今月の音遊人
今月の音遊人:佐渡裕さん「音楽は、“不要不急”ではない。人と人とがつながり、ともに生きる喜びを感じるためにある」
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音楽教室通いはアマチュアの特権!?/『人生100年時代“最強の習い事”そうだ!音楽教室に行こう』
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2019.6.12
tagged: 大内孝夫, ブックレビュー, 人生100年時代“最強の習い事” そうだ! 音楽教室に行こう
「大人世代の約3割が、機会があれば楽器演奏をしたいと思っている」「音楽教室の受講生は4人に1人が楽器未経験者」「音楽教室にシニア、シルバー層の生徒が増加中」。『人生100年時代“最強の習い事”そうだ!音楽教室に行こう』には、そんな興味深いデータが並ぶ。
「音楽で人生を輝かせよう!」と呼びかける著者・大内孝夫は、銀行マンから音楽大学の教職員へと転身、音楽の外の世界から独自の視点で音大進学を捉えた『「音大卒」は武器になる』(ヤマハミュージックメディア)を出版して話題を呼んだ。その大内が、「音楽は人生を豊かにするツール」という、より広い視点で「誰もが気楽に音楽教室に通う時代が到来した」と分析している。
それを裏付けるように、音楽を習って人生を輝かせているさまざまな人々が登場。ある人の「好きな曲を、好きな時に、好きな場所で、好きなだけ弾ける(演奏できる)幸せ。それはアマチュアにだけ与えられた至福である」(本文より)という言葉には、はっとさせられる。確かに、その日の気分に合わせ、好きな楽器で好きな曲を演奏できるのは、アマチュアの特権。その特権を大いに活かそうではないか。大内はそう提案しているのだ。
そして「音楽を習って得られるものは何か」というテーマにも切り込み、躊躇する人を勇気づける。音楽の効用は、演奏できたことの高揚感や達成感、向上心の芽生えといった精神面での豊かさはもちろん、音楽を通じた仲間との出会いによって「自分の世界」が広がることも大きな収穫だ。人と顔を合わせなくてもコミュニケーションが可能となった今、人とのつながりを生み、人の居場所を作るという役割を、すでに音楽教室は果たしている。超高齢社会を迎えた今、「音楽は健康に効く。楽しみながら健康寿命を伸ばそう」という提言には、とくに説得力がある。
さらには、音楽は「社会人として生きていくうえで役立つ学びであるリベラルアーツの源流」と定義し、人の心を揺さぶり、想像力を掻き立てる音楽の重要性を強調する。大内は音楽から得られる力を「物事を俯瞰する力がつく」「目標に向けて準備する自己管理能力がつく」「本番で力を発揮する度胸が身につく」といった例を挙げて紹介し、自身の経験を振り返って「これからのビジネスマンにとって本当に必要な力は、顧客にとっての価値を見抜く感性の訓練ではないか。音楽にはその滋養成分が大量に含まれている」と、ビジネスの視点からも音楽の必要性を述べている。
「人生を豊かにしたい」「新時代の幕開けを機に何か始めたい」「憧れだった楽器をいつかやってみたい」……。そんな人たちの背中を押してくれる本書。楽器選びに迷う人には「性格と楽器の相性」を診断し、教室選びで悩む人には「教室探しフロー」でアドバイス。楽器初心者も再開組も、本書を機に音楽教室の扉を開けてみよう。
『人生100年時代“最強の習い事”そうだ!音楽教室に行こう』
著者:大内孝夫
発売元:音楽之友社
価格:1,400円(税抜)
発売日:2018年12月