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シューベルトとギター、その微妙な関係を解き明かしてオマージュを捧げる意欲作/鈴木大介インタビュー
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2020.5.27
tagged: ギター, インタビュー, 鈴木大介, シューベルトを讃えて
2020年7月12日20時より、鈴木大介YouTubeチャンネルで、ヤマハホール無観客公演を無料配信します。 ぜひ、ご覧ください!
■演奏曲目(予定)
バッハ:組曲ト長調BWV1009、ベートーベン:アダージョ カンタービレ、シューベルト:セレナーデ、ショパン:ノクターンOp.9-2、タレガ:アラビア風奇想曲、バリオス:森に夢みる
シューベルトはギターの名手だった、というエピソードを耳にしているクラシック音楽ファンは多いだろう。有名な伝記(とはいえフィクション満載の)映画『未完成交響楽』の中でもそれを裏付けるような場面があるなど、ギターとの結びつきは長く語られてきた。現在はやや誇張された伝説として考えられているものの、彼が生きた19世紀初頭、ギターは私たちの想像以上に普及しており、当時はまだ歴史の浅かったピアノよりも家庭で親しまれていた可能性は否定できない。
こうした視点と社会背景をひも解きつつ、シューベルトとその時代、さらには作風の影響を受けた後世の作品などを集めたのが、鈴木大介による『シューベルトを讃えて』というアルバムだ。
「シューベルトもギターを持っていて、新しい歌曲を披露する際に弾き聴かせたと伝えられていますし、当時のウィーンでも流行していたであろうビーダーマイヤー(日常的なものに注目するライフスタイル)の影響で手軽だったギターを弾く人は多く、シューベルトの歌曲をギターのために編曲したり、ギター伴奏で歌える楽譜もありました。そうしたことからも『シューベルト=ギター』という説が根強かったのでしょう。ギター愛好家になじみ深いディアベリやコストといった19世紀の作曲家たちも歌曲のギター伴奏譜を作っていますし、確かに長く親しまれてはいたのです」
しかし鈴木はそうした歌曲の伴奏譜などを並べず、シューベルトの音楽とクラシックギターとの関係を広い視点で俯瞰するべく、後世の作曲家たちがシューベルトを意識して書いた曲などもセレクトし、独自のプログラムを組んだ。有名なピアノ曲『楽興の時』から第2番と第3番を筆頭に(ちなみにこの2曲はヤマハのクラシックギターGC82Sで演奏)、20世紀メキシコの作曲家ポンセによる「シューベルトを讃えて」というニックネームが付いたギター・ソナタ(シューベルトの作曲技法を研究したうえで書かれた佳曲)、19世紀前半~中盤を生きたギタリスト、メルツの編曲によるシューベルトの歌曲(有名な『セレナーデ』ほか6曲)などが続く。
「現在のギタリストやギター音楽ファンにとって、シューベルトは決して近しい存在とはいえませんが、僕はむしろシューベルトを通じて、ギターをピアノなどと並ぶ“クラシック音楽の楽器”として認知してほしい。また、19世紀になって神や王侯貴族のために音楽を書いていた時代から脱却し、そうした時代を生きたシューベルトの音楽がもつ個人主義的な側面が、ギターという存在とリンクするのではないかとも思います」
ギターを通じてシューベルトの音楽を再認識するこの1枚は、既存の評価へ一石を投じる問題作なのかもしれない。
鈴木大介〔すずき・だいすけ〕
作曲家・武満徹に認められて注目され、1995年のデビュー以降、クラシックを軸とした多彩なコンサート活動、CD録音によりギターの可能性を大きく広げる。新作の初演も多数あり、ジャズや映画音楽などジャンルを超えた曲も演奏。NHK-FM『気ままにクラシック』でパーソナリティを務めるなど、ギター界のみならず人気を博している。
オフィシャルサイトはこちら
『シューベルトを讃えて』
レーベル:アールアンフィニ
企画制作:ソニー・ミュージックダイレクト
発売元:ミューズエンターテインメント
発売日:2020年3月18日
価格:3,000円(税抜)
詳細はこちら
文/ オヤマダアツシ
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