Web音遊人(みゅーじん)

SY99

【楽器探訪 Another Take】試行錯誤の90年代~人気シリーズMOTIF誕生まで

90年代の代表的なモデルとしてまず挙げたいのは、1991年に発売された、音楽制作に必要な機能を備えたワークステーションシンセ「SY99」(写真上)。エフェクターやシーケンサーなど曲づくりに便利な機能が入っており、現在主流となっているワークステーションシンセのベースを確立しました。
また、新しい音源の開発に力を注ぎ、サンプリング音源より管弦楽器の奏法をリアルに表現できるVA(バーチャルアコースティック)音源などが生まれました。一方、90年代にはサンプリング技術が発展し、オリジナルの音色をつくることより、プリセットされた音色を選んで鳴らすことが一般的になってきました。
「またヤマハが行ったのは、鍵盤楽器としてのシンセを見直すことでした。世の中のシンセには鍵盤を持たないものもあり、それまでは61鍵モデルと76鍵モデルで展開していましたが、1999年発売の『S80』では、シンセとしてはじめてピアノと同じ88鍵のモデルを加えました」(伊藤さん)

S80

ピアノ曲を弾きたい人をターゲットに据えた「S80」。88鍵モデルが初登場したのに加えて、アコースティックピアノの技術を応用した鍵盤のなめらかな弾き心地も開発者のこだわりでした。

そして、2000年代に入るとコンピューターの性能が飛躍的に上がり、音楽制作に楽器とパソコンを連動させる動きが出てくるなか、2001年、現在のヤマハ シンセの中核を担うフラッグシップモデル「MOTIF(モチーフ)」が登場します。
「MOTIFは、パソコンとの連携機能を備えた新世代のワークステーションシンセであり、音楽制作の現場に革命を起こしました。以前は鍵盤で音を一つひとつ打ち込んでいたのを、MOTIFではパソコンなどから既存の音素材を取り込めるようになったことで、ループ素材(同じリズムやフレーズを繰り返す音素材)を多用するヒップホップの制作を陰で支えました」(伊藤さん)
さらにMOTIFは、モデル名の通り、メニューの選択ひとつで曲の主題(モチーフ)を簡単につくることができました。
「例えば、パソコンから取り込んだ音素材を細かく切り、切った素材をランダムに組み直すことでフレーズがつくれる機能があります。シンセの機能を言葉で理解するのは難しいですが、要するに曲づくりの知識がない人でも曲の断片が自動的につくれて、それを組み合わせることで一曲できてしまう、ということです」と、ヤマハ シンセのプロデューサーを務める大田慎一さん。

写真左:プロデューサーの大田慎一さん。ヤマハ入社後は主に電子楽器のソフトウェア開発に携わり、3年前から現職に。写真右:商品企画・マーケティングの伊藤章悟さん。伊藤さんは40周年記念サイトのディレクションも担当しており、歴代モデルの詳しい話を語ってくださいました。

写真左:プロデューサーの大田慎一さん。ヤマハ入社後は主に電子楽器のソフトウェア開発に携わり、3年前から現職に。写真右:商品企画・マーケティングの伊藤章悟さん。伊藤さんは40周年記念サイトのディレクションも担当しており、歴代モデルの詳しい話を語ってくださいました。

「MOTIFシリーズ」はその後、2003年に「MOTIF ES」、2007年に「MOTIF XS」、2010年に「MOTIF XF」と3度のモデルチェンジが実施されましたが、2014年夏、40周年を記念して発売されたのが「MOTIF XF WH(モチーフ エックスエフ ホワイト)」。
シンセサイザーとしては珍しい、ホワイトの外観を持つ最新モデルについては、Take3で詳しくお伝えします。

Take1:40周年を迎えたヤマハのシンセサイザー
Take2:試行錯誤の90年代~人気シリーズMOTIF誕生まで
Take3:50周年へ向けて ヤマハ シンセの進む道

■シンセサイザー製品ページはこちら 
■ヤマハ シンセサイザー40周年記念サイトはこちら

ヤマハシンセ40周年記念iPhone/iPad用アプリ「Yamaha Synth Book」

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:MORISAKI WINさん「音は感情を表すもの。もっと音楽を通じたコミュニケーションをして、世界を見る目を広げたい」

6810views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#008 常識破りの音数の少なさが“ジャズの気分”に風穴を開けた~セロニアス・モンク『セロニアス・ヒムセルフ』編

3705views

アコースティックギター「FG9」

楽器探訪 Anothertake

力強さと明瞭さが拓くアコースティックギターの新たな可能性

3604views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

24627views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

12284views

オトノ仕事人

あらゆるトラブルに対応できる、優れたリペア技術者を世に送り出す/管楽器のリペア技術者を育てる仕事

7956views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

12884views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11543views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33751views

if~

われら音遊人

われら音遊人:まだまだ現在進行形!多くの人に曲を届けたい

1701views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5868views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10916views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

5103views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

13738views

恋は神代の昔から。バロック期の恋の歌を古楽器伴奏で切々と/コンチェルト・イタリアーノ・スペシャル・アンサンブル

音楽ライターの眼

恋は神代の昔から。バロック期の恋の歌を古楽器伴奏で切々と/コンチェルト・イタリアーノ・スペシャル・アンサンブル

5114views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

7296views

われら音遊人

われら音遊人:ただ今、バンド活動リハビリ中!

8520views

トランスアコースティックピアノ™

楽器探訪 Anothertake

音量の問題を解決し、ピアノの楽しみを広げる「トランスアコースティックピアノ」

5063views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

24923views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5967views

CLP-825WH

楽器のあれこれQ&A

はじめての電子ピアノを選ぶポイントや練習を続けるコツ

4084views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11543views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32551views