今月の音遊人
今月の音遊人:伊藤千晃さん「浜崎あゆみさんの『SURREAL』は私の青春曲。今聴くとそのころの記憶があふれ出ます」
5425views
自分のイメージを超えてくるピアノ「C3X espressivo(エスプレッシーヴォ)」/梅田智也インタビュー
2069views
2021.3.22
tagged: 梅田智也, C3X espressivo, エスプレッシーヴォ
「C3X espressivo」の商品発表会に登壇し、演奏を披露した梅田智也さん。音色、タッチ感は実際にどのようなものだったのか、その印象をうかがった。
ヤマハのピアノづくりのこだわりが詰まった「C3X espressivo(エスプレッシーヴォ)」。梅田さんがその商品発表会で演奏したのは、シューマンの『アラベスク』とショパンの『華麗なる大円舞曲』。事前に「C3X espressivo」を演奏して得た感触をもとに、みずからが選曲したという。
「このピアノを弾いたときの第一印象が、音の減衰の仕方がすばらしいということでした。ひとつの音が出て、その響きが減衰したところに次の音が重なり、鳴る。滑らかに複雑に響きが混ざり合いながら、音楽が運ばれていく。含みのある音に、色や感情が乗っていく感じです。今、自分自身で取り組んでいるテーマのひとつが、弱音の中にどれだけの種類のニュアンスをつくれるかということなのですが、シューマンの『アラベスク』では、そうした弱音によって、自然の移ろいや感情の揺れ、響きの繊細さの表現をお聴きいただけたと思います」
シューマンと「対比できる曲」として選んだのがショパンのワルツ。「作品として音量の幅もあり、楽器の鳴りやタッチ感、バランス、色の変わり方といった楽器の表現力が発揮できる曲として選ばせていただきました。同音連打(同じ音を続けて弾く)での粒立ちのよさもリアルに感じ取っていただけたのではないでしょうか」
この数年の間に、ヤマハのさまざまなグランドピアノを弾く機会があったという梅田さんが「C3X espressivo」を演奏してまず感じたのが、「こんなにいいのか」という驚きだったという。
「音を出したときに、自分の頭の中でイメージした音を超えてくる瞬間がありました。自分は何もしていないのだけれど、楽器が超えていくというのはすごいことだと思いました。その音に繊細さ、そして一種の色気のようなものを感じたのです。音色を言葉にするのはとても難しいのですが、あえて言うとしたら、あたたかさや優し
さ、まろやかさ、絶妙な響きの曲線……ということでしょうか」
自身が演奏でいつも目指しているのは、「言葉では伝えられない繊細で細かいニュアンスの違いまでを、できる限りの時間をかけて追求し、音楽表現で伝えること」だという。そこを突き詰めるうえで「C3X espressivo」は、「ピアニストの表現の意図やニュアンスを受け取って応えてくれるピアノ」だという。それこそがつまり、ピアノの表現力だと言えるだろう。
梅田さんがもうひとつ挙げたのが、音域ごとの魅力。「低音域の馬力、豊かな支えを感じる安定した中音域、高音域の抜け感。音域ごとに特徴があって、それらがひとつの音楽として存在している。そうなると演奏者としていろいろなアイデアが湧いてきます。ピアニストが仕掛けたことをピアノが返してくれて、演奏者と楽器が一緒に空間を創る。そんな信頼関係を築けるピアノであるなら、演奏者は安心感をもって弾くことができると思います」
梅田さんとグランドピアノとの出会いは小学校高学年の頃。本格的に練習に取り組もうという段階で出会ったヤマハC5Lを、その後も長く愛用したそうだ。普段の練習でグランドピアノを弾くようになって、「こんな表現もできるのか」と、大きな手応えを感じたという。子どもの頃からグランドピアノに触れることで、音への感性がより磨かれるのではないだろうか。
「僕もそう思います。いい楽器を弾くとコントロールが自由自在に効いて、いろいろなことができるようになります。人間って不思議なもので、自分の思い描いたイメージに楽器が応えてくれると、その音になじむように自然と耳も育ちます。ですから普段の練習やレッスンの環境を整えることは、とても大事です。ピアノがよければよいほど、音楽を表現することが楽しくなりますし、子どもたちの可能性も広がるのではないかと思います」
いい楽器は音楽への要求を高めてくれる。だからこそ「C3X espressivo」との出会いによって、大きく開花する才能もあるかもしれない。
自分の表現にじっくりと向き合える「C3X espressivo」は、ピアノを専門的に学ぶ人が音楽的なレベルアップを目指すには最適なモデルだ。では、趣味でピアノを楽しむ人にはどうだろう。
「趣味で楽しむ方たちにもぜひ弾いていただきたいピアノです。音楽が好きなら誰もが、よりよい音を求め、自分の感性を音に反映したいと思うでしょう。そして、自分の求める音色が出たときの喜びは、プロもアマチュアも同じだと思います。ですから、趣味でピアノを弾かれる方にも、ご自身が満足できるいい楽器を選んでほしいと思います。そして、好きな曲を自由に弾いていただきたいです。楽器と一緒に成長していけたら素敵ですよね」
「人と音楽は深く結びついていて、日常生活の中で、必ずどこかで音楽に癒やされている」と梅田さんは語る。音楽とのいい関係を築けたら、日々の彩りも増すだろう。「C3X espressivo」のある日常──。豊かな音楽ライフが目に浮かぶようだ。
梅田智也〔うめだ・ともや〕
岐阜県出身。5歳からピアノを始め、東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業後、同大学院修士課程首席修了。修了と同時にロータリー財団奨学生としてウィーン国立音楽大学に留学。第9回トレヴィーゾ国際ピアノコンクール第1位、第10回浜松国際ピアノコンクールにて日本人作品最優秀演奏賞受賞など、内外の数々のピアノコンクールで入賞、受賞を果たす。東京、名古屋を中心に多くのソロリサイタルを開催するほか、主要オーケストラとの共演、室内楽など幅広く活躍中。
オフィシャルサイトはこちら