Web音遊人(みゅーじん)

フジロック・フェスティバル 23年の思い出とベスト・アクト<前編>

残念ながら延期となってしまった“フジロック・フェスティバル’20”。東京オリンピックと日程をずらして2020年8月21日(金)〜23日(日)に開催、テイム・インパラ、ストロークス、忌野清志郎Rock’n’Roll FOREVER、ジャクソン・ブラウンらの出演が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、2021年8月へ延期することになった。
1997年に第1回が行われ、日本の音楽文化のひとつの主軸を成す夏フェスとして行われてきたフジロック、筆者(山﨑)はこれまでの23回、毎年必ず足を運び、その変化、そして不動の音楽愛を身体で感じてきた。本記事では第1回からの思い出と、個人的ベスト・アクトを書き綴ってみたい。
まずは1997年から2006年までを。

●1997年
ベスト・アクト:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン
富士天神山スキー場での第1回フジロックは、日本のロック・フェス新時代の到来を確信させるイベントだったが、2日間の初日でいきなり台風が直撃。そんな中で行われたレイジのライヴは飛び跳ねる観衆の汗で霧が発生、雨で地盤が揺らぐという、天変地異を起こす伝説のライヴだった。翌朝、2日目が中止という発表があり、晴天なのに帰途につくというシュールな光景だった。

●1998年
ベスト・アクト:KoЯn
第2回は東京ベイサイドスクエア(豊洲市場のあたり)で開催された。KoЯnの日本初見参は炎天下の白昼に行われた。後にメンバーたちは「温度と湿度のせいでベストではなかった」と語っているが、熱中症&脱水症状寸前のライヴ・パフォーマンスは今や伝説となっている。

●1999年
ベスト・アクト:ZZトップ
苗場スキー場に落ち着き、初の3日開催となった第3回。日本にまだ夏フェス・カルチャーが根付いておらず、最終日の日曜夕方にはかなりの観客が帰ってしまった。そのせいでジョー・ストラマーからZZトップというヘッドライナーの時に観客の入りがかなり寂しいものだった。だがどちらも演奏は素晴らしく、後にジョーとビリー・ギボンズに当日のことを訊いてみたところ「楽しかった!」と話してくれた。

●2000年
ベスト・アクト:ラムシュタイン
BLANKEY JET CITYとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTと強力な邦楽バンドをヘッドライナーに迎えた2000年。最終日の昼下がり、レッド・マーキー(屋根のあるテント・ステージ)に登場したドイツのヘヴィ・ロック・バンド、ラムシュタインは、ヴォーカリスト、ティル・リンデマンがいきなり上半身を炎に包まれた姿で現れて度肝を抜いた。ヨーロッパではスタジアム規模でライヴをやる彼らのレアなスモール・ギグは海外ファンを喜ばせた。

●2001年
ベスト・アクト:トゥール
前年にはア・パーフェクト・サークルで来日したメイナード・ジェイムズ・キーナンが、この年はトゥールでフジロック参戦。フェスの限界を超えたヴィジュアル・スペクタクルで魅了した。

●2002年
ベスト・アクト:クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ
元カイアスのジョシュ・ホーミ率いるクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが白昼堂々、デイヴ・グロール(フー・ファイターズ)、ニック・オリヴェリ(ドワーヴス)、マーク・ラネガン(スクリーミング・トゥリーズ)というオールスター布陣で出演。この年はザ・ディリンジャー・エスケイプ・プラン、バットホール・サーファーズなども苗場の山々を揺さぶった。

●2003年
ベスト・アクト:アンスラックス
“スラッシュ・メタル四天王”がホワイト・ステージを蹂躙じゅうりん。フジロック史上最大級のサークル・ピットが生まれた。

●2004年
ベスト・アクト:コートニー・ラヴ
強風と雨の中、行われたコートニーのステージ。リハビリ施設で治療中、ギリギリでビザが出たという彼女、ガラガラ声でメロディが取れておらず、歌詞を書いたカンペの紙が吹き飛び、何だか判らないことを絶叫する中、混沌の渦の中でショーが終わった。なお2010年にホール名義で“サマー・ソニック”に出たときは普通のライヴをやっていた。

●2005年
ベスト・アクト:ギャング・オブ・フォー
オリジナル編成で復活しての来日。鋭い切れ味のポスト・パンクに背筋が凍るのを感じた。バックステージでインタビューして、『エンターテインメント!』CDジャケットにサインをしてもらったら蛍光ペンのインクがブバッと飛び出し、「ジャクソン・ポロックみたいだ!」と笑うアンディ・ギルに知性を感じた。

●2006年
ベスト・アクト:シザー・シスターズ
ピンク・フロイド「コンフォタブリー・ナム」をディスコ調にカヴァーしていた人たち。この年、開会式に出ていたオーランド・ブルームは出演映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ロード・オブ・ザ・リング』などで微妙で難しい表情を見せていたが、観衆と交じって彼らのステージを鑑賞、やはり微妙で難しい表情を浮かべていた。

後編に続く >

FUJI ROCK FESTIVAL’20オフィシャルサイト

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログインタビューリスト

特集

櫻井哲夫

今月の音遊人

今月の音遊人:櫻井哲夫さん「聴いてくれる人が楽しんでくれると、自分たちの楽しさも倍増しますね」

4909views

セイント・ヴィンセント

音楽ライターの眼

セイント・ヴィンセントが切り開くギター・ミュージックの明日

1160views

NU1XA

楽器探訪 Anothertake

アコースティックピアノを演奏する喜びをもっと身近に。アバングランド「NU1XA」

3561views

楽器のあれこれQ&A

ドの音が出ない!?リコーダーを上手に吹くためのアドバイスとお手入れ方法

197483views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

8874views

アカネキカク akaneさん

オトノ仕事人

楽曲のイメージをもとに、ダンスの振りを考え、演出をする/振付師の仕事

2935views

久留米シティプラザ - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

20146views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3487views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33000views

われら音遊人

われら音遊人:ただ今、バンド活動リハビリ中!

8383views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

6454views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32000views

脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

11176views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33000views

音楽ライターの眼

連載2[多様性とジャズ]マスク着用率が高い日本で“音楽と個人主義”が語れるのかを考えてみた

2345views

調律師 曽我紀之

オトノ仕事人

演奏者が望むことを的確に捉え、ピアノを最高のコンディションに整える/コンサートチューナーの仕事

5911views

上海ブラスバンド日本支部

われら音遊人

われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド

2960views

楽器探訪 Anothertake

人気トランペッターのエリック・ミヤシロがヤマハとタッグを組んだ、トランペットのシグネチャーモデル「YTR-8330EM」

5877views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

15243views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

8829views

ギター

楽器のあれこれQ&A

ギター初心者のお悩みをズバリ解決!

973views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3507views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26656views