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稀代のドラマー森山威男が初めて語る「スイングするドラミングと藝大時代」/森山威男インタビュー
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2018.2.16
tagged: 坂田明, スイングの核心, ドラム, ドラマー, 山下洋輔, 山下洋輔トリオ, 森山威男, メールス・ジャズフェスティバル
初期の山下洋輔トリオのドラマー、森山威男。1974年にドイツで開催された「メールス・ジャズフェスティバル」での圧倒的なプレイは今も語り継がれている。これまでほとんど演奏について語ってこなかった森山が、自著『森山威男 スイングの核心』出版を機に、山下洋輔トリオ時代のドラミング、そして学生時代についても語った。
『メールス・ジャズフェスティバル』での熱狂は、ヨーロッパでの山下洋輔トリオの人気に火をつけた。無名の日本の若者が「いきなりドーンというすごい音で、集中力もエネルギーもずっと落ちないまま10分も演奏し続けた」ことに度肝を抜かれた聴衆は、演奏が終わった瞬間、「シーンとなって、その次にウワーっと湧いた」という。「一途なところとやる気が絶えない。今、振り返ってもすごい演奏だった」と森山は語る。演奏後はいつも体重が4キロも減り、人から話しかけられても答えられないほど消耗した。したたり落ちる汗が靴からあふれ出るほどだった。
1969年から1975年にかけて山下洋輔トリオに在籍した森山は、自身が独自に編み出した唯一無二のドラミングによって、スイングするフリースタイルを生み出した。「いつでも全部が鳴っている」ドラムは、複雑に入り組んだ5拍子に両手足の音がずれて入り、聴き手に一定のビートをまったく感じさせない。演奏のスピードは超高速。3人の絡み合うサウンドに「演奏している当人同士しかわからない」という絶妙な間の瞬間が訪れると、その間合いがスイングを生んだ。
「僕らは、なぜやるのかの理由も思いも、感性も一致していた。ヨーロッパにも一緒にやらせてくれというプレイヤーがいましたが、とても他の人とはできません。そういう演奏でした」
この革新的なドラミングを編み出した森山は東京藝術大学音楽学部器楽科の卒業生。ドラムを叩きたい一心から両親を説得するために受験し、合格はしたものの、大学になじめず、孤独と劣等感にさいなまれた「暗く寂しい青春時代」(著書より)を過ごした。
ただオーケストラは好きで、学生時代には日本フィルハーモニー交響楽団でパーカッションを演奏したこともある。
「音楽に入り込んで音楽全体を楽しみ、指揮者と同じ気持ちで叩きました。たとえばシンバルも、叩くところまでに自分の気持ちが高揚していかないと面白くない。ストラヴィンスキーのダイナミクスには興奮しましたね。ドラムを叩く時も、頭の中ではオーケストラの壮大な音が鳴っていました」
そして、「自分のドラムが駄目だとは思わなかった。自分には何かができる」(著書より)と、ジャズの世界に飛び込む。やがて山下と出会い、トリオが結成された。結成当時の演奏を森山はこう振り返る。
「お客さんが居ようが居まいが、とにかく叩いた。バスドラムのペダルが折れると足でバスドラムを蹴った。お金は電車賃ぐらいしかもらえなかったが、笑いがでるほどうれしかった。その頃から私は一生懸命が好きになった」(著書より)
「3人ともがソロのようにやたら自分を出して、でもおたがいに影響を受けていた」という山下洋輔トリオのプレイスタイルは、いわゆる一般ウケするものではなかったが、根強いファンがついた。「誰かに評価されたくてやっているわけではない」という精神を少しもブレることなく貫き通したドラマー人生は、協調ばかりが求められる今の時代にとても刺激的だ。
そんな森山のドラミングを、6台のカメラを駆使して手足を別々に撮影した貴重な映像とともに分析、解説した書『森山威男 スイングの核心』が発売された。一途にドラムを叩き続けた森山の「人生の核心」は、読み手みずからが生き方や考え方の指針を得る原動力になるに違いない。
『森山威男 スイングの核心(DVD付)』
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日:2017年11月30日
料金:5,400円(税込)
文/ 芹澤一美
photo/ 柏弘一郎
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