今月の音遊人
今月の音遊人:三浦文彰さん「音を自由に表現できてこそ音楽になる。自分もそうでありたいですね」
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ギタリストがギタリストのために書いた曲を集めた朴葵姫(パク・キュヒ)の最新アルバム『Harmonia -ハルモニア-』
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2018.1.15
tagged: ギター, 押尾コータロー, 渡辺香津美, 朴葵姫, クラシック・ギター, パク・キュヒ, Harmonia, ハルモニア
アマチュア演奏家も多いクラシック・ギターだが、聴くのが好きだというファンも増えている。その人気を支えているギタリストの一人が、朴葵姫(パク・キュヒ)だ。韓国で生まれた彼女は日本で生活をしていた3歳の時、ビートルズ・ファンの母親が通っていたギター教室でこの楽器に出会い、自ら「ギターが弾きたい!」と宣言。その後は韓国および日本、ウィーン(オーストリア)やアリカンテ(スペイン)などで腕を磨き、数々のコンクールでも優秀な成績を収めてきた。現在は日本全国でコンサートを行い、多くの聴衆を集めているのだ。
その彼女がオリジナル・アルバムとしては2014年9月以来、およそ3年半ぶりにリリースする新作『Harmonia -ハルモニア-』。現代の人気ギタリストたちが書いた曲ばかりを集め、自ら腕試しを買って出たような内容だが、聴いていると心が温かくなる曲や、ロック~フュージョンのアコースティック・ギター・ナンバーを思わせる曲が並ぶ。
「素晴らしい曲がたくさんある中、今回は6人の作曲家による曲を選びました。セルジオ・アサドは私にとってベスト3に入るギタリストであり、今回収録した『バルセアーナ』『フェアウェル』などを聴いていただけば、心がきれいな方だということをおわかりいただけるでしょう。弟のオダイルさんとデュオを組んでいて(アサド兄弟)、ギターの可能性と限界を知り尽くしている方ですから、実は演奏がとても難しい曲です。そのアサドが絶賛しているケヴィン・カラハンの曲も、今とてもギター界で注目されています。アマチュアの方に流行する兆しもありますので、演奏に取り組む方が増えるかもしれません」
中には彼女にとって思い出深い曲や、日本のギター音楽ファンになじみのある作曲家も。
「アンドリュー・ヨークの『サンバースト』は、私が中学生の頃に村治佳織さんのCDが韓国で発売され、ギター愛好家に大流行しました。もちろん私もちょっとだけ弾いてみましたが、明るくてかっこいい曲ですから気分も晴れて、これからいいことがある!という気持ちになれますね。やはり佳織さんも演奏していた『タンゴ・アン・スカイ』で知られるローラン・ディアンスも日本や韓国では人気があり、オシャレでフランス的な味わいのある音楽を書いています。激しい曲調の『リブラ・ソナチネより第3楽章 フォーコ(fuoco:火のような情熱で)』は、1曲の中にさまざまな表情のある音楽です」
そしてアルバム中、もっとも注目すべきは2人のギタリストが朴のために書き下ろした新曲だろう。一人はジャズ・フュージョン・シーンのベテランである渡辺香津美。そしてもう一人は独自のフィンガー・ピッキング・スタイルによる演奏で多くのファンを魅了してきた、押尾コータローだ。
「お二人ともクラシック・ギターの音色や演奏テクニックに合わせた曲を作ってくださり、本当に私のために書いていただいたということを実感しました。渡辺香津美さんの『Pegasus(ペガサス)』という曲はジャズのリズムを使ったファンタジー(幻想曲)風の音楽で、トレモロ奏法を使う曲を私がよく弾いているためか、その音が生きています。押尾コータローさんの音楽はスペイン留学時代によく聴いていましたから、こうした形でご一緒できるのは本当にうれしいです。今回の『Harmonia -ハルモニア-』ではハーモニックスの音を出す部分などで押尾さん独特の奏法にもチャレンジしました。2曲とも、何度も弾いていく中で音楽を深めていけると思います」
その2曲がステージで初演されるのは、2018年2月23日に紀尾井ホール(東京)で行われるCD発売記念コンサート。新しい扉を力強く開くという、記憶に残るコンサートになることだろう。
『Harmonia -ハルモニア-』
発売元:日本コロムビア
発売日:2018年2月21日
料金:3,240円(税込)
『朴葵姫 ギター・リサイタル~新たなる出会い~』
日時:2018年2月23日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:紀尾井ホール(東京都千代田区紀尾井町6-5)
料金:5,400円(税込)
お問い合わせ:03-3235-3777(コンサートイマジン)