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トランスアコースティックギター「TAG3 C」

デジタル技術が広げるアコースティックギターの可能性──トランスアコースティックギター「TAG3 C」

アコースティックギターでありながら、ボタンひとつでエフェクトをかけたサウンドを楽しめるヤマハのトランスアコースティックギター。第1世代より多機能になった第2世代は、演奏や曲づくりの新しい相棒となりそうだ。

奏者の感性とインスピレーションを刺激する新感覚のギター

アンプやスピーカーを使わず、ギター1本でエフェクトをかけた演奏を楽しめるトランスアコースティックギター。2016年に初代モデルが発売され、ボディの形状や素材の違いでバリエーションを増やしてきた第1世代に続き、2024年11月、ギターでより幅広い演奏・表現を楽しむための機能を搭載した第2世代「TAG3 C」が発売された。
「第1世代は、最小限のエフェクトのみを搭載し、気持ちよくエフェクトサウンドを楽しめることが特徴です。一方、第2世代は、エフェクトの種類を増やし、ルーパーとオーディオ再生機能を新搭載することで、より直感的でクリエイティブな演奏・作曲ができるようになっています」と、商品企画を担当する江國晋吾さん。江國さんは、トランスアコースティックギターが影も形もなかったときからプロジェクトの立ち上げに参加。開発陣が持っていた100を超えるアイディアをもとに試作を重ね、製品化のために奔走してきたという。

(写真左)商品企画担当の江國晋吾さん。(写真右)マーケティング担当の和田哲弥さん。

(写真左)商品企画担当の江國晋吾さん。現在は商品企画だが、第1世代から第2世代にわたって開発・設計を担当。(写真右)マーケティング担当の和田哲弥さん。「予想以上の反響の大きさをうれしく思っています」と語る。

最新機能で創作活動をより便利に、楽しく

第2世代「TAG3 C」で進化した点はいくつかあるが、アコースティックギターの可能性を大きく広げるのがルーパー機能。コード演奏をギター本体に録音し、再生しながらメロディを演奏できる。
「ルーパー自体は一般的なものですが、外部機器を接続することなく、ギター本体からループフレーズを鳴らすことはこれまでにないアイディアです。録音は最長30分できるので、フレーズを重ねていく多重録音や、自分の演奏を録音・再生して振り返りをすることもできます。さらに、ギターが上手な人に自分の『TAG3 C』を弾いてもらい、録音したデータを自宅で再生して参考にするといった使い方もできます」(江國さん)
なお、ルーパー機能は本体のサイド(側板)にあるボタンでも操作できるが、奏者が表板の円形マーク部分を叩いてループフレーズの録音から再生に切り替えられるタップセンサーを採用し、ストレスのないスムーズな操作が可能になっている。
「開発で苦労したのは、奏者が演奏時に発する音と、センサーの操作のために叩く音をどうやって選別するかということです。というのも、演奏中、奏者の手指は表板のさまざまな場所に触れますし、ギターを打楽器のように叩く奏法もあります。演奏の邪魔をせず、かつ操作の打音のみに反応する仕組みを考えるうえでは多くのトライアンドエラーがありました」(江國さん)
もうひとつ、第2世代で新たに搭載されたのがBluetooth接続によるオーディオ再生機能。第1世代のときからその実験を行っていたというが、楽曲やバッキングトラックを流しながらギターを弾いたり、弾き語りの歌唱の練習をしたりできる。

(写真左)TAG3 C NT(ナチュラル)(写真右)TAG3 C SDB(サンドバースト)

トランスアコースティックギター「TAG3 C」

(写真左)ハイポジションでの演奏がしやすいカッタウェイを採用。(写真右)ヤマハロゴとペグの色は、高級感のあるシャンパンゴールド。ストラップピンと、シールドをつなぐエンドピンジャックも同じ色で統一されている

2基のアクチュエーターがかなえるリアルな音と響き

第2世代の進化を実現するための鍵となるのは、ギター内部に設置する2基のアクチュエーター。
「ギターの音は、サウンドホールだけでなく、表板・裏板などからも出ています。第2世代でエフェクトの精度を向上させ、ルーパーで再生するバッキングやオーディオの音質を上げるためには、ギターの前側(表板)からも音を出す必要があることがわかりました」と江國さん。
さらに、独自の研究により、楽器の前側と後ろ側で鳴らす音域(周波数)を分けるほうが音色や響きがよくなることが判明。表板では高音域、裏板では中低音域を鳴らす仕様を採用しているという。
「それぞれの音域を再現するのに適したアクチュエーターを開発し、表板と裏板で振動の方式を変えています。さらに、加振器を楽器のセンターに近い場所に置くほど低い音が出ることがわかったため、表板と裏板で設置する場所を調整しています」(江國さん)
「TAG3 C」の魅力は、演奏や作曲に関わる一連のプロセスを、ギター1本で実現できるところにある。
マーケティング担当の和田哲弥さんが教えてくれた。
「機能が増えた第2世代は、ギターへの造詣が深く、即興や作曲といった創造的な表現を追求するギタリストに適していると考えています。昨年秋に発売以来、SNSで世界中のギタリストが演奏動画や楽器の評価を発信しており、ルーパーやオーディオ再生についてコメントのやり取りが活発に行われています。ギター系ユーチューバーやインフルエンサーの発信をきっかけに多くの方々に興味を持っていただき、店頭で第2世代を体験していただけたらうれしいです」
「ギタリストが喜んでくれるギターを作りたい」という開発陣の思いから生まれたトランスアコースティックギター。アコースティックギターでありながら既存の枠を超えた「TAG3 C」を、一度手にしたら夢中になって弾いてしまうことだろう。

第2世代「TAG3 C」で進化したポイント

ギターとしての音質の向上や、本体から迫力あるデジタル音を鳴らすための機能が新搭載されている。

●3種類のエフェクト
従来の「コーラス」「リバーブ」に「ディレイ」が追加され、3種類のエフェクトの組み合わせができる。エフェクトのかかり具合は、本体のつまみに加えて、専用アプリ「TAG Remote」で細かく調整可能。トランスアコースティックギター「TAG3 C」

●音と素材
輪郭のはっきりした音が鳴るシトカスプルース(単板)の表板と、温かみのある音色が特徴のマホガニー(単板)を使った側・裏板の組み合わせ。表板にA.R.E.(Acoustic Resonance Enhancementの略。短期間で木材を熟成させ、使い込まれた楽器のような鳴りを生み出すヤマハ独自の木材改質技術)を施すことで豊かな響きを実現している。
トランスアコースティックギター「TAG3 C」

●ルーパー機能
ギター本体に演奏を録音し、ループ再生する新機能。ループフレーズは専用アプリに10個まで保存が可能。叩いて操作するタップセンサーの反応が弱いときは、専用アプリでセンサーの感度を調整できる。
トランスアコースティックギター「TAG3 C」

●オーディオ再生機能
手持ちのスマートデバイスとBluetooth接続すれば、ギター本体をスピーカーにしてリスニングを楽しめる。好きな楽曲を流しながらのギター演奏も可能。ギターを振動させて音を出すため、臨場感のあるサウンドが鳴る。
トランスアコースティックギター「TAG3 C」

●マグネット式充電ケーブル
フル充電で最大5時間半の演奏が可能。充電中のギターを手に取ったときケーブルが自然に外れるよう、マグネット式を採用。バッテリー(リチウムイオン電池)が消耗した際は、国内のヤマハ特約店で交換できる。
トランスアコースティックギター「TAG3 C」

トランスアコースティックギターの発音の仕組み

マイク(ピックアップ)が弦の振動を拾い、電気信号に変換してエフェクト処理し、ボディ内部のアクチュエーター(加振器)へ送信。アクチュエーターがギター全体を振動させ、奏者が弾く実音に重ねてエフェクト音を鳴らす。
トランスアコースティックギター「TAG3 C」

アクチュエーターの仕組み

第2世代では、楽器を振動させるアクチュエーター(加振器)を1基から2基に増やすにあたり、ギター内部の構造(骨組み)を一から設計し直している。
トランスアコースティックギター「TAG3 C」
●表板のアクチュエーター
表板では高音域を鳴らすため、より低い音が鳴る楽器のセンターから意図的に外した場所に設置。かつ、弦の交換時に奏者が触れにくい場所が計算されている。
●裏板のアクチュエーター
中低音域を担当する裏板の加振器。ギターで出すことができる一番低い音(周波数)が鳴るように新たに設計し、より低い音が鳴るセンター付近に設置されている。


TAG3 C | Yamaha TransAcoustic Guitars

■TAG3 C

楽器を振動させるアクチュエーターを1基から2基に増やし、より質の高いエフェクト音と、迫力あるバッキングを再現するルーパー機能を実現。新たにBluetooth機能も搭載し、スピーカーとしてリスニングも楽しめる。

詳細はこちら

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