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今月の音遊人:由紀さおりさん「言葉の裏側にある思いを表現したい」
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こだわりの音とアレンジでスタンダード・ナンバーを一新、ジャズ・バイオリンの魅力が凝縮されたアルバム『The Standard』/寺井尚子インタビュー
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2017.11.29
tagged: バイオリン, ジャズ, 寺井尚子, The Standard
まだまだ世界には少ないと感じられるジャズ・バイオリニストだが、だからこそ寺井尚子の存在は輝かしい。2018年にはプロ・デビュー(そしてCDデビュー)から30年という節目を迎えるが、2017年もまた彼女にとっては大切な年になるだろう。3月に『Piazzollamor(ピアソラモール=「ピアソラに愛を込めて」といったタイトル)』というCDをリリースして間もない11月、ジャズのスタンダード・ナンバーを13曲収録したCD『The Standard』をリリースし、ジャズへの愛と感謝を奏でているのだから。
「1917年に初めてとなるジャズのレコードが録音されてから100年。数え切れないほどの曲が生まれ、多くのミュージシャンたちが演奏してきたスタンダード・ナンバーですが、ずっと愛され続けているという“曲の持つ力”を感じながら、自分もその輪の中に加わりたかったのです。これまでのCDでも多くのスタンダードを取り上げましたが、今回は『枯葉』『ゴールデン・イヤリングス』をのぞき、初めて取り上げる曲がほとんど。あまり知られていませんが『デヴィル・メイ・ケア』(ボブ・ドローというヴォーカリストが1950年代に発表した曲)はどうしても入れたかったですし、北島直樹さんによるビッグ・バンド風のアレンジも素敵に仕上がっています」
スタンダード・ナンバーゆえ、演奏はもちろんアレンジもまた個性だといえるが、今回は2003年のアルバムから約13年も寺井尚子サウンドを支えている北島直樹(ピアニスト、コンポーザー)が、全曲のアレンジを担当。1曲目に収録されている『ナイト・アンド・デイ』からすでに、都会的でしゃれた音が流れてくる。
「アルバム制作のときはリハーサルに100時間くらいをかけ、演奏とディスカッションを積み重ねながら形を組み立てていきます。ですからレコーディングの際はほぼワンテイクで録り終えます。自分ならではのサウンド作りには強いこだわりももっています。バイオリンといえば美しい高音のイメージを連想する方も多いでしょうが、私は太くてパワフルな中低音が好きですね。豊かな表現力のある音が理想です。ジャズを志した10代の頃より、それは変わりありません。ライブではPAを使いますけれど、やはり楽器が生み出す生音の素晴らしさをできる限り届けたいですし、そのために音作りのスタッフと試行錯誤して“寺井尚子の音”を作り出しています」
愛奏するバイオリンはイタリア製で、20年以上も使っている楽器。ガット(羊の腸)製の弦を使っており、音色へのこだわりが見てとれる。CD『ザ・スタンダード』では、メロディアスなバラードでも、アップテンポのナンバーでも、その音を堪能できるのは言うまでもない。「私はこの楽器を炎天下の野外ステージでも弾きます。常に持ち歩いて大切にしていますが、甘やかさないようにしてきたのです。楽器がいつの間にかタフに育っていて、いつの頃からか一心同体になりました。今、いちばんいい状態で理想の音を奏でてくれますね」
4歳からクラシックのバイオリンを学び、小学生の頃は「全日本学生音楽コンクール」(通称「毎コン」)にも出場。イツァーク・パールマンやヤッシャ・ハイフェッツらが演奏するレコードを毎日のように聴き、当時から音の個性ということには敏感だったという。14歳のときに腱鞘炎となってひとときレッスンを離れたが、ビル・エバンスの名盤『ワルツ・フォー・デビイ』を聴いてジャズへと転向したのは有名なエピソードだ。 「最初はアドリブの存在も知らず、なんて自由で素敵な演奏をする人たちなんだ!と驚いたほどですが、実は今でも毎日の練習ではパガニーニの曲なども弾いています。演奏、特にアドリブには日常の自分が出ると思いますから、気づかないうちに曲のフレーズを弾いているかもしれませんね」 と、取材の合間に有名な『カプリース第24番』の一節を弾いてくれた。
『The Standard』
発売元:ユニバーサル ミュージック
発売日:2017年11月22日
料金:3,240円(税込)
文/ オヤマダアツシ
photo/ 後藤泰宏
tagged: バイオリン, ジャズ, 寺井尚子, The Standard
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