル、ZDF、独仏共同テレビArteなどで放送・配信。
オフィシャルサイト
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文/ 高坂はる香
photo/ 宮地たか子(1枚目)
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