Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:May J.さん「言葉で伝わらないことも『音』だったら素直に伝えられる」

2018年7月25日、カバーシリーズとしては2年4ヶ月ぶりとなる4作目のアルバム『Cinema Song Covers 』をリリースしたMay J.さん。30歳を迎えるにあたり、トレードマークだったロングヘアをばっさり切ってニューアルバムのジャケット撮影にのぞんだ。次なる一歩を踏み出した彼女に、思い出の曲や音楽、歌への思いについて伺いました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

一曲だけ挙げるのはむずかしいので、アルバムでもいいですか?一番聴いたのは、宇多田ヒカルさんの『First Love』です。リリースされたのは私が10歳のとき。何度も繰り返して聴き、もちろん全曲、曲順まで覚えています。
彼女が持っている、インターナショナルなバックグラウンドに惹かれたんです。当時、私はR&Bが好きで、マライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンのようにR&Bの要素が入った歌を歌いたいと思っていました。けれど、それを日本語と英語の両方で実現されている方はなかなかいなくて。宇多田さんは、日本語でいかにR&Bを歌うべきかを教えてくれた気がします。
『First Love』の曲は、当時は誰もが歌えて、林間学校のバスの中で、みんなで熱唱したこともありました。R&BなのにJ-POPとしてたくさんの人に聴いてもらえるのは、すごいことだなと思います。『First Love』は青春でもありますし、意識して何かをしたわけではないけれど、今の自分をつくっている要素の一部になっています。

Q2.May J.さんにとって「音」や「音楽」とは?

私にとっては、言葉と変わらない……いえ、言葉より照れくさくない、より表現しやすいツールです。言葉で伝わらないものも、「音」だったら素直に伝えられる。言葉の表現はあまり得意じゃないんです。できることなら、「音」ですべてを伝えたいぐらい(笑)。
とくにライブでは、「音楽」とともに自分の感情を包み隠さず出せたと思う瞬間があります。私が歌って、自分自身が感じることと、聴いてくださる方が感じることはそれぞれ違うと思うのですが、一体になれるときがあるんです。そのときにしかない空気感を感じながら感情を表現し、お客さんとつながり合えたと思えるその瞬間は、ものすごくプレシャス。このためにがんばってきたのだと感じますね。
私は3歳から歌手を目指していたのですが、自分は向いていないのでは?と何度も思ったり、自分の声が好きになれなくてもがいたりした時期もありました。でも私は、できるまで止めないところがあります。やればやるほど欠点や課題が見つかるけれど、もっとよくするためには何をしたらいいのかを考え、チャレンジしていくのは楽しいです。
いろいろな波はありますが、結局は好きなので続けることができるんですよね。「音楽」でなければ、自分を成長させてくれなかったと思っています。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

ライブでセッションしている時、ミュージシャンは音で遊んでいるなと感じます。決められた音ではなく、ピアノの即興に合わせて自分もフェイクしたり。即興しているときは、ミュージシャンたちも子どもに戻ったように、みんな楽しんでやっていますよね。
2017年、アルバム『Futuristic』の制作にあたって、初めてロサンゼルスで海外レコーディングをしました。小さいころから親戚やボイストレーナーに会いに行ったり、ダンススクールに通ったりと頻繁に行き来していたので、ロサンゼルスは自分の第二の故郷のような街です。日本で培ったものを向こうで試し、いろいろ課題を見つけて戻ってきてまたがんばるという位置づけでもあり、新しい挑戦をするのにぴったりな場所でした。
そのレコーディングの際、ミュージシャンたちの挨拶がセッションでした。初めてメンバーがそろった日、スタジオでいきなり豪華なセッションが始まったんです。みんなすごいノリノリで、無邪気な姿で演奏しているのを見て、音で遊んでいるなと感じましたね。レコーディングでは学ぶことや発見も多かったのですが、そのひとつに「音で遊ぶ人」たちの開放的な空気感のようなものもあったように思います。

May J.〔メイジェイ〕
日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち、幼児期からダンス、ピアノ、オペラを学び、作詞、作曲、ピアノの弾き語りをもこなす。圧倒的な歌唱力とパワフルかつ澄んだ繊細な歌声、そして前向きでポジティブなメッセージが共感を呼び、幅広い世代から支持を受けている。2006年ミニアルバム『ALL MY GIRLS』でメジャーデビュー。記録的な大ヒットで社会現象にもなった、2014年公開のディズニー映画『アナと雪の女王』の日本版主題歌(エンドソング)を担当。同年の第65回紅白歌合戦に初出場。2015年1月には自身初となる、日本武道館の単独公演を開催。2018年7月25日には、映画主題歌をカバーした4作目のアルバム『Cinema Song Covers』をリリース。
May J.オフィシャルサイト http://www.may-j.com

 

特集

沖仁さん

今月の音遊人

今月の音遊人:沖仁さん「憧れのスターに告白!その姿を少年時代の自分に見せてあげたい」

12588views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#051 甘口のヴォーカル・バラードに潜む“コルトレーン論”への入口を探る楽しみ~ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』編

1000views

82Z

楽器探訪 Anothertake

アンバー仕上げが生む新感覚のヴィンテージ/カスタムサクソフォン「82Z」

8533views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!トランペットをうまく鳴らすコツと練習方法

136788views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

14346views

オトノ仕事人

あらゆるトラブルに対応できる、優れたリペア技術者を世に送り出す/管楽器のリペア技術者を育てる仕事

9532views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

10751views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

4425views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

27323views

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

われら音遊人

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

9965views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6539views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28130views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ギタリスト木村大とピアニスト榊原大がトランペットに挑戦!

8429views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

9517views

メタリカ

音楽ライターの眼

メタリカの誇るグラミー賞メタル部門最多受賞

1758views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

思い描く声が出せたときの感動を分かち合いたい/ボイストレーナーの仕事(後編)

10142views

ゲッゲロゾリステン

われら音遊人

われら音遊人:“ルールを作らない”ことが楽しく音楽を続ける秘訣

3172views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に

15545views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

25653views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6539views

ヤマハ製アコースティックギター

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぶ、ヤマハ製アコースティックギター

22916views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

8051views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28130views