Web音遊人(みゅーじん)

【優待チケット】演奏家の“今”を聴く。それこそがリサイタルの醍醐味/清水和音インタビュー

「リサイタルは、あくまで演奏活動の一部分。ピアノ作品は膨大にあり、好きな曲だけを演奏しても一生終わらないくらい。ですから、ある日のコンサートだけが特別なんてことはないのです」。

演奏会に臨む自身の思いをきっぱりと語るピアニスト、清水和音。とかく聴き手はプログラムの背景や選曲意図などを深読みしがちだが、もっと無心に、理屈抜きに音楽を楽しんでほしい、という核心を突くメッセージだ。

弱冠20歳でロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門に優勝し、翌年、輝かしいデビューを飾った。以来、国内外の世界的な指揮者やオーケストラとの共演をはじめ、室内楽シリーズやリサイタルシリーズなど、独自の演奏活動を精力的に展開している。「ベートーヴェンもモーツァルトもショパンも、ロシアの作曲家もみんな好き」というレパートリーの多彩さと共に、「毎年、三大ピアノ協奏曲を弾くコンサートも続けていますし、一公演に協奏曲を5曲弾いたこともあります」という脅威のバイタリティ。その源を知りたいところなのだが……。

「今、こうして弾けるのは、もともとピアノに向いている身体能力があるからだと思います。でもそれは、難しいパッセージをそれほど練習しなくても弾けるというような表現の世界。子どもでもときどき、そういう例があります。ピアノはスポーツと違い、最高速や最大音量を競うわけではありませんから、体力とか筋力には関係ありません」ときっぱり。でも、「そろそろ年齢的にも60歳近くなったから、本音を言えばプログラムはモーツァルトやシューベルトを中心にしたいところ」と冗談ぽく笑う。

コンサートでの演奏回数は決して多くないというシューベルト演奏についての分析も実に興味深い。
「私自身もシューベルトは大好きです。演奏家はみんなシューベルトが好きなのですが、聴く側にとって退屈なイメージがあることは否めません。日本でシューベルトが不人気なのは演奏家に責任があると思っています。そうなる理由は、演奏へのアプローチが似ているから。まるで自分のために書かれた曲であるかのように、音楽を親密に捉え過ぎる演奏が多い。これは大いなる勘違いです。演奏家が片思いするだけでは聴衆は面白くありません」

では、どのように演奏すべきと考えているのだろう。
「多くの作曲家はいろいろな手法をこらして曲を作るのに、シューベルトはいいメロディを思いつくだけで曲ができてしまう天才です。ひとつのモチーフを大きく膨らませる天才がワーグナーだとすれば、シューベルトは素材だけで音楽を生み出した人。その才能は圧倒的です。ですからシューベルトを演奏する時は、ピアニストが意図的に参加し過ぎることなく、シンプルに音を並べるだけで美しく弾かなくてはならない、と私は思っています」

そのシューベルトを聴けるのが2019年6月の「ヤマハホール 珠玉のリサイタル&室内楽シリーズ」。ベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ』2曲とブラームス『3つの間奏曲』、そして「ピアノ作品のなかでも至高の名曲」とするシューベルト『ピアノ・ソナタ』第14番を弾く。美しく研ぎ澄まされた清水和音の“今”を聴くことで、リサイタルの醍醐味を味わいたい。

■珠玉のリサイタル&室内楽 清水和音 ピアノ・リサイタル

日時:2019年6月25日(火)19:00開演(18:30開場)
場所:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金:6,000円(全席指定・税込)
曲目:L.v.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調『テンペスト』Op.31-2/ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109、J.ブラームス/3つの間奏曲 Op.117、F.シューベルト/ピアノ・ソナタ第14番 イ短調 Op.143,D784
詳細はこちら

■ 優待チケットの特別販売

本公演の優待チケット(優待価格5,500円)を20名様分ご用意しました。ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。
※ご応募の際は、ヤマハミュージックメンバーズの会員登録(登録無料)が必要です。
応募締切:2019年3月17日 (日) 23:59
応募はこちら

 

特集

ユッコ・ミラー

今月の音遊人

今月の音遊人:ユッコ・ミラーさん「音楽は人の心を映すもの。だからごまかすことはできません」

4817views

音楽ライターの眼

バッハからショパンへ、大人のロマンティシズム/牛田智大 ピアノ・リサイタル

17945views

Pacifica

楽器探訪 Anothertake

「自分の音」に向かって没入できる演奏性と表現力/エレキギター「Pacifica」

3693views

ギター

楽器のあれこれQ&A

ギター初心者のお悩みをズバリ解決!

1901views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:和洋折衷のユニット竜馬四重奏がアルトヴェノーヴァのレッスンを初体験!

6139views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

思い描く声が出せたときの感動を分かち合いたい/ボイストレーナーの仕事(後編)

10132views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

17212views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7242views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

9503views

われら音遊人

われら音遊人:オリジナルは30曲以上 大人に向けて奏でるフォークロックバンド

5449views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

6030views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11745views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

13534views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

11579views

音楽ライターの眼

ルイ・クープランの魅惑的なチェンバロ音楽を自然体で表現するクリストフ・ルセの妙技

4799views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

8122views

練馬だいこんず

われら音遊人

われら音遊人:好きな音楽を通じて人のためになることをしたい

6865views

マーチングドラムの必須条件とは?

楽器探訪 Anothertake

マーチングドラムの必須条件とは?

12830views

福岡市民ホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史をつなぎ、新しい感動をつくる。音楽・芸術文化の新たな拠点/福岡市民ホール

433views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6399views

エレキギター

楽器のあれこれQ&A

エレキギターのサウンドメイクについて教えて!

2713views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

16871views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11745views