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今月の音遊人:菅野祐悟さん「音楽は、自分が美しいと思うものを作り上げるために必要なもの」
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【優待チケット】作曲家に新作を委嘱することでサクソフォンのレパートリーを増やしていきたい/田中靖人インタビュー
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2021.9.8
日本を代表するサクソフォン奏者として、幅広いフィールドで活躍する田中靖人。このたびヤマハホールで、彼のために作曲・編曲された作品を集めた特別なリサイタルが2021年11月7日(日)に開催される。2020年6月に予定されていたが、コロナ禍のため延期となっていた公演である。
「2020年は、僕が東京でデビューリサイタルを開催してから30年にあたる年でした。30年前はフランスやアメリカの近現代作品などを演奏しましたが、ジャズやロックのミュージシャンが自分たちのオリジナル曲だけでライブをするように、いつかオリジナル曲のレパートリーを並べて、コンサートをするのが夢でした。サクソフォンは歴史的に新しい楽器ですから、さまざまな作曲家に委嘱することでレパートリーを増やしていきたいという想いもあり、コンサートのたびに委嘱してきた作品が、作曲と編曲を合わせると40曲以上になっていました。それならばと、この機会に委嘱作品だけを集めたリサイタルを開催することにしたのです」
ソロでのデビューリサイタルの前年(1989年)に、田中は東京佼成ウインドオーケストラに入団。現在はコンサートマスターとして楽団を牽引している。また、須川展也、彦坂眞一郎、新井靖志と創設したサクソフォン四重奏団、トルヴェール・クヮルテットがデビューリサイタルを開催したのも同じ1989年。どの活動においても、30年以上にわたる息の長い取り組みを続けてきた。
「続けているとその先に良いことがあると、いつも自分に言い聞かせています。いちばん大切にしているのは情熱や愛情ですね。佼成ウインドでは伝統的なレパートリーを何十年も演奏することがあるわけですが、毎回新鮮であること、演奏するたびに新しい発見があるよう心がけています。トルヴェールも結成当初から演奏しているレパートリーがありますが、リハーサルや本番中に4人のうち誰かが、不意にそれまでとまったく違うことをやってみることがあります。『それ、いいね!』となって、そこから新しいものが生まれる瞬間は楽しいですね。そのための情熱であり、作品への愛情なのだと思っています」
今回のリサイタル・プログラムの大半は、作曲家の長生淳による作曲・編曲作品で構成されているが、彼とも25年以上の付き合いになる。
「冒頭で演奏するアルベニスの『イベリア第1集 より セビーリャの聖体祭』はピアノ曲で知られていますが、僕からは長生さんに、原曲に忠実に、同じ調で、同じ長さでと編曲をお願いしていました。けれど長生さんから上がってきた編曲版は、サクソフォンらしいフレーズを織り込みながら、さらにアクティブになっていて。楽譜が波線だけになっている箇所があり、『これは?』と聞いたら、『ここはもう、自由に演奏してください。最終的に最後のところに到達していればOKです』とのこと。お互いよく知っている仲だからこそ、できることではありますね」
長生の人となりについて、「普段はもの静かで、僕がずっと話をしていても頷くだけ。それだけに、時折ぼそぼそっと呟く一言の深みがすごいんです。独特のユーモアもありますし。夜中に踊りながら作曲するそうですよ」と嬉しそうに話す田中。そんな彼から見た長生作品の魅力とは?
「長生さんの作品は、演奏する側にとっては非常に難易度の高いものが多いですが、聴く側にはそう聞こえないところが魅力だと思います。たくさんの音がちりばめられているような難しい音楽でも、ひとつの塊になって聞こえるというか、ぐっと人の気持ちに入ってくる。基本的にはメロディックで、美しいハーモニーが使われているのですが、そこから発展して変容していく部分に難解な響きが織り込まれていたりして、その対比や色の変化にストーリー性があるんですね。『変奏曲』や『ユア カインドネス』などを聴いていただくと、その感じがおわかりいただけると思います」
バイオリンの大森潤子を迎えてラストに演奏される『チガイノワカルYJ』は、田中が大好きなハンガリーのロマバンド風のメロディが散りばめられた『ツィゴイネルワイゼン』のパロディ。クラシックに軸足を置きつつ、あらゆる表現の可能性を追求する彼は、「クラシック、ポップス、ジャズというのはジャンルの違いではなく、スタイルや語法の違い」だと語る。
「そんな発想に至ったのは、サクソフォンという楽器だったからかもしれません。ピアノは長いクラシック音楽の歴史の中に膨大なレパートリーがありますが、サクソフォンのための作品が書かれたのは近現代になってから。ストラヴィンスキーはジャズのスタイルを取り入れた作品を書きましたが、それと同じように、現代の作曲家にジャズを取り入れた作品を書いてもらえばいいのでは、と考えるようになりました。そうやって生まれた曲を、自分の本籍であるクラシックの目線で演奏する。つまりクラシカルサクソフォンの音色で、語法やスタイルを変えてジャズを表現するわけです。そう考えると、ジャンルの違いを、スタイルや語法の違いとして捉えることができるのではないでしょうか」
来たるリサイタルでは、サクソフォンという楽器の新たな可能性を見出すことができるに違いない。
日時:2021年11月7日(日)14:00開演(13:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金:一般4,500円、学生3,000円(全席指定)
出演:田中靖人(サクソフォン)、大森潤子(バイオリン)、白石光隆(ピアノ)
曲目:I.アルベニス(長生 淳編)/イベリア 第1集 より セビーリャの聖体祭
C.ドビュッシー(長生 淳編)/小組曲
長生 淳/変奏曲
G.ガーシュウィン(田村文生編)/3つのプレリュード
長生 淳/ユア カインドネス
長生 淳編/チガイノワカルYJ(トリオ)
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本公演の優待チケット(一般:優待価格4,000円/定価4,500円)を計10名様分ご用意いたしました。ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。
※ご応募の際は、ヤマハミュージックメンバーズの会員登録(登録無料)が必要です。
2021年9月17日 (金) 23:59まで
応募はこちら
文/ 原典子
photo/ 阿部雄介
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