Web音遊人(みゅーじん)

シャルル・リシャール=アムラン インタビュー Web音遊人

このピアノなら自分の意図する表現に応えてくれると思った/シャルル・リシャール=アムラン インタビュー

第17回ショパン国際ピアノコンクールで第2位とベスト・ソナタ賞を受賞したカナダ出身のピアニスト、シャルル・リシャール=アムラン氏。ショパンコンクール後の来日公演(2016年5月20日~31日)でも、その繊細な表現力で多くの聴衆を魅了した。柔らかく深いフォルテシモ、輝きのある豊かなピアニッシシモ……。その一音一音で聴き手を惹きつけるアムラン氏は、今、世界が注目するピアニストの一人だ。

とてつもなく凝縮されたショパンの世界を描き出すアムラン氏と、ピアニストが表現しようとするものに最大限に応えるフルコンサートグランドピアノ「CFX」。この出会いの背景には、ショパンコンクール数か月前に開催されたカナダでのコンサートがあった。
「コンサート前にピアノ選定を行ない、2台のピアノからCFXを選びました。CFXはとても弾きやすく、自分に合うすばらしいピアノだと感じました。この経験から、自分のなかではショパンコンクールでもCFXを弾こうということは決まっていました」

ショパンコンクールでのピアノ選定時間は1人15分。アムラン氏はCFX以外の1台も「念のため」に少し触ってみたという。
「私はコントロール性とアクション(タッチ)を重視していたので、すぐにCFXに決め、その後は自分のレパートリーを試しながら『このピアノとどれだけなじんでいけるか』に時間を使いました。今回、私がとくに気をつけて挑んだのがエチュードです。ショパンのエチュードはテクニカルに華やかに聴かせるイメージがありますが、私の聴かせどころは違うと思っていましたので、軽やかに聴かせるにはどうしたらいいかを意識しながらいろいろ試しました」

コンクールの大舞台でともに闘う相手にCFXを選んだ「決め手」については、このように言葉にする。
「まず音色の美しさ、そしてコントロール性、つまり柔らかな音を聴かせることができる幅広さという点で、群を抜いていると思いました。私は今回、軽やかな曲、深みのある曲など、いろいろな曲を選びましたが、そうした曲のすべてのニュアンスに表現がついてきてくれる楽器だと感じました。極度の緊張を強いられるコンクールの場で、『このピアノなら自分の意図する表現に応えてくれる』という安心感を得られる楽器と出会えて、私はとてもラッキーでした」

シャルル・リシャール=アムラン インタビュー Web音遊人

アムラン氏はまた、2010年のCFX登場以来ヤマハは「音のクオリティを高め続けている」とも語る。
「ヤマハがとても弾きやすいピアノであることはすでに世界的な評価を得ていると思いますが、CFXによってそこからさらに音のクオリティを高めてきたと私は思っています。音のクオリティとは、まず『音の美しさそのもの』です。それを強く感じますし、タッチ、音の立ち上がり、すべてに可能性が感じられます。自分の演奏に合わせて、『豊かな表現のパレット』ともいえるものから、どんどん新しいものが見えてきます。柔らかい音も単に柔らかいだけでなく、内側に広がっていく柔らかさを持っています。CFXのそうしたところを、私はとても好ましく思っています」

若いコンテスタントたちがパワーを発揮する一方で、みずから「晩成型」と認めるアムラン氏の演奏は、繊細で味わい深い。そのひとつが、調律技術者もその技に感銘を受けたという巧みなペダリングだ。
「CFXはペダルの調整もとてもすばらしく、演奏中はペダルのコントロールをまったく意識せずに弾くことができました。とくに驚いたのはソフトペダルです。最大限に踏んでも響きが変わり過ぎず、豊かな音のままソフトになります。半分、または4分の1だけ踏んでも、あるいはグラデーション的に踏んでも、輝きを失うことなく響きの柔らかさだけが変化します。このペダルでいろいろなことができると思いました」

ペダルにも相当に繊細な調整が求められるはずだが、コンクール期間中もリサイタルでも、ピアノの調整についてアムラン氏からの要望は特になかったそうだ。その理由を「楽器のことを一番よく知っているのは調律の方ですから」と語り、「演奏家をリスペクトするのと同じように、ピアノを作る人や調律師をリスペクトしています」と続けた。演奏と同じように、静かに、ていねいに言葉を選び、語るアムラン氏。その人柄もとても魅力的だ。
「私は、音楽に限らず人として何ごとにも誠実でいたいと思っています。ですからレパートリーも、自分にとってピッタリくるもの、心から好きと思える音楽を誠実に、率直に弾いていきたいですね。たとえばシューマンやバッハ、ブラームス、そして2枚目のCDにはベートーヴェンも入れます。また、今回の日本公演のアンコールで演奏したエネスコの作品も紹介していきたいと考えています」
※ルーマニアの作曲家

アムラン氏の感性から引き出される音楽の世界と、その先に広がるCFXの新たな魅力に再び出会える機会が、今からとても待ち遠しい。

シャルル・リシャール=アムラン インタビュー Web音遊人

 

■第17回ショパン国際ピアノコンクール – ピアノをめぐる物語

▼元ポーランド支店長 田所武寛氏
ヤマハピアノを輝かせるため、チーム一丸で全力を尽くした「ショパンコンクール」

 ▼ピアノ調律技術者 花岡昌範氏
演奏者の想いが聴き手に伝わったとき、調律技術者としての喜びを感じた

 

特集

ジェイク・シマブクロ

今月の音遊人

今月の音遊人:ジェイク・シマブクロさん「音のかけらを組み合わせてどんな音楽を生み出せるのか、冒険して探っていくのは楽しい」

6212views

華麗なる完璧主義者、カラヤンの音楽と人生_vol.3

音楽ライターの眼

華麗なる完璧主義者、カラヤンの音楽と人生 vol.3

9381views

練習用のバイオリンとして進化する機能と、守り続けるデザイン

楽器探訪 Anothertake

進化する機能と、守り続けるデザイン

3258views

楽器のあれこれQ&A

講師がアドバイス!フルート初心者が知っておきたい5つのポイント

7993views

桑原あい

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若きジャズピアニスト桑原あいがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

12549views

オトノ仕事人

リスナーとの絆を大切にする番組作り/クラシック専門のインターネットラジオを制作・発信する仕事

3262views

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

ホール自慢を聞きましょう

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

5698views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

6237views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

8808views

われら音遊人

われら音遊人:大学時代の仲間と再結成大人が楽しむカントリー・ポップ

2709views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

4058views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

20523views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

7669views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

8808views

音楽ライターの眼

トリオでなくてカルテット ホールと共に奏でるベテランの三重奏/徳永二男、堤剛、練木繁夫による珠玉のピアノトリオ・コンサートVol.7

1632views

オトノ仕事人

子ども向けコンサートを企画し、音楽が好きな子どもを増やす/コンサートプロデューサーの仕事

3878views

われら音遊人ー021Hアンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:元クラスメイトだけで結成。あのころも今も、同じ思いを共有!

3377views

懐かしのピアニカを振り返る

楽器探訪 Anothertake

懐かしのピアニカを振り返る

12244views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

17492views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

6493views

フルート

楽器のあれこれQ&A

初心者にもよくわかる!フルートの種類と選び方

17476views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

3424views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

20523views