Web音遊人(みゅーじん)

ニューイヤー・コンサート2018

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート2018は、14年ぶりにムーティが指揮台に立つ

毎年恒例のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサート。1939年12月31日にクレメンス・クラウスの指揮によって始まったこのコンサートは、やがて1月1日の正午に開催されるようになった。

その後、1955年からヴィリー・ボスコフスキーが指揮を担当し、1959年からは世界各国に中継されるようになった。現在はテレビとラジオを通じて世界90カ国以上に放送され、4憶人が視聴するという大規模なイヴェントとなっている。

当初はクラウス後、ヨーゼフ・クリップス、ヴィリー・ボスコフスキー、ロリン・マゼールが複数年に渡って指揮を担当していたが、1987年にヘルベルト・フォン・カラヤンが初めて指揮台に立ち、これ以降は同じ指揮者が2年続けて指揮をすることはなくなった。

これまでカルロス・クライバー、小澤征爾、ズービン・メータ、ダニエル・バレンボイム、マリス・ヤンソンス、ニコラウス・アーノンクールら人気指揮者がタクトを振っている。

ニューイヤー・コンサートの会場となるのは、ウィーン・フィルの本拠地である楽友協会大ホール。座席数1744のホールは、世界一美しい音響をもつ「黄金のホール」として知られ、歴史の重みを感じさせる堅牢な外観と、真紅と金色の華やかな内装が特徴である。

ニューイヤー・コンサート2018

ここで聴くウィーン・フィルの音楽は、まろやかで情感豊かで流麗。ステージから放物線を描くように音がゆったりと響いてくる。

このウィーン・フィルは、ハプスブルク家の宮廷楽団として活動していた楽員たちにより、1842年に最初のコンサートが行われた。以来、今日まで革命や戦争などを経ながら間断なく演奏が続けられている、長い伝統と歴史を誇るオーケストラである。

当時から楽員たちの希望により、自主運営と民主制が重視され、音楽家を支えるさまざまな人たちとともに、ひとつの大きなファミリーとして活動を続けている。

そんなウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは、毎年録音がすぐにリリースされ、世界中のファンの元に届けられる。2018年の指揮を担当するのは、1993年、1997年、2000年、2004年に次いで14年ぶりに登場するリッカルド・ムーティ。ウィーン・フィルとの絆が深く、これまでウィーン・フィルを500回以上指揮し、お互いの信頼は厚い。

2018年1月1日の午前11時(現地時間)から始まるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート。今回は初登場の作品も8曲含まれ、新たな歴史を刻む。華麗で上質なニューイヤー・コンサートをぜひご自宅で。

伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー

■ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート(生中継)

NHK Eテレ 2018年1月1日(月・祝)19:00~
NHK-FM 2018年1月1日(月・祝)19:15~
詳細はこちら

■アルバムインフォメーション

『ニューイヤー・コンサート2018』
リッカルド・ムーティ(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ニューイヤー・コンサート2018
発売元:SONY CLASSICAL
2CD:2018年1月24日発売予定 2,900円(税込)
DVD:2018年2月21日発売予定 4,700円(税込)
Blu-ray:2018年2月21日発売予定 5,700円(税込)
詳細はこちら

 

特集

塩谷哲

今月の音遊人

今月の音遊人:塩谷哲さん 「僕の作る音楽が“ポップ”なのは、二人の天才音楽家の影響かもしれませんね」

4648views

ルッカの生家前にあるプッチーニの像

音楽ライターの眼

フィギュア・スケートの選手たちに愛されるプッチーニの『トゥーランドット』 vol.1

31265views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」

1views

楽器のあれこれQ&A

エレクトーンについて、知っておきたいことや気をつけたいこと

26023views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:和洋折衷のユニット竜馬四重奏がアルトヴェノーヴァのレッスンを初体験!

4894views

コレペティトゥーアのお仕事

オトノ仕事人

歌手・演奏者と共に観客を魅了する音楽を作り上げたい/コレペティトゥーアの仕事(後編)

7674views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

5418views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

9525views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22816views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

7281views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8285views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30783views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12832views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

24540views

音楽ライターの眼

連載6[ジャズ事始め]大正バブルが日本でのジャズの普及を後押しした

3956views

オトノ仕事人

歌、芝居、踊りを音楽でひとつに束ねる司令塔/ミュージカル指揮者・音楽監督の仕事

3215views

われら音遊人:Kakky(カッキー)

われら音遊人

われら音遊人:オカリナの豊かな表現力で聴いている人たちを笑顔に!

8358views

楽器探訪 Anothertake

おしゃれで弾きやすい!新感覚のアコースティックギター「STORIA」

48028views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

13863views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

4654views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

28224views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

14298views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10311views