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今月の音遊人:谷村新司さん「音がない世界から新たな作品が生まれる」
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世界トップクラスのアーティストと共に音楽の魅力を伝える、諏訪内晶子プロデュース「国際音楽祭NIPPON」
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2017.4.18
tagged: 国際音楽祭NIPPON, バイオリニスト, 諏訪内晶子
18歳でチャイコフスキー国際コンクール優勝を果たし、世界へ羽ばたいたバイオリニスト、諏訪内晶子。長く海外を拠点に活躍する中、日本に恩返しをしたいとの思いで企画した「国際音楽祭NIPPON」が、2017年に5回目の開催を迎える。
「音楽祭を構想したのは、20代の後半ぐらいだったでしょうか。それ以前、高校生ぐらいの時から、ただ曲を演奏するだけではなく、もう少し“自分らしさ”を出すことができたらいいなと考え始めていたと思います」
音楽祭の夢を温めていた頃のことを、こう振り返る。2012年の初開催以来この音楽祭では、「もう少し自分らしさを」という表現をはるかに超えた多彩なプログラムが展開されている。2017年も、チャイコフスキー国際コンクール覇者が勢揃いする「諏訪内晶子&マリオ・ブルネロ&ボリス・ベレゾフスキー特別公演」、名古屋・徳川美術館とのコラボレーション、子供たちをナレーションに起用する「動物の謝肉祭」をはじめ、質の高さと親しみやすさを両立させたプログラムを予定。東日本大震災の被災地である岩手県久慈市での公演など、被災地支援も軸に据える。
「国際音楽祭NIPPON」創設以来、諏訪内がこだわっているのが、現代作曲家への新曲の委嘱だ。外国人作曲家への委嘱が続いてきたが、2017年は海外で活躍する日本人、藤倉大に依頼したことも注目に値する。諏訪内とベレゾフスキーが初演するデュオ作品で、軽快な味わいが光るという。 現代曲というと難解な印象を抱くが、諏訪内は「一番身近にある音楽であると思っています」と語る。確かに、我々が時代状況を直接うかがい知ることができない古典の作家より、現代の作家は同じ時代を生き、同じものを見聞きしているはず。直接会って、創作の意図を尋ねることもできる。
諏訪内も、作曲家を質問攻めにするらしいが――?「そんなつもりはないのですが」と笑いながら、「でもやはり、せっかく作曲家がそこにいらっしゃるのなら、ベストな形で演奏したい。これも聞いてみたい、あそこについても聞いてみたい、と思います」と続けた。彼女らしい妥協のない探究心がうかがい知れるが、こうした姿勢が功を奏して、楽譜の誤植を発見するに至ったこともあるという。現代作品に携わる演奏者は、作曲者の共同作業者という側面も大きいのだろう。
3歳の時、父親の転勤で移り住んだ名古屋でバイオリンを始めた諏訪内。当時、人気のバイオリニスト、パールマンとズーカーマンの演奏を立て続けに聴き、衝撃を受けたという。「パールマンの明るい音と、ズーカーマンの艶のあるふくよかな音は、ずっと忘れられずに印象に残っていて、音楽の明るさ、楽しさを知ったきっかけになったかもしれません」と振り返る。「国際音楽祭NIPPON」も、世界トップレベルの上質な音楽を子供たちに聴かせ、未来の演奏家を育てたいという思いが込められている。
併せて、音楽祭を通じ、自分自身が一回り大きくなりたいという志も忘れてはいない。「音楽祭を企画しつつ、常に成長していかなければいけないと思っています。立ち上げの際はいろいろな方に教わりながら、本当にできるのだろうか?と不安を抱えてのスタートでしたが、それを続けていくことも大変です。でも、ただ演奏会の依頼を受け、演奏するだけではなく、音楽会を企画するという場があるのは、とてもありがたく、感謝をしています」と、語る。
実際に、第1回で初共演した指揮者、作曲家のエサ=ペッカ・サロネンとは交流が続き、2017年も「国際音楽祭NIPPON」とは別に共演が控えているという。5回目を迎え、諏訪内のライフワークのひとつになりつつある「国際音楽祭NIPPON」。2017年は5月26日(金)~7月30日(日)の期間、東京、名古屋、久慈での開催が予定されている。
文/ 仁川清
photo/ 阿部雄介
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