今月の音遊人
今月の音遊人:AIさん「本当につらいときも、最終的に救ってくれるのはいつも音楽でした」
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今月の音遊人:櫻井哲夫さん「聴いてくれる人が楽しんでくれると、自分たちの楽しさも倍増しますね」
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2023.7.3
フュージョンバンド、カシオペアのベーシストとして一世を風靡し、現在はソロ活動に加え、カシオペアの元メンバーと結成した“かつしかトリオ”でも活動する櫻井哲夫さん。精力的な音楽活動の傍ら、大学で教鞭もとる櫻井さんに、音楽を志した原点や音楽を楽しむ人生について語っていただいた。
スティーヴィー・ワンダーですね。『トーキング・ブック』や『インナーヴィジョンズ』『ファースト・フィナーレ』『キー・オブ・ライフ』といった1970年代のアルバムを、高校生のころからカシオペアでデビューしたくらいまで毎日聴いていました。『イズント・シー・ラブリー(可愛いアイシャ)』などのヒット曲を耳にしたり、ベック・ボガート&アピスがカバーした『スーパースティション(迷信)』がカッコよくて、その作者がスティーヴィーだと知ったりしたことで目覚めた感じです。
スティーヴィーは初期のころからドラムを叩いたりシンセベースを使ったりとマルチプレイヤーで、アレンジやプロデュースもこなすし、若くしてそれだけの才能を発揮できていることにすごく魅かれて。メッセージ性のある曲も多いし、本物のアーティストというのはここまで凄いんだなって痛感しました。
人生ですかね。僕は小学校3年のときに祖母をガンで亡くし、5年生のときには母もガンを患ったことから、もしかしたら母も亡くなってしまうかもしれないと覚悟を決めて、家事を全部できるようにしたんです。
同時に、命はいつか亡くなるものだから、自分が好きなことをやり続けるのが大切だと気がつきました。それが仕事になれば一番いいんだなと考えたときに、体育、音楽、美術という好きな科目の中で、音楽だったら死ぬまでできるんじゃないかと思って。それを極めて形にして、さらに人に喜んでもらえれば、人の役に立つ仕事になるわけだし。だから高校受験のときは一番うまいバンドがいる学校を偵察したりしました。
カシオペアでデビューしたのは大学在学中でしたが、卒業するころにはすでに海外進出を果たしていたので、これはもう就活するまでもないなと。そのまま今に至る感じです。だから音楽は僕の生き方、自分の人生そのものだと思っています。
音楽って“音を楽しむ”のが正解だと僕は思っていて、講師をしている大学でもそういうことを教えているんですが、練習してうまくなることが目標みたいな感じになって“音を遊ぶ”という価値観を持ってない人がいることに気がつきました。音楽ではなく、音学してる人が多いのです。
勉強する素材の収集と、それを蓄積させて整理させることに時間を費やすのも必要だけど、それが全てになっちゃったら、図書館みたいになるだけなんじゃないの?って。練習するときも決まったことだけやるのでは、閃きとか遊びとか出てこないんじゃないのって。そういうことを後輩に伝えています。
だから「音遊人」って字を見ると“僕みたいだな”って思いますね。
やっぱり成長することですかね。自分で成長を感じたときに、すごくよかったなと思います。あと、自分たちが楽しんで演奏して、それを聴いてくれる人も楽しんでくれると、自分たちの楽しさも倍増しますね。
1980年代にカシオペアでワールドツアーをやったことはものすごい思い出になっていて。自分たちがベストを尽くしてやったことをどこの国でも喜んでもらえる、そんな瞬間をコンサートでは体験できるじゃないですか。そうなると自分一人の喜びじゃないんです。みんなが喜んでくれているっていうのを味わえるのは、何ものにも代えられないですね。
櫻井哲夫〔さくらい・てつお〕
ベースという楽器を使って自己実現を追求。リーダー活動は、ソロ・ライブ、櫻井哲夫バンド、Jacoトリビュート・ライブ。1976~1989年カシオペア、1990~1998年JIMSAKUのメンバーとして活動。1999年以降ソロ・アーティストとして海外にも活動の輪を広げる。後進の育成として、昭和音楽大学の講師も務める。2021年、向谷実、神保彰とともに“かつしかトリオ”結成。2023年秋にフルアルバムを発売し、10~11月に「かつしかトリオ LIVE TOUR 2023 出発進行!」開催。
オフィシャルサイト
文/ 飯島健一
photo/ 坂本ようこ
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