今月の音遊人
今月の音遊人:三浦文彰さん「音を自由に表現できてこそ音楽になる。自分もそうでありたいですね」
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初音ミクの登場とともに、一躍ブームとなったボーカロイド=ボカロ。生身の人間とはちょっと違った魅力をもつ歌声も一般的になり、今やカラオケランキングの上位100曲のうち、ボカロ曲が20~30曲を占めているとか。
ボカロがひとつの文化として成長した今、ヤマハが満を持して発売したボーカロイドキーボード(以下、ボカロキーボード)が注目を集めている。これは、鍵盤でメロディーを弾くとピアノやシンセサウンドが鳴るのではなく、ボーカロイドを使った歌声を奏でられるという画期的なキーボード。専門知識やスマートフォン等のスマートデバイス以外に特別な機材はまったく必要なく、ボーカロイドのシンガーをリアルタイムで歌わせることができることから、幅広い年齢層のユーザーに支持されている。
そもそもボカロとは、サンプリングした人間の声をデータベース化し、歌詞とメロディーを入力するだけで歌声をつくり出すことができる音声合成のテクノロジー。ヤマハがこれを開発するまで、DTM(パソコンを使った音楽制作・演奏)では歌声をつくることはできず、歌を入れたい場合は人が歌っていた。パソコン上で歌声をつくることができたら……そんな夢を叶えたのがボカロだったというわけだ。
ボカロでの曲づくりに興味はあるけれど、難しいしコストもかかる。そう感じたことがある人もいるのではないだろうか。実際、ボカロを使うにはいくつものソフトや機材はもちろん、知識やセンスも必要だ。そのため、ボカロPと呼ばれる音楽プロデューサー的な活動をする人たちが創作したものを、多くのリスナーが楽しむのが従来の形だった。
聴くだけでなく、ボカロをもっと身近に楽しんでほしい──そんな思いから生まれたのが、音源部にボーカロイドエンジンを搭載したボカロキーボード「VKB-100」だ。楽器との一体感が得られるショルダーキーボードスタイルを採用。1.5kgの軽量ボディで、どこでも持ち運ぶことができる。
使い方はいたって簡単。スマートフォンに専用のアプリをインストールし、Bluetooth®でスマートフォンとボカロキーボードを接続する。
まずは、アプリを使って歌わせたい歌詞を入力。既存曲、オリジナルを問わず何でもOKだ。本体にはあらかじめ『千本桜』など5曲分の歌詞データが入っていて20曲までストックすることができるが、アプリ上では好きなだけ保存しておけるのでいつでも簡単に入れ替えることが可能だ。
選べるボーカロイドシンガーは全部で5人。あらかじめヤマハオリジナルのシンガー「VY1」の歌声ライブラリが搭載されているほか、「初音ミク」「Megpoid」「IA」「結月ゆかり」の4人のなかから1人のシンガーを無料で追加でき、残りの3人の追加購入も可。こちらの設定もアプリで簡単に行うことができる。
さて、アプリから登録した歌詞とシンガーをボカロキーボード本体上で呼び出したら、あとは弾くだけ。自分が弾いたメロディーに合わせてシンガーが歌ってくれるのだが、初めて触れる人にとっては想像以上にわくわくする音楽体験になるに違いない。
ボーカロイドはシンガーひとりで歌うシステムなので、弾けるのは単音のみ。単音のメロディーを鍵盤ハーモニカと同じように片手だけで弾くため、楽器に慣れていない人にとってもハードルが低く、すぐに楽しむことができる。
ミスタッチしてメロディーと歌詞がずれてしまっても、歌詞を1フレーズ前に進めたり、後ろに戻ったりできるフレーズボタン、同じフレーズを繰り返して練習することができるループボタンなど嬉しい機能も満載。ボカロ初心者だけでなく、楽器初心者にもうってつけだろう。
ボカロキーボードのメリットは、誰もが気軽に楽しめることだけではない。使いこなしていくたび歌声に多彩な表情づけを行うことができ、より深い歌唱表現ができるのだ。
声のキャラクターの変化(Gender)、声の明るさの調整(Brightness)、歌声の高音域の調整(Clearness)、息の変化(Breathiness)、口の開き具合(Opening)などの数多くのパラメーターが用意されていて、アプリを使って調整することで、例えば、同じ初音ミクでも違った歌声にすることができる。歌声の設定保存するメモリーセットには、シンガーひとりと調整した歌声を4種類まで登録でき、演奏中にボタン操作で瞬時に切り替えることも可能なので、これを活用すれば、一曲のなかでもより表現豊かな歌声を奏でることができる。メモリーセットは歌詞データ同様にアプリに保存しておき、本体のデータといつでも入れ替えられる。本体にストックできるメモリーセットも歌詞データ同様に20セットまで可能だ。
しゃくり、こぶし、巻き舌、ビブラートは、本体のスキルボタンで演奏中に効果を加えることも可能。また、ノブを回していくと4種類のエフェクトが順番に切りかわり、同時にかかり具合も調整できるワンノブタイプのエフェクターを搭載しており、簡単に歌声にエフェクトをかけることもできる。カラオケのキーチェンジと同様のトランスポーズや瞬時にオクターブを上げることができるオクターブボタンなど、音域が広いボカロ曲にも対応している。さらに、13種類の楽器の音色が搭載されているので、ふつうのキーボードとして使うこともできる。
ボカロキーボードはパソコンとは違って楽器であり、ボカロとほかの楽器が一緒にリアルタイムで演奏できる点が大きな魅力だ。ピアノやギターの伴奏に合わせたり、バンドとわいわい演奏したり、もちろんお気に入りのボカロ動画に合わせて弾くもよし。自由な使い方で、これまでなかったボカロの楽しみをぜひ味わってほしい。
音源部にボーカロイドエンジンを搭載し、自分で演奏したメロディーの通りに歌詞を歌わせることができるキーボード。専用アプリを使用したオリジナル歌詞の作成や、最大で5人のボーカロイドシンガーの追加も可能。
文/ 福田素子
tagged: ボカロキーボード, VKB-100, ボカロ, 初音ミク
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