ラテンにタンゴ、アラビック……気鋭の若手と組んだカルテットで、複雑なビートにも挑戦!/古澤巌インタビュー

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古澤巌
ラテンにタンゴ、アラビック……気鋭の若手と組んだカルテットで、複雑なビートにも挑戦!/古澤巌インタビュー

国内外のコンクールで優勝し、海外の名だたる巨匠に師事するなど、クラシック音楽における確かなキャリアを積み上げつつ、音楽ジャンルにこだわらない豊かな活動が多くのファンを魅了しているバイオリニスト、古澤巌。テレビ番組のテーマ曲を手がけ、出演もこなすなどメディアでの活躍も目覚ましいが、一方ではメタルとの共演など、音楽的なチャレンジ精神の旺盛さも人気の所以なっている。

2018年4月11日にリリースしたニューアルバム『スウィンギン・フーガ』は、前作『愛しみのフーガ〜Mr.Lonely』に続く「フーガ・シリーズ」の第2弾。今作では、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との共演を機に親交を深めたイタリアの作曲家ロベルト・ディ・マリーノに委嘱し、彼の新曲6作と編曲2曲を収録している。
「マリーノさんと会う前に彼の楽譜を見て、この人は何てファンタジーがあって、美しい心の持ち主なんだろうと惹かれました。実際、素敵な人なんですよ。穏やかでやさしい人が美しい音楽を書く。そういう人に曲を生み出してもらえるよう、働きかけることも僕の役割としてあると思うんです」

古澤巌

現在のレーベルHATS(ハッツ)においては「ポップ(な音楽)をやるべき」と捉えている古澤。そのポップとは、単に明るく軽やかな音楽ではなく、聴く人の心にやさしく響いて笑顔を生み出すようなもの。マリーノはまさに彼の考える「ポップなクラシック」を紡ぎ出して見せた。たとえば1曲目の『Side to Side』
では、躍動するフレーズの重なりが高揚感を生み出してゆく。
美しい旋律を奏でながら、ラテン、タンゴ、アラブのリズムとそれぞれに複雑なビートを刻む。マリーノの多彩な音楽世界を演奏するのは、古澤が率いる弦楽四重奏団「品川カルテット」だ。
「弦楽器だけの演奏でどうビートを合わせるかが大きな課題でした。彼らはみんな高い技術を持っていますが、見えていないこともある。それを僕の経験をもとにアドバイスすると、ポンと腑に落ちるんです。彼らと親子ほど年の違う先輩として伝えてあげることも役割としてあったのかな。音楽的に歩み寄ることができた、このカルテットにはとても満足しています」
若手の才能を認め、共感し、時に父性を発揮するような音作り。きっと古澤自身も楽しんだことだろう。
「マリーノさんにはいろいろな雰囲気の曲を書いてもらったので、弦楽器を演奏する人にとっても、新しいレパートリーとして楽しんでもらえると思います。むずかしいけどね(笑)。しっかりメトロノームを聞いて練習してくださいね」
アルバムには古澤が長年、抱き続ける音楽への憧憬を形にした演奏も入る。少年の頃より愛してやまない作曲家、エンニオ・モリコーネによる『めぐり逢い2018』を、TOKYO FMの番組のイメージソングのために新しくアレンジした楽曲だ。

これまでも、「モリコーネ的なものをそれとはわからないように」アルバムに入れてきたというほど敬愛する作曲家の曲を叙情的に奏でた。カルテットによるバラエティ豊かな楽曲が続いたあとに、ゆったりとした時間が流れる。
そして、「フーガ・シリーズ」として銘打つ所以であるバッハを、今回はジプシースイングで演奏。バッハについては「バッハは弦楽器の演奏家にとってバイブルとされていても、自分には関係ないと思っていました」。けれども、レコーディングを通してトライアンドエラーを繰り返すことで、自分なりの弾き方を体得したという。
「バッハの弾き方がわかったら、ほかの曲は難しくないんですね。バイオリンが華やかに花開いた時代、あの頃ならではの弾き方があったはず。その秘密に少しでも触れられればと。今回バッハを弾いてよかったなと感じています」

古澤巌の豊かな音色、そしてカルテットが奏でるハーモニー……。どんなジャンルでも弾き手の心が揺れれば音楽はスウィングする。そんなことを感じさせてくれるアルバムだ。

■アルバムインフォメーション

『スウィンギン・フーガ』
スウィンギン・フーガ
発売元:ハッツアンリミテッド
発売日:2018年4月11日
料金:3,240円(税込)
詳細はこちら

 

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文/ 佐藤雅子
photo/ 阿部雄介