Web音遊人(みゅーじん)

ROLLY’S WORLD全開のアルバムで音楽の深みにはまり、名作ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』で感動を/ROLLYインタビュー

ロック・アーティスト、と呼んでいいのだろうか。たしかにエレキ・ギターを手にパフォーマンスをする姿はロックだ。バンマスに中西俊博を迎え、横浜赤レンガホールで4日間行われた公演を観た人は、ロックどころかクラシック、シャンソン、歌謡曲などあらゆるジャンルの音楽がミキサーにかけられ、不思議な味のスムージー化したようなステージに魅了されることだろう。ROLLY(ローリー)の奥深さには舌を巻く。

「僕にとって<ロック>と<ミュージック>はかなり近いものですね。ロック・ミュージシャンではあるけれどロック以外のさまざまなジャンルから影響を受けていますし、ロック以外の音楽にアーティスト性や個性につながるヒントがたくさんあるのです。たとえば僕はエノケンこと榎本健一さんが大好きですし、笠置シズ子さんや高峰秀子さんの歌からも影響を受けています。音楽の何が面白いかといえば、その時代に流行っているものと一番遠いところにあるものをもってくることで意外性が生まれ、誰もやっていないものが生まれるということでしょうね」

そんなROLLY風「ア・ラ・カルト・ミュージック」を詰め込んだのが、2019年5月にリリースされたアルバム『ROLLY’S ROCK WORKS』なのだ。書き下ろし3曲をはじめ、ももいろクローバーZやPUFFY、俳優の藤木直人やMEGなどに提供した曲をセルフカバーしたトラックが並ぶこのアルバムは、たしかに「ロック」という名の音楽版「娯楽の殿堂」のようであり、アルバム全体がワンステージのバラエティショーのようである。

「僕は音楽を聴くと、ストーリーを映像で想像してしまうのです。恋愛の歌でも、その歌にしかない変な風景が見えたりすると魅力を感じますし、自分が歌の世界の中でいろいろな役を演じることもできますよね。子供の頃は2人の姉がもっているオルゴールの『白鳥の湖』を聴きながら、蓋を閉めて音楽が止まりかける瞬間や開けたときに途中からまた始まることが楽しくて、そのときの不思議な興奮はずっと覚えているのです。音楽って、人の心を操れる魔力をもっているなと感じますし、それを仕事にしている自分はなんて幸せなんだろうと思っています」

そうしたROLLYだが、ライブと並んで個性を発揮しているのはミュージカルのステージだ。『ロッキー・ホラー・ショー』や『三文オペラ』、ロック・オペラ『TOMMY』などに出演して存在感をアピールしてきたが、2017年にはティム・バートン監督が映画化してヒットした『ビッグ・フィッシュ』のミュージカル(白井晃演出)に出演。2019年11月に再演される舞台では、前回同様にサーカスのエイモス団長を演じる。

「ティム・バートンさんは、もう僕にとって救いの神様みたいな人ですね。もちろん『ビッグ・フィッシュ』や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『シザーハンズ』をはじめあらゆる作品を観てきましたが、バートンはヒーローではない社会のはみ出し者に光を当てて生き方を肯定してくれるのです。『ビッグ・フィッシュ』に出てくるサーカスの団長も実は狼男で、この役がまた演じられるのは本当に幸せですね。それに加えて今回は、他のキャラクターもいくつか演じることになりそうですが、主役のエドワードは前回も感動的な演技を見せてくれた川平慈英さんしか考えられません。僕自身、毎回ステージ上で彼の演技に泣かされましたから」

2019年だけでもコンサート、ミュージカル、そして映画に出演。さまざまなキャラクターに扮してもすべてがROLLYであるという、実に個性的なパーソナリティが光る。しかしその根底にあるのは、やはり音楽への深い愛情ではないかとも思えるのだ。

「白井晃さんが演出をした『星の王子さま』という舞台で、僕はうぬぼれ男とキツネの二役を演じたのですが、キツネが『本当に大切なものは目に見えないんだ』という有名な台詞を口にするのです。まさにそれって音楽のことだなと思いますし、目に見えないものなのに人を熱狂させたり夢中にさせるってすごいですよね。僕はそれをずっと信じて、これからも活動していきたいのです」

 

■アルバムインフォメーション

『ROLLY’S ROCK WORKS』

発売元:キングレコード
発売日:2019年5月21日(火)
価格:3,000円(税抜)
詳細はこちら

■公演インフォメーション

ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』

日時:2019年11月1日(金)~11月28日(木)
会場:シアタークリエ(千代田区有楽町1-2-1)
料金:12,000円(税込・全席指定)
お問い合わせ:東宝テレザーブ
TEL:03-3201-7777
詳細はこちら

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:マキタスポーツさん「オトネタ作りも、音楽に関わるようになったのも、佐野元春さんに出会ったことから始まっています」

9334views

エリック・ホープリッチ&ロンドン・ハイドン弦楽四重奏団

音楽ライターの眼

その夜、バセット・クラリネットは“歌った”|エリック・ホープリッチ&ロンドン・ハイドン弦楽四重奏団~バセット・クラリネットで聴く、モーツァルト『クラリネット五重奏曲』

7678views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカで音楽好きの子どもを育てる

15258views

アコースティックギター

楽器のあれこれQ&A

アコースティックギターの保管方法やメンテナンスのコツ

9202views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

13050views

調律師 曽我紀之

オトノ仕事人

演奏者が望むことを的確に捉え、ピアノを最高のコンディションに整える/コンサートチューナーの仕事

7699views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

10604views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

11101views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

21598views

if~

われら音遊人

われら音遊人:まだまだ現在進行形!多くの人に曲を届けたい

2082views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

9287views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11645views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

9788views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

24799views

音楽ライターの眼

連載42[ジャズ事始め]『ランドゥーガ〜セレクト・ライブ・アンダー・ザ・スカイ’90』解説その2

1902views

ホールのクラシック公演を企画して地域の文化に貢献する/音楽学芸員の仕事

オトノ仕事人

アーティストとお客様とをマッチングさせ、コンサートという形で幸福な時間を演出する/音楽学芸員の仕事

13666views

練馬だいこんず

われら音遊人

われら音遊人:好きな音楽を通じて人のためになることをしたい

6802views

CP88/73 Series

楽器探訪 Anothertake

ステージで際立つ音色とシンプルな操作性で奏者をサポート!最高のライブパフォーマンスをかなえるステージピアノ「CP88」「CP73」

18987views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

26586views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

6094views

楽器のあれこれQ&A

ピアノ講師がアドバイス!練習の悩みを解決して、上達しよう

5729views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

6389views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11645views