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ロビン・トロワーとマキシ・プリーストが合体。スタイルを超えたアルバム『United State Of Mind』を発表
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2021.3.10
tagged: リヴィングストン・ブラウン, 音楽ライターの眼, ロビン・トロワー, マキシ・プリースト
ロビン・トロワー/マキシ・プリースト/リヴィングストン・ブラウンのアルバム『United State Of Mind』が2021年3月、CDメディアとして海外で発売となった。
1970年代にギター・ヒーローとして成功を収め、“ジミ・ヘンドリックスの再来”と呼ばれてきたロビンは『魂のギター Bridge Of Sighs』(1974)、『ロビン・トロワー・ライヴ!』(1975)などの名盤を発表。本国イギリスやアメリカはもちろん、日本でも支持を得てきた。1977年の来日公演は今や伝説となっており、1995年にはブライアン・フェリーのツアーに同行するなど、ステージ・パフォーマンスでも魅せている。それ以来日本を訪れていないものの、今日でもロック・ファンの間では人気を誇るアーティストだ。
マキシ・プリーストはポップなメロディのレゲエ/ラヴァーズ・ロックで知られるシンガーだ。1997年にテレビドラマ『踊る大捜査線』主題歌として織田裕二とのコラボレーション・シングル『Love Somebody』がヒット、 2012年にL’Arc-en-Cielへのトリビュート・アルバムに参加するなど、日本の音楽リスナーにもすっかりお馴染みのアーティストである。2007年にはUB40の英国ツアーに同行してファンを驚かせ(正式加入には至らなかった)、現時点での最新作『It All Comes Back To Love』(2019)ではシャギー、インナー・サークル、バウンティ・キラーなどの盟友たちと共演、元気いっぱいのヴォーカルを聴かせている。
共にキャリアの長い人気アーティストとはいえ、まったく接点のなかった2人を結びつけたのが、プロデューサーのリヴィングストン・ブラウンだった。彼は1991年、ロビンがロニー・モントローズやヤン・アッカーマンらと共演した“ナイト・オブ・ザ・ギターズII”ツアーにバック・バンドのベーシストとして参加。意気投合して『20thセンチュリー・ブルース』(1994)に参加、その後ツアーにも同行するなど、長い付き合いだ。
リヴィングストンはまた、マキシの『マン・ウィズ・ザ・ファン』(1996)、『コンビネイション』(1999)などにプロデューサーとして関わるなど、両アーティストと深い交流を持ってきた。
ロビンはマキシの音楽を聴いたことがなかったが、リヴィングストンのスタジオにいるときに数曲を聴かせてもらい、気に入ったという。その後、2人はスタジオで偶然出くわして意気投合。共演アルバムに着手した。
新型コロナウィルス流行の前、2018年にレコーディングされたという『United State Of Mind』。ロビンがベーシックな曲作りを行い、それにマキシが自分のアイディアを加えていくというプロセスで作られた作品ということもあり、レゲエ色はほとんどない。全編マキシのソウル・テイスト溢れるヴォーカルがフィーチュアされ、先行リーダー・トラック『United State Of Mind』からメランコリックな『Walking Wounded』、ブルースの新しい解釈といえる『Sunrise Revolution』など、ロビンが味わい深いリード・ギターを弾いている。ロビンとマキシがベテランならではの個性を主張しながら、お互いの新しい色彩を引き出しており、それをリヴィングストンが作品としてまとめ上げ、昇華させている。まさに三位一体の妙味が発揮されているアルバムだ。
なおロビンはマキシのヴォーカルについて、筆者(山﨑)とのインタビューで「彼の声質はビューティフルだ。素晴らしいシンガーだし、一緒にやったら良い作品が作れると確信していた」と語っている。
『United State Of Mind』は2020年10月にデジタル先行で発表され、ロビンとマキシのファンに驚きと喜びで迎えられた。さらにクリスマス・シングル『Santa Claus Is Back In Town』(ハーモニカでポール・ジョーンズがゲスト参加)では本格派のブルースをやってのけている。
そうなると当然、彼らのステージ上での共演を体験したくなるが、アルバムのレコーディングが2018年。ロビンはその後『Coming Closer To The Day』(2019)、マキシも最新作『It All Comes Back To Love』がグラミー賞レゲエ部門にノミネートされるなど、それぞれが順調なソロ・キャリアを続けている。さらに新型コロナウィルスの影響もあり、フルスケールでのツアーは出来ない状況だ。このまま3人でのプロジェクトがフェイドアウトしてしまう可能性も少なくなかったりする。ロビンは1945年生まれの75歳、マキシは1961年生まれの59歳と決して若くないが、ステージ・パフォーマーとしては文句なしの現役だ。コロナ終息まで若干時間がかかるかも知れないが、ロビン/マキシ/リヴィングストンのトリオ編成でのライヴを実現させて欲しいものである。『United State Of Mind』の楽曲はもちろん、ロビンがギターを弾く『クロース・トゥ・ユー』、マキシが歌う『トゥー・ローリング・ストーンド』『デイ・オブ・ジ・イーグル』など、想像するだけで身震いする。
2021年秋にはロビンのソロ新作『No More Worlds To Conquer』も発表される予定で、ソロとしての北米ツアーも告知されている。彼自身も「このアルバムを出して、日本でライヴをやりたい!」と語っており、そちらも実現することを期待したい。
アルバム『United State Of Mind』
発売元:Manhaton Records
発売日:2021年3月5日
価格:2,690円(税込)
詳細はこちら
山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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