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今月の音遊人:宇崎竜童さん「ライブで演奏しているとき、もうひとりの宇崎竜童がとなりでダメ出しをするんです」
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アラン・ホールズワースの超絶ギターが蘇る『ライヴ・イン・レヴァークーゼン2010』発表
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2021.12.17
tagged: 音楽ライターの眼, アラン・ホールズワース, ライヴ・イン・レヴァークーゼン2010
2017年4月15日、アラン・ホールズワースが70歳で亡くなって、もうすぐ5年が経とうとする。
1960年代後半にデビューして以来、アランはロックもジャズも超えた唯一無二の音楽性と卓越したギター・テクニックで支持を集めてきた。エディ・ヴァン・ヘイレンを筆頭に数多くのギタリストからリスペクトされる彼は日本でも絶大な人気を誇り、1984年に初来日公演を行って以来、何度も日本のステージに立ってきた。
2014年の来日は“引退ツアー”と銘打たれていたものの、バックステージでアラン本人と話してみると「引退?何のこと?」とキョトンとしていた。どうやら本人の知らないところで発表されていたらしい。
彼は自分の音楽が愛され、敬意を持たれる日本のファンのためにプレイすることを楽しんでいたし、戻ってくることを望んでいたに違いない。ただその後、来日公演が行われることはなく、本当に最後のジャパン・ツアーとなってしまった。
ニュークリアス、テンペスト、ソフト・マシーン、ニュー・トニー・ウィリアムス・ライフタイム、ゴング、UK、ブルーフォードといったバンド活動、そしてソロ・アーティストとして発表した『I.O.U.』(1982)『ロード・ゲームス』(1983)『アタヴァクロン』(1986)などのアルバムで聴かせる超絶速弾きや流麗なレガート、先を予想させないフレージングや曲構成によって天才ミュージシャンとして尊敬されたアランだが、そのキャリアは順風満帆とは言い難いものだった。
その孤高の音楽性は必ずしも“売れセン”ではなく、レコード会社は彼と契約することに二の足を踏んだ。彼はまた離婚時に自宅を嫁に明け渡したため、ホームスタジオを使えなくなってしまった。そんな事情もあり、オリジナル・スタジオ作品は2001年の“架空の映画サウンドトラック”『フラット・タイア』が最後となってしまった。
2008年、アランは筆者(山崎)とのインタビューでこう語っていた。
「車も家も惜しくないけど、スタジオを失ったのは痛かった。一時期は行く場所もなく、飲んだくれるだけの毎日だった」
アランが一方的な被害者というわけではなく、それぞれの事情があり、晩年にマネージャー的な人物と決裂したのも、コミュニケーションのすれ違いがあったようだ。とはいえ、彼の新作スタジオ・アルバムが作られることがなかったのは残念でならない。
(2016年にはクラウドファンディングで未発表音源集『Tales From The Vault』が発表された)
世界中の熱心なファンの要望に応えて、アランの生前のライヴ・パフォーマンスを捉えたアルバムや映像作品がリリースされてきたが、CD+DVD『ライヴ・イン・レヴァークーゼン2010』はそんなひとつだ。
本作は2010年11月9日、ドイツのケルン郊外、レヴァークーゼンの“ロックパラスト・フォーラム”でのライヴを収録したもの。アランとチャド・ワッカーマン(ドラムス)、アーネスト・ティブス(ベース)のトリオ編成で、『I.O.U.』からの『ザ・シングス・ユー・シー』『レターズ・オブ・マーク』、『ロード・ゲームス』からの『ウォーター・オン・ザ・ブレイン』『マテリアル・リアル』、ニュー・トニー・ウィリアムス・ライフタイムの『ビリーヴ・イット』(1975)からの『フレッド』「プロト・コスモス』など、幅広い選曲がなされている。
この音源・映像はドイツ“WDR”TVの音楽番組『ロックパラスト』で放映された。1974年に放映開始、現在も続く長寿番組で、スタッフも音楽を熟知している。ロケーションも常設会場の“ロックパラスト・フォーラム”ということで、ライヴ全体の雰囲気からギター・ソロの運指まで、しっかりツボを押さえているのが嬉しい。
2010年といえばアランの活動の後期にあたるが、毎年のように日本でツアーを行っていた(1年に2回来日したことも)、まさに充実期。妥協のかけらもなく、それでいてリスナーの心を捉えて離さない、凄味ただよう演奏で魅せてくれる。
本作DVDには映像特典としてチャドとアーネストがアランとの思い出を語るインタビュー(約15分)も収録されている。その人柄やオフ時のエピソードよりも音楽的交流について話されているのがさすがアラン、根っからの音楽家である。
なお、『I.O.U.』などでアランと共演、最後の来日公演にも参加したドラマーのゲイリー・ハズバンドも自らのウェブサイトで有料動画『Behind The Beats Of The Music of Allan Holdsworth』を公開した。アランとの交流を語るトーク、彼と共演した5曲を再現するデモ演奏、1992〜93年の未発表ホームビデオ映像(ライヴ含む)のトータル90分という充実した内容で、アランの音楽性をさらに深く掘り下げることが出来る。
山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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文/ 山崎智之
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