今月の音遊人
今月の音遊人:村治佳織さん「自分が出した音によって聴き手の表情が変わったとき、音楽の不思議な力を感じます」
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枠にとらわれず自分にしかできないものを。川井郁子デビュー20周年音楽舞台&コンサート/川井郁子、秋川雅史インタビュー
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2021.12.3
tagged: インタビュー, 秋川雅史, 川井郁子, 音楽舞台, 月に抱かれた日, 細川ガラシャ, マリー・アントワネット
2020年にデビュー20周年を迎えたバイオリニスト、川井郁子。その記念公演として、自身が企画から原作、演出、音楽までを手がけた音楽舞台&コンサートが開催される。「自分らしいもの、自分にしかできないものをという気持ちは人一倍強い」という彼女は、これまでの“Unframed”(枠にとらわれない)独自の活動を展開し、音楽の可能性を広げてきた。そして、その集大成ともいえるのが今回の舞台芸術だ。
公演は音楽舞台とコンサートの2部構成。
第1部は川井のバイオリンに和楽器も加えた特別編成オーケストラ、そして立体ホログラムやCGを駆使した最先端映像技術が化学反応し、一体となって紡ぐ壮大なファンタジー『月に抱かれた日・序章~ガラシャとマリー・アントワネット~』だ。
第2部には、小西真奈美、咲妃みゆ、紫吹淳、中川晃教と公演ごとに毎回異なるゲストが出演。千秋楽は、これまで幾度も共演を重ね「ふたりの共通点はパッション」と話す秋川雅史に託された。
「お客様を楽しませたり引っ張っていったり。秋川さんのそんな力をお借りしたくて」(川井)
「川井さんの挑戦は止まることがなくて、毎回新しい何かを取り入れていくんですよ。そして、完成度が高い。川井さんの舞台ってなんのジャンルになるの?というと、もう川井郁子というジャンルですよね」(秋川)
それを象徴する第1部の作品は、激動の時代に散ったふたりの女性、細川ガラシャとマリー・アントワネットには不思議な縁があったというエピソードがもとになっている。
明智光秀を父に持つ細川ガラシャは謀反人の娘とされ、後にキリスト教に改宗、そして死を選んだ。気高くも波乱万丈に満ちた彼女の人生は、100年近くの時を経てハプスブルク家に伝えられ、オペラ化。マリー・アントワネットも子どもの頃このオペラを鑑賞したことがあり、処刑される前、妹に宛てた手紙には「私もガラシャのように潔く最期を迎えます」と綴られていたという。
「ガラシャは、音楽的にも東洋と西洋が交わる貴重な女性。芝居とはまた違う視点から、ふたりの物語を紡げるような舞台にしたいと思いました。それが、言葉がない音楽ならではの醍醐味。それを最先端の映像とともに演出したいです」(川井)
クラシックの名曲のなかで川井がもっとも好きだというショーソンの『ポエム』、シベリウスの『バイオリン協奏曲』といったクラシック音楽や、オリジナル曲など、ジャンルにとらわれない楽曲や音色が映像とコラボレーションし、川井にしか創造できない世界観を生み出す。
「楽器だからこそできるこういう表現の方法、そしてこういう舞台。その可能性を感じていただきたいというのが大きな願いでもあります。それが、若い楽器奏者の方にもヒントになればとも思っています」
また、本作品でガラシャの幼少期を演じるのは、娘の川井花音。彼女にとってはこれが初舞台、そして母娘の初共演となる。
「娘は演出の面でも頼れる演出助手みたいな感じで、ありがたい気づきが多いんです。それが活かされた舞台になると思います」
第2部に出演する秋川も、境界線を引くことなく常に新しいことに挑みたいという思いは強い。自身も2021年にデビュー20周年を迎え、今回の舞台にも並々ならぬ意気込みで臨む。
その秋川でも、実は音楽舞台の詳細は本番当日までわからないのだという。
「ですから、ある意味一観客としての楽しみと、その舞台を感じて自分がどんな心境で演奏することになるのだろうという気持ちでワクワクしています」
同時に、それを聴いた人々がどのように感じるのかも楽しみだと顔をほころばせる。
「川井さんと『千の風になって』を演奏したいというのはあります。この曲はこれまで何千回と歌ってきましたが、シチュエーションによってお客様の受け止め方は全然違うんです。鎮魂歌にもなれば、ラブソングにもなり得る。音楽、歌詞の解釈は絶対にひとつではないし、今回はガラシャとマリー・アントワネットという劇のテーマがあって、そのあとでみなさんにどんなふうに響くのか……」
ところで、今回の舞台タイトルには『序奏』の字が躍る。川井はその先も見据えているのだ。
「今回いろいろなチャレンジがありますが、さらに積み上げていきたいものが見えてくると思います。ガラシャと一緒に成長していけたらなという思いを込めて」
極めて挑戦的かつ実験的。これまで体験したことがない音と他分野の化学反応の集大成に、そしてその先に大いに期待が高まる。
川井郁子デビュー20周年音楽舞台&コンサート
第一部 『月に抱かれた日・序章』~ガラシャとマリー・アントワネット~
第二部 川井郁子 with 5 STARs コンサート
●東京公演
日時:2021年12月10日(金)~12日
会場:新国立劇場 中劇場
●大阪公演
日時:2021年12月28日(火)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
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文/ 福田素子
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