今月の音遊人
今月の音遊人:五条院凌さん「言葉で表現するのが苦手な私でも、ピアノなら自分の感情を、音を通して表現できる」
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このピアノなら自分の意図する表現に応えてくれると思った/シャルル・リシャール=アムラン インタビュー
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2016.6.15
tagged: CFX, ショパン, ショパンコンクール, シャルル・リシャール=アムラン
第17回ショパン国際ピアノコンクールで第2位とベスト・ソナタ賞を受賞したカナダ出身のピアニスト、シャルル・リシャール=アムラン氏。ショパンコンクール後の来日公演(2016年5月20日~31日)でも、その繊細な表現力で多くの聴衆を魅了した。柔らかく深いフォルテシモ、輝きのある豊かなピアニッシシモ……。その一音一音で聴き手を惹きつけるアムラン氏は、今、世界が注目するピアニストの一人だ。
とてつもなく凝縮されたショパンの世界を描き出すアムラン氏と、ピアニストが表現しようとするものに最大限に応えるフルコンサートグランドピアノ「CFX」。この出会いの背景には、ショパンコンクール数か月前に開催されたカナダでのコンサートがあった。
「コンサート前にピアノ選定を行ない、2台のピアノからCFXを選びました。CFXはとても弾きやすく、自分に合うすばらしいピアノだと感じました。この経験から、自分のなかではショパンコンクールでもCFXを弾こうということは決まっていました」
ショパンコンクールでのピアノ選定時間は1人15分。アムラン氏はCFX以外の1台も「念のため」に少し触ってみたという。
「私はコントロール性とアクション(タッチ)を重視していたので、すぐにCFXに決め、その後は自分のレパートリーを試しながら『このピアノとどれだけなじんでいけるか』に時間を使いました。今回、私がとくに気をつけて挑んだのがエチュードです。ショパンのエチュードはテクニカルに華やかに聴かせるイメージがありますが、私の聴かせどころは違うと思っていましたので、軽やかに聴かせるにはどうしたらいいかを意識しながらいろいろ試しました」
コンクールの大舞台でともに闘う相手にCFXを選んだ「決め手」については、このように言葉にする。
「まず音色の美しさ、そしてコントロール性、つまり柔らかな音を聴かせることができる幅広さという点で、群を抜いていると思いました。私は今回、軽やかな曲、深みのある曲など、いろいろな曲を選びましたが、そうした曲のすべてのニュアンスに表現がついてきてくれる楽器だと感じました。極度の緊張を強いられるコンクールの場で、『このピアノなら自分の意図する表現に応えてくれる』という安心感を得られる楽器と出会えて、私はとてもラッキーでした」
アムラン氏はまた、2010年のCFX登場以来ヤマハは「音のクオリティを高め続けている」とも語る。
「ヤマハがとても弾きやすいピアノであることはすでに世界的な評価を得ていると思いますが、CFXによってそこからさらに音のクオリティを高めてきたと私は思っています。音のクオリティとは、まず『音の美しさそのもの』です。それを強く感じますし、タッチ、音の立ち上がり、すべてに可能性が感じられます。自分の演奏に合わせて、『豊かな表現のパレット』ともいえるものから、どんどん新しいものが見えてきます。柔らかい音も単に柔らかいだけでなく、内側に広がっていく柔らかさを持っています。CFXのそうしたところを、私はとても好ましく思っています」
若いコンテスタントたちがパワーを発揮する一方で、みずから「晩成型」と認めるアムラン氏の演奏は、繊細で味わい深い。そのひとつが、調律技術者もその技に感銘を受けたという巧みなペダリングだ。
「CFXはペダルの調整もとてもすばらしく、演奏中はペダルのコントロールをまったく意識せずに弾くことができました。とくに驚いたのはソフトペダルです。最大限に踏んでも響きが変わり過ぎず、豊かな音のままソフトになります。半分、または4分の1だけ踏んでも、あるいはグラデーション的に踏んでも、輝きを失うことなく響きの柔らかさだけが変化します。このペダルでいろいろなことができると思いました」
ペダルにも相当に繊細な調整が求められるはずだが、コンクール期間中もリサイタルでも、ピアノの調整についてアムラン氏からの要望は特になかったそうだ。その理由を「楽器のことを一番よく知っているのは調律の方ですから」と語り、「演奏家をリスペクトするのと同じように、ピアノを作る人や調律師をリスペクトしています」と続けた。演奏と同じように、静かに、ていねいに言葉を選び、語るアムラン氏。その人柄もとても魅力的だ。
「私は、音楽に限らず人として何ごとにも誠実でいたいと思っています。ですからレパートリーも、自分にとってピッタリくるもの、心から好きと思える音楽を誠実に、率直に弾いていきたいですね。たとえばシューマンやバッハ、ブラームス、そして2枚目のCDにはベートーヴェンも入れます。また、今回の日本公演のアンコールで演奏したエネスコ※の作品も紹介していきたいと考えています」
※ルーマニアの作曲家
アムラン氏の感性から引き出される音楽の世界と、その先に広がるCFXの新たな魅力に再び出会える機会が、今からとても待ち遠しい。
▼元ポーランド支店長 田所武寛氏
ヤマハピアノを輝かせるため、チーム一丸で全力を尽くした「ショパンコンクール」
▼ピアノ調律技術者 花岡昌範氏
演奏者の想いが聴き手に伝わったとき、調律技術者としての喜びを感じた
文/ 芹澤一美
photo/ 宮地たか子
tagged: CFX, ショパン, ショパンコンクール, シャルル・リシャール=アムラン
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