今月の音遊人
今月の音遊人:清水ミチコさん「ピアノをちょっと絶ってみると、どれだけ自分に必要かわかります」
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最近、ハイレゾが注目されるようになってきました。言葉はよく耳にするし、音質が良いということはなんとなく知っているけれど、具体的にはよくわからない。なんだかハードルが高そう。そんな方に、ハイレゾの基礎知識と楽しみ方などをご紹介します。
CD(コンパクト・ディスク)が誕生したのは1980年代前半のこと。アナログ音楽をデジタルデータに変換して記録したもので、コンパクトで場所を取らず、音質変化が少ないメディアとしてシェアを拡大していきました。
記録する際のデータは、サンプリング周波数(*1)44.1kHz/量子化ビット数(*2)16bit。これは人間が耳で聴くことができる帯域で、これに収まらない部分はカットして記録しています。つまり、CDに入っている情報量は原音よりも少ないのです。
もっとオリジナルに近い音を聴きたい──。そんな声から生まれたのがハイレゾ音源です。
ハイレゾとはハイレゾリューション(High Resolution)の略で、直訳すると「高解像度」。96kHz/24bitなどCDを上回る情報量を持つデータです。
とはいっても、そんなに情報量を多くしても人間の耳には聴こえないのでは?いえいえ、耳では聴き取れない音からも空気感を伝え、その場にいるような臨場感を味わせてくれるのがハイレゾの醍醐味なのです。
CDと比較しましたが、最近ではダウンロードしたMP3(*3)やAAC(*4)などの音楽データをスマートフォンや携帯音楽プレーヤーなどで聴く方法が主流だと思います。しかし、これらはデータをかなり圧縮しているため、音質の劣化が起こります。
ハイレゾを特大サイズのお釜に例えると、CDはふつうのお釜、MP3やAACはお猪口といったところ。それだけ情報が入る器の大きさが違うため、当然比較にならないぐらい音質も違うのです。
では、ハイレゾを楽しむにはどうしたらいいのでしょうか。
まずは、「my sound」や「e-onkyo music」などの音源配信サイトでハイレゾ音楽データを購入しダウンロードしましょう。 購入データをNAS(*5)にストックすれば、パソコンの容量が気になることもないでしょう。
ダウンロードの際、確認したいのがファイル形式です。 ハイレゾのファイル形式は、大きくわけて「PCM(*6)」と「DSD(*7)」のふたつ。そして、もっともスタンダードなのは、PCMのフォーマットのひとつである「FLAC(フラック)(*8)」というファイル形式です。圧縮すると劣化するのでは?と思われるかもしれませんが、FLACは可逆圧縮ファイル(圧縮しても劣化なく元に戻せる)なのでその心配はありません。圧縮してサイズが小さくなっている分、ダウンロードが早くできるのがメリットです。
ダウンロードしたハイレゾの音楽データは、ネットワークに対応したプレーヤーならNASにアクセスするだけで、心ゆくまで楽しめます。せっかくの高音質ですから室内ではヘッドホンではなくスピーカーがおすすめ。今までになかった音場感をぜひとも味わっていただきたいところです。
もっと手軽に楽しみたい、という方にはスマートフォンや携帯音楽プレーヤーでイヤホンやヘッドホンを使って聴く、という方法もあります。
なお、ハイレゾに対応していないアンプやスピーカーでもハイレゾの再生は可能です。ただ、ハイレゾの“高音質”を忠実に再現したいのであれば、再生周波数が40kHz以上のハイレゾ対応製品が必要です。(ヤマハのハイレゾ対応製品には、Webサイトの製品ページにハイレゾマークが記されています)
クラシックファンのなかには、一度ハイレゾを聴いたらもう戻れないという人も多いのだとか。自分にあったスタイルで、オリジナルの音に近いリアルなサウンドを楽しんでみてはいかがでしょうか。
(*1)サンプリング周波数:アナログ信号からデジタル信号への変換処理を1秒間に何回行うかを表す数値で、数字が大きいほどより高い周波数まで記録出来る。※CDは44.1kHzで1秒間に4万4100回のデータを変換処理している。
(*2)量子化ビット数:オーディオ信号の音の大小(ダイナミックレンジ)を記録するための器の大きさを表す。16bitの場合96dBまでのダイナミックレンジが記録できる。
(*3)MP3:MPEG-1 Audio Layer-3の略。圧縮された音声ファイルフォーマットのひとつ。音声データを10分の1程度に圧縮できる。
(*4)AAC:Advanced Audio Codingの略。圧縮された音声ファイルフォーマットのひとつ。MP3より1.4倍ほど圧縮率が高いといわれている。
(*5)NAS:ルーターに接続できるハードディスクドライブ。同じネットワーク上にあるパソコンやスマホなどとデータ共有ができる。
(*6)PCM:Pulse Code Modulationの略。アナログデータをデジタル化する方式のひとつ。エッジの効いた迫力のある音が特徴。
(*7)DSD:Direct Stream Digital」の略。アナログデータをデジタル化する方式のひとつ。奥行きのある立体的な音が特徴。
(*8)FLAC:Free Lossless Audio Codecの略。PCMをベースとした可逆圧縮(圧縮しても劣化しない)フォーマット。ジャケットなどの画像データも添付できることからハイレゾ音楽配信に広く利用されている。