心が動いたその瞬間に、曲が降りてくる~『PIANO SWITCH ~BEST SELECTION~』リリース/西村由紀江インタビュー

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心が動いたその瞬間に、曲が降りてくる~『PIANO SWITCH ~BEST SELECTION~』リリース/西村由紀江インタビュー

“名は体を表す”ならぬ“音は体を表す”。そんなことを思わせるピアニストだ。
優しく語りかけるようなピアノはもちろん、ふんわりとしながら凛とした人柄で多くの支持を集める西村由紀江。映画やドラマ、CM音楽などを手がける作曲家でもあり、無意識のうちに彼女の曲に癒されている人も少なくないだろう。

2019年4月24日には、1986年のメジャーデビューから通算40枚目となる『PIANO SWITCH ~BEST SELECTION~(ピアノスイッチ~ベストセレクション~ )』をリリース。「ピアノを弾くあこがれときっかけ」になるニューアルバムは、西村の真骨頂をたっぷり味わわせてくれる。

──西村さんは8歳の私に、ピアノが景色や人の表情、言葉を浮かばせてくれるものだと教えてくれました。『夢を追いかけて』(ドラマ『101回目のプロポーズ』挿入歌)でピアノ好きスイッチが入りました──
今回のアルバムのコンセプトは、シンガーソングライター、大塚愛のそんな言葉から生まれたと西村はいう。
「あるイベントでご一緒させていただいた時、大塚さんがピアノの弾き語りをされていました。ピアノが好きだという気持ちがひしひしと伝わってきて、素敵だなと思って見ていたんです。でも、私のことなんてご存知ないだろうと思っていたら、こんな言葉をいただいて」
かねてから、ピアノの伝道師としてその楽しさを伝えていきたいと考えていた西村にとって、“ピアノスイッチ”という表現は言い得て妙。胸にストンと落ちたその言葉をキーワードに、アルバム制作がスタートした。
収録曲は、これまでの作品のリアレンジ版と新曲を織り交ぜた全15曲。だが、過去の作品とひと口にいっても、その数はCDになっているものだけでも500曲以上に及ぶ。

「曲の取捨選択は意外とスムーズでしたね。私がデビューしたのはディスコサウンドが流行っていた時代。ポピュラリティ―がないとか、地味、キャッチーじゃないなどと言われました。その記憶があって、耳に残る曲、口ずさめる曲をつくらなければいけないと、ずっと勝手に思い込んでいたんです。でも、今回“ピアノが弾きたくなる曲”という観点から選曲してみると、こんなに自分らしくいられるんだという発見がありました。デビュー33年目にして、新人に戻ったような気分でしたね」

それをもっとも象徴するのが、西村の原点ともいえる『objet』だろう。
「デビューも決まっていない高校生のときにつくった曲です。そのころはまだ、ポップなメロディーをつくらなければいけないなんて考えもしないで作曲していました」
同曲には新しいフレーズもプラス。ヤマハ音楽教室のテキストに20年以上にわたって掲載されている『オルゴールを聴きながら』など、すべての曲をリアレンジし、レコーディングに臨んだ。
新曲に込めた思いも同様だ。たとえば、ヤマハ音楽教室のテキストを作成する講師陣の生の声を取り入れて作曲した『黒鍵』。両手ともに黒鍵だけで演奏するという楽しい試みだ。『やさしさ』は手が小さい西村ならではの発想から生まれた曲であり、指くぐりもマスターできる。
さらに、「このアルバムをつくることで、自分自身のことを好きになった」と語る西村の心境を色濃く映し出すのは、新曲『My Classic』だ。
「私のルーツは、どうあがいてもクラシック。この曲には、物心ついたころから母がレコードで繰り返し聴かせてくれた『珠玉の名曲集』の要素が少しずつ入っていると思います。それが、自分のなかで核となる大事なものだという気持ちでつくりました」

嬉しい、悲しい、悔しい……。心が動いたその瞬間に、曲が降りてくるという西村。
「言葉の代わりにメロディーが頭に浮かぶんです。だから、いつも五線譜を持ち歩いていつでも書き留められるように準備しています。すぐに消えてしまうので、捕まえて瞬間冷凍して五線譜に封じ込めておく。そうすれば、電子レンジで解凍するように、ピアノで弾いたときにふわっと蘇りますから」
もともとは人見知りで、言葉を使うのも苦手。そんな彼女のコミュニケーション手段はピアノだった。だから、西村のピアノは言葉以上のものを届け、“ピアノスイッチ”をオンにしてくれるのかもしれない。

記念すべき40枚目のアルバムを引っ提げてのツアーも始まる。
第一弾は、2019年5月25日に鎌倉で開催される『シーサイドピアノコンサート』。2019年に21回を迎え、初回から毎年足を運ぶファンもいるそう。
『PIANO SWITCH TOUR 2019』 は、2019年6月15日の仙台を皮切りに全国各地で開催される。
「今回のツアーはピアノに特化した内容です。ピアノの可能性、楽しさや切なさ、テクニックなどが存分に伝わることに集中したいと思っています。ピアノをやめた方がもう一度始めたり、やめようかなと思っている人がもうちょっとやってみようと思ったり。そんなきっかけになればといいですね」
アルバムで、ツアーで……西村が表現するピアノの楽しさをぜひ味わってほしい。

■アルバムインフォメーション

『PIANO SWITCH ~BEST SELECTION~』
西村由紀江さん
発売元:ハッツアンリミテッド
発売日:2019年4月24日
価格:通常盤3,000円/DVD付盤4,000円(いずれも税抜)

■公演インフォメーション

●西村由紀江シーサイドピアノコンサートVol.21

日時:2019年5月25日(土)16:30開演(15:30開場)
会場:鎌倉プリンスホテル バンケットホール七里ヶ浜
料金:一般6,500円、中学生以下1,000円(1ドリンク付、税込、全席指定)

●西村由紀江 40th Album 発売記念コンサート 〜 PIANO SWITCH TOUR 2019〜

6月15日(土) ルフラン(仙台)
6月16日(日) おでってホール(盛岡)
7月6日(土) 六花亭きたこぶしホール(札幌)
7月12日(金) ザ・フェニックスホール(大阪)
7月13日(土)大名MKホール(福岡)
7月15日(月・祝)ジョイアミーア(新潟)
7月20日(土) Live Juke(広島)
8月10日(土) ヤマハ名古屋ホール(名古屋)
8月18日(日) ヤマハホール(東京)
※ 2019年9月以降も継続全国ツアーを予定。

詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。

 

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文/ 福田素子
photo/ 宮地たか子