今月の音遊人
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本を読むように楽譜を読む、その豊かさを多くの人に伝えたい。書籍『音楽力を伸ばす「譜読み」の基本~楽譜攻略13のステップ~』
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2021.12.9
tagged: 山本美芽, 音楽力を伸ばす「譜読み」の基本, 書籍
「なぜ、楽譜が読めたほうがいいの?」
そんな疑問に正面から向き合った『音楽力を伸ばす「譜読み」の基本』が大きな話題となっている。
著者は、ピアノ教本研究家、音楽ライターとして活躍する山本美芽。音楽教育、音楽史、音楽理論、指導法など、いくつもの領域にまたがる壮大なテーマを、ジャンルの垣根を越えて横断的に考察し、執筆した。研究家とライターという自身のフィールドで得た経験や知識をベースに、全国のピアノの先生たちとの対話や、アーティストへのインタビューから見えてきたことを集約した、渾身の一冊だ。
「楽譜は、地図や台本のようなものです。楽譜が読めると、曲の構成や全体像を客観的に捉えることができます。また、音楽の時間の流れを視覚的に行ったり来たりすることもできます。楽譜を読む力をつけることは、そうした能力や客観性を養うことにもつながると思います」
しかし、そう簡単にマスターできるものではない。読譜に苦労する子どもたちを前に、指導法に悩む先生や不安を感じる親御さんも多いことだろう。そこで本書は「13のステップ」を設定。「音感・リズム感」「五線の仕組み」「空間認知と発達」「簡易楽譜」「内的聴覚」「記憶力と譜読み力」といったテーマで、人それぞれに異なる「つまずきポイント」を見つけられるようにした。「今すぐ譜読みの処方箋がほしい」人は、ステップが始まる第五章から読むのがお勧め。
「楽譜を学ぶこと自体が大変なのではなく、実はどこかでつまずいているだけ、ということが経験上わかってきました。このステップをもとに、それに気づいてほしいのです」
イラストや図表が多いことも、「なんとかつまずきの原因を探してほしい」という山本の熱量の表れ。とてもわかりやすく、読みやすいと好評だ。「つまずきポイント」とその解決策はぜひ本書で読んでほしいが、ヒントをひとつだけ。それは、童謡や手遊び歌、お手玉といった、昔ながらの歌や遊びが読譜力に直接つながるのだという。いったいそれはなぜなのか。
そこには時代背景や読譜の歴史も関わってくる。その答えは、ぜひ第1~4章で。
「どんなにテクノロジーが進んでも、音楽は心や感性を育み、人間が人間らしく生きていくために不可欠なもの。本を読むように楽譜を読む、読譜ができ音楽を楽しむ、そんな豊かさをひとりでも多くの人に経験してほしい」(「おわりに」より)。そんな著者の強い思いが、全ページからあふれている。
『音楽力を伸ばす「譜読み」の基本~楽譜攻略13のステップ~』
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
価格:1,980円(税込)
発売日:2021年9月28日
詳細はこちら
山本美芽〔やまもと・みめ〕
音楽ライター/ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院修了。ピアノ教育とジャズ・フュージョンを軸に、音楽誌『ムジカノーヴァ』『JAZZ JAPAN』などに寄稿。ピアノ教本研究家として全国で講演、ピアノ講師として指導にも携わる。フェイスブックで「山本美芽ライティング研究会」を主宰。多くのピアノ講師とともに次世代のピアノレッスンのあり方を追究、発信中。『ピアノ教本ガイドブック』(音楽之友社)、『自分の音、聴いてる?』(春秋社)など著書多数。ピティナ指導会員。
文/ 芹澤一美
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