Web音遊人(みゅーじん)

パーヴォ・ヤルヴィ インタビュー Web音遊人

オーケストラでわかり合うためには「音楽」という言語で会話することがいちばんの近道です/パーヴォ・ヤルヴィ インタビュー

21世紀に入って世界の指揮者&オーケストラ地図が大幅に刷新される中、パーヴォ・ヤルヴィの存在感はますます確かなものとなっている。フランクフルト放送交響楽団やパリ管弦楽団など一流オーケストラのポストを歴任し、一方ではドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンとのCDや来日公演(ベートーヴェン、シューマン、ブラームス)で伝統に縛られない斬新な演奏を聴かせるという活躍ぶり。さらには、2015年9月よりNHK交響楽団の首席指揮者へ就任したことで、日本でも知名度や人気がますます高まった。

「世界的な水準にあるNHK交響楽団から招聘されたことは、とても光栄です。このオーケストラがモーツァルトからマーラーへ至る、ドイツ語圏の音楽を熟知していることは重要ですね。ソニーのRCAレッド・シール・レーベルとのプロジェクトで、彼らとリヒャルト・シュトラウスの作品集を録音しようと思ったのは、まさにドイツ音楽に対する経験と知識をもっていたからなのです。R.シュトラウスの音楽は高いレベルの演奏技術と楽員の積極性が要求されますので、どこのオーケストラでも満足のいく結果が得られるとは限りません。NHK交響楽団と出会えたからこそ、私はR.シュトラウスのシリーズを始められたのです」 

さまざまなオーケストラに客演するのは指揮者の運命ともいえるが、指揮台に立って自分をアピールする方法をたずねると、明快な答えを返してくれた。「私もオーケストラのメンバーも音楽という共通の言語をもっているわけですから、それを使わない手はありません。音楽に対して、また個々の曲に対してどういう思いがあるのか、リハーサルではそれをぶつけ合って探るわけです。わかり合うためには音楽で会話をすることがいちばんの近道でしょう」

パーヴォ・ヤルヴィ インタビュー Web音遊人

1962年に北ヨーロッパのエストニア共和国(当時は旧ソビエト連邦の構成国)で生まれ、少年時代に家族そろってアメリカへ移住。本格的に音楽の勉強を始めた。父のネーメ・ヤルヴィ、弟のクリスティアン・ヤルヴィも世界的な指揮者であり、日本のオーケストラにも客演している。
「それぞれ多忙ですからなかなか顔を合わせることができませんけれど、最近はスカイプやSNSという便利なものがあるので、以前より頻繁にコミュニケーションがとれているかもしれません。父は素晴らしい指揮者ですが、アルヴォ・ペルトやエドゥアルド・トゥビン、エリッキ=スヴェン・トゥールといったエストニアの作曲家たちを積極的に紹介していました。私たち兄弟もそれを見ながら育ちましたので、そのミッションを受け継ぎ、可能な限りエストニアの音楽をプログラムに加えています」 

たしかにNHK交響楽団のプログラムにもエストニアの音楽が加わり、ヤルヴィ時代の象徴として輝いているようだ。 「音楽監督を務めていたパリ管弦楽団ではペルトの特集を組んだり、新作の委嘱やエストニアへの演奏旅行も行ったりしました。私のルーツを理解してもらうことと同時に、オーケストラにとっても未知の作曲家や音楽と出会えるチャンスを提供しています。エストニアという国の存在を知らない方はまだまだ多いでしょうし、私は言葉を尽くすよりも音楽でエストニアの魂を伝えたいと考えています」

パーヴォ・ヤルヴィ インタビュー Web音遊人

エストニアでは2010年から「パルヌ(Pärnu)音楽祭」を開催。その中には若い世代の音楽家を育てる「ヤルヴィ・アカデミー」も併設されている。音楽を人生のパートナーにする人たちに、どういったアドバイスをしているのだろうか。 「音楽を楽しむ心を忘れてはいけないと思います。これはプロの音楽家や学生に限らず、日常の中で楽しんでいる方も同じでしょう。自分と音楽との良好な関係を見失ってはいけません。長い人生において音楽は素晴らしい友人になってくれるのですから」

今後さらに、パーヴォ・ヤルヴィの名前は日本国内で、また世界各地で称賛の的になるはず。まだこのマエストロのパフォーマンスをご覧になったことがないという方は、ぜひ注目を。

■アルバムインフォメーション

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)NHK交響楽団
『R.シュトラウス:交響詩チクルス』
R.シュトラウス交響詩チクルス

詳細はこちら

■パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)NHK交響楽団コンサートインフォメーション

詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人:H ZETT Mさん

今月の音遊人

今月の音遊人:H ZETT Mさん「音楽は目に見えないですが、その存在感たるやすごいなと思います」

28980views

音楽ライターの眼

ルイ・クープランの魅惑的なチェンバロ音楽を自然体で表現するクリストフ・ルセの妙技

3546views

reface

楽器探訪 Anothertake

個性が異なる4機種の特徴、その楽しみ方とは?

6817views

楽器のあれこれQ&A

ドラムの初心者におすすめの練習方法や手が疲れないコツ

9752views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

8844views

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

6710views

水戸市民会館

ホール自慢を聞きましょう

茨城県最大の2,000席を有するホールを備えた、人と文化の交流拠点が誕生/水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)

1942views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

6296views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

9183views

われら音遊人:「非日常」の充実感が 活動の原動力!

われら音遊人

われら音遊人:「非日常」の充実感が活動の原動力!

7300views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

4614views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

8788views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

9275views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

12789views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.8

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.8

6123views

オトノ仕事人

コンピュータを駆使して、ステージのサウンドをデザインする/ライブマニピュレーターの仕事

2528views

われら音遊人

われら音遊人:大学時代の仲間と再結成大人が楽しむカントリー・ポップ

3912views

クラビノーバ「CSPシリーズ」

楽器探訪 Anothertake

これまでピアノを諦めていた多くの人を救う楽器。楽譜作成・鍵盤ガイド機能が付いた電子ピアノ/クラビノーバ「CSPシリーズ」

20102views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

20754views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

4614views

楽器のあれこれQ&A

ウクレレを始めてみたい!初心者が知りたいあれこれ5つ

3736views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2217views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

23664views