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進化し続ける作曲家・富貴晴美が手掛ける5作品
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2021.9.22
tagged: インタビュー, そして、バトンは渡された, 富貴晴美, 鹿の王 ユナと約束の旅, 老後の資金がありません!, 総理の夫, バケモノの子
作曲家・富貴晴美は、国立音楽大学在学中から活動を開始し、今ではドラマに映画、アニメーション、CM音楽をはじめ、アーティストへの楽曲提供など幅広く活動を展開している。日本アカデミー賞優秀音楽賞を3度受賞(第36回の『わが母の記』は最年少受賞)し、大河ドラマでは史上最年少で音楽を担当するなど、第一線で活躍し続ける。
今回は、現在携わっている5つの作品の音楽についてお話を聞きながら、彼女がどのように作曲を進めているかをうかがった。
「アニメーション映画『鹿の王 ユナと約束の旅』は、ファンタジー作品なので、様々な音楽要素を取り入れました。合唱も入れているのですが、それ一つとっても、日本民謡ふうの旋律を用いたり、ブルガリアン・ボイス的な発声を取り入れたり、いろいろな“声”を使った作品を書いています」
作曲時には徹底的に物語を読み込む富貴。今回も原作や脚本、そして制作中の映像を見ながらイメージを膨らませていったという。
「ラストシーンは特に時間をかけて作りました。主人公のヴァンとユナ、二人に血のつながりはありませんが、物語の中で親子以上の関係を育んでいきます。その二人だからこそのラストシーンを描くため、丁寧に、一音ずつ紡いでいきました」
声の出演:堤真一、竹内涼真、杏、ほか
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次はコミカルな要素のある2つの実写映画について。まずは老後の資金問題をコメディタッチで描いた『老後の資金がありません!』。音楽はかなりポップな仕上がりで、物語において重要な“お金”を思わせる効果音も印象的だ。
「お金の音は監督のアイデアなんです。打ち合わせ中もずっと“チャリンチャリンという効果音を入れてほしい”と仰っていて(笑)。今回はお金の音を自分で録ったり、いろいろ工夫しながら音づくりを行いました。また、せっかく楽しい物語なので、カラッとしたサウンドで、ウェットにならないように仕上げました。パーカッションが多いのも特徴かもしれません」
2021年10月30日から全国順次公開
オフィシャルサイト
日本の女性総理とその夫の関係を中心に様々な出来事が起きるコメディ映画『総理の夫』では、また違った手法が用いられているという。
「登場人物のキャラクターが多彩なので、役に対して音楽をつけていくイメージでした。例えば女性総理の強さを表すために、オーケストラサウンドは金管楽器を印象的に響かせることなどを工夫しています。また、中心となる総理夫婦の愛はピアノとストリングスのサウンドをメインに据えて表現しました。脚本を読み、配役からもイメージを膨らませながら曲を書いています」
2021年9月23日から全国順次公開
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続いてはミュージカル『バケモノの子』。劇伴に比べると、ミュージカルで手掛けた作品数は少ないが、その意気込みは。
「もともとミュージカルは大好きなんです。このミュージカルのストーリーは、元となっているアニメーション映画に沿った展開です。主人公の蓮と彼を育てるバケモノの熊徹が、交流を通じお互い成長していく物語がとても素晴らしく、そこに歌をつけるというのはとても楽しかったですね。コミカルな曲、泣ける曲、そして怖い曲……いろいろな曲を仕上げました」
2022年4月30日開幕
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最後は『そして、バトンは渡された』について。2019年の本屋大賞受賞作を原作とした本映画だが、この物語でカギを握るのがピアノ。音楽がかなり重要な役割を果たす作品である。
「色々な曲を書きましたが、基本的にはやはり登場人物一人ひとりにあてて書いている感じですね。中でもヒロインの優子が恋する、早瀬という男の子が劇中で演奏する曲は特に重要です。これがメインテーマのようになっています。彼の演奏するピアノ曲は、特に注目してお聴きいただけたらと思います」
メインテーマにもなっているピアノ曲はどのような曲になっているのだろう?
「“最高にいいピアノ曲をお願いします”というオーダーをいただいたので、とてもプレッシャーでした(笑)。普段私はパソコンの前でMIDIキーボードを使いながら書いているのですが、今回はずっとグランドピアノの部屋にこもって、実際に弾きながら作曲しました。もちろん普段の曲作りでもピアノは弾くのですが、いつもはメロディやコードが浮かんでそれを書き留めたらパソコンの前に向かっています。でも今回は最初から最後までピアノを弾きながら曲を完成させました。久しぶりに色々なクラシックのピアノ曲、たとえばショパンやリストなどを弾いてイメ―ジを膨らませていきました」
2021年10月29日から全国ロードショー
©2021 映画「そして、バトンは渡された」製作委員会
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様々なフィールドで常に進化し続ける富貴。最後に今後の活動の展望を伺った。
「子どもが大好きなので、子どものための音楽を書きたいです。2021年は『みんなのうた』のオープニング曲を担当できて、少し夢が叶いました。以前、人形劇の音楽も書かせていただいたのですが、子どもたちが目をキラキラさせて見ている姿がとても印象的で、すごく幸せな体験でした。またこういうこともしていきたいですね」
文/ 長井進之介
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