Web音遊人(みゅーじん)

清塚信也 For Tomorrow 

美しいピアノの一音一音が心に響く、オリジナル曲満載の最新アルバム /清塚信也インタビュー

清塚信也の音楽と聞いただけで、ひと粒ひと粒がピュアなピアノの音を連想してしまうのは、決して間違いではないだろう。「ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」(2000年)で第1位を獲得するなど、クラシックのピアニストとして幼い頃から演奏を磨き上げ、さらには映画やテレビ等、映像メディアでの目覚ましい活躍(ピアノ演奏、音楽監督、作・編曲)を続けている彼は、いまや人気・実力共に備えたピアニスト/コンポーザーだ。2017年10月18日発売のアルバム『For Tomorrow』は、すべてが自作曲で占められており、清塚カラーに満ちあふれた一枚である。

「ピアノを弾き続けてきた人間として、美しい音はずっと大事にしてきましたし、それをたくさんの人に伝えていきたいのです。たとえばプロコフィエフの『トッカータ』のような激しい作品であっても、やはり美しさは最後の一線として譲れませんし、その一音の美にたくさんの方が気づいてくれればいいなと思って演奏しています。いま、日常の中にもたくさんの音があふれているけど、一音を集中して聴くことにより、音楽の素晴らしさが深く理解できると思えるのです」

清塚信也

アルバムの中には、テレビドラマ『コウノドリ』で綾野剛演じる主人公が演奏する曲や、映画『新宿スワンII』のために書いた曲もあり、そうした映像作品のファンにも喜ばれるはず。しかしそればかりでなく、小学生の頃から交友があった高井羅人(タカイランド)との連弾や、清塚自身がシンセサイザーなどで音作りをした曲なども聴き逃せない。

「実はむかしからノイジーな音楽やエレクトロ・ミュージックが好きで、最近ですとドリアン・コンセプトやヨハン・ヨハンソンといったアーティスト、それから坂本龍一さんの新しいアルバム『async』も素晴らしいですね。自分の活動の中ではどうしても『なにがいま、自分にできるのか、自分は望まれているのか』を最優先で考えた結果、やはりピアノ演奏がメインになってしまうけれど、今回のアルバムでは新しいことへの扉を少しだけ開けたかなと思っています」

コンサート活動も多彩だが、ショパンやモーツァルトなどクラシック音楽の演奏も忘れていない。しかしコンクールでいい成績を取るため練習に明け暮れていた頃とは、音楽への接し方も演奏も大きく変わったという。

「以前は、この曲をこう演奏したいんだという気持ちを抑え込み、コンクールで高い評価を受けることだけを考えながら演奏していましたので、ストレスがずいぶん溜まっていました。たとえばショパンを演奏する場合、楽譜に書かれてあることがすべてではなく、彼自身はもっと自由に演奏していたでしょうし、同じ曲を弾く場合でも、その時々の心境やピアノの状態などによって違うことを試していたと思えるのです。ですから今では、ショパン自身がここにいたらどういう演奏をするだろうか、ということを考えながら弾くように努めています。決して同じ演奏にはなりません。だからこそ音楽は生き生きしてくるし、楽譜に頼りすぎず、いろいろな連想をふくらませた演奏が魅力的なのだと思います」

清塚信也

自作曲の楽譜も出版されており、発表会やコンクールで自分の曲が演奏されているのをSNSなどで知るという。

「不思議な気持ちになりますが、うれしいですね。感想を求められると『ここは、もう少しこう弾いてみたらいいんじゃない』とアドバイスすることもあります。でも、それぞれが思った通りに演奏してくれればいいし、そうして自分だけの音楽を見つけて欲しいと思います」

アルバムのリリースを記念したコンサートツアーも楽しみだが、まだまだやりたいことは山積みだというから、耳と目が離せないアーティストなのだ。

■アルバムインフォメーション

『For Tomorrow』
清塚信也 For Tomorrow
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2017年10月18日
価格:3,240円(税込)
詳細はこちら

清塚信也コンサートツアー2018 For Tomorrow

1月27日(土) 大阪 いずみホール
2月10日(土) 高松 高松テルサ
3月3日(土) 仙台 日立システムズホール仙台 コンサートホール
3月21日(水・祝) 福岡 FFGホール
3月23日(金) 名古屋 しらかわホール
3月25日(日) 横浜 はまぎんホール ヴィアマーレ
4月13日(金) 札幌 札幌コンサートホールKitara小ホール
4月27日(金) 東京 東京オペラシティ コンサートホール
詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人 木根尚登さん

今月の音遊人

今月の音遊人:木根尚登さん「やっぱりバンドがやりたい!理想は『あまちゃんスペシャルビッグバンド』」

20585views

音楽ライターの眼

2019年11月来日。エレクトリック・ギターの名手ジミー・ヘリングが原点となったギタリスト達を語る

6717views

楽器探訪 Anothertake

人気トランペッターのエリック・ミヤシロがヤマハとタッグを組んだ、トランペットのシグネチャーモデル「YTR-8330EM」

7385views

楽器のあれこれQ&A

いつも清潔にしておきたい!ピアニカのお手入れ、お掃除方法

389699views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

9440views

JTBロイヤルロード銀座

オトノ仕事人

日本では出逢えない海外の音楽体験ツアーを楽しんでいただく/海外への音楽旅行の企画の仕事

8232views

紀尾井ホール

ホール自慢を聞きましょう

専属の室内オーケストラをもつ日本屈指の音楽ホール/紀尾井ホール

17578views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

4118views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

36915views

われら音遊人:高度&骨太なサウンドにソウルフルな歌声が響く!

われら音遊人

われら音遊人:高度&骨太なサウンドにソウルフルな歌声が響く!

1188views

サクソフォン、そろそろ「テイク・ファイブ」に挑戦しようか、なんて思ってはいるのですが

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォンをはじめて10年、目標の「テイク・ファイブ」は近いか、遠いのか……。

9351views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28115views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

11162views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

24995views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#027 世界的なシンガーのルーツを覚醒させた2人だけのジャズという蜜月~トニー・ベネット&ビル・エヴァンス『トニー・ベネット&ビル・エヴァンス』編

2142views

オトノ仕事人

コンサートの音の責任者/サウンドデザイナーの仕事

14640views

われら音遊人

われら音遊人:オリジナルは30曲以上 大人に向けて奏でるフォークロックバンド

5449views

ヤマハギター50周年を機にアコースティックギターのFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギターFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

20674views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

10738views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

9634views

FGDPシリーズ

楽器のあれこれQ&A

新たな可能性を秘めた楽器、フィンガードラムパッドに注目!

1428views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8690views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

34868views