Web音遊人(みゅーじん)

枠にとらわれず自分にしかできないものを。川井郁子デビュー20周年音楽舞台&コンサート/川井郁子、秋川雅史インタビュー

2020年にデビュー20周年を迎えたバイオリニスト、川井郁子。その記念公演として、自身が企画から原作、演出、音楽までを手がけた音楽舞台&コンサートが開催される。「自分らしいもの、自分にしかできないものをという気持ちは人一倍強い」という彼女は、これまでの“Unframed”(枠にとらわれない)独自の活動を展開し、音楽の可能性を広げてきた。そして、その集大成ともいえるのが今回の舞台芸術だ。

ふたりの女性の物語を音楽ならではの表現で

公演は音楽舞台とコンサートの2部構成。
第1部は川井のバイオリンに和楽器も加えた特別編成オーケストラ、そして立体ホログラムやCGを駆使した最先端映像技術が化学反応し、一体となって紡ぐ壮大なファンタジー『月に抱かれた日・序章~ガラシャとマリー・アントワネット~』だ。
第2部には、小西真奈美、咲妃みゆ、紫吹淳、中川晃教と公演ごとに毎回異なるゲストが出演。千秋楽は、これまで幾度も共演を重ね「ふたりの共通点はパッション」と話す秋川雅史に託された。
「お客様を楽しませたり引っ張っていったり。秋川さんのそんな力をお借りしたくて」(川井)
「川井さんの挑戦は止まることがなくて、毎回新しい何かを取り入れていくんですよ。そして、完成度が高い。川井さんの舞台ってなんのジャンルになるの?というと、もう川井郁子というジャンルですよね」(秋川)

それを象徴する第1部の作品は、激動の時代に散ったふたりの女性、細川ガラシャとマリー・アントワネットには不思議な縁があったというエピソードがもとになっている。
明智光秀を父に持つ細川ガラシャは謀反人の娘とされ、後にキリスト教に改宗、そして死を選んだ。気高くも波乱万丈に満ちた彼女の人生は、100年近くの時を経てハプスブルク家に伝えられ、オペラ化。マリー・アントワネットも子どもの頃このオペラを鑑賞したことがあり、処刑される前、妹に宛てた手紙には「私もガラシャのように潔く最期を迎えます」と綴られていたという。
「ガラシャは、音楽的にも東洋と西洋が交わる貴重な女性。芝居とはまた違う視点から、ふたりの物語を紡げるような舞台にしたいと思いました。それが、言葉がない音楽ならではの醍醐味。それを最先端の映像とともに演出したいです」(川井)
クラシックの名曲のなかで川井がもっとも好きだというショーソンの『ポエム』、シベリウスの『バイオリン協奏曲』といったクラシック音楽や、オリジナル曲など、ジャンルにとらわれない楽曲や音色が映像とコラボレーションし、川井にしか創造できない世界観を生み出す。
「楽器だからこそできるこういう表現の方法、そしてこういう舞台。その可能性を感じていただきたいというのが大きな願いでもあります。それが、若い楽器奏者の方にもヒントになればとも思っています」
また、本作品でガラシャの幼少期を演じるのは、娘の川井花音。彼女にとってはこれが初舞台、そして母娘の初共演となる。
「娘は演出の面でも頼れる演出助手みたいな感じで、ありがたい気づきが多いんです。それが活かされた舞台になると思います」

舞台のあとの『千の風になって』はどう響くのか?

第2部に出演する秋川も、境界線を引くことなく常に新しいことに挑みたいという思いは強い。自身も2021年にデビュー20周年を迎え、今回の舞台にも並々ならぬ意気込みで臨む。
その秋川でも、実は音楽舞台の詳細は本番当日までわからないのだという。
「ですから、ある意味一観客としての楽しみと、その舞台を感じて自分がどんな心境で演奏することになるのだろうという気持ちでワクワクしています」
同時に、それを聴いた人々がどのように感じるのかも楽しみだと顔をほころばせる。
「川井さんと『千の風になって』を演奏したいというのはあります。この曲はこれまで何千回と歌ってきましたが、シチュエーションによってお客様の受け止め方は全然違うんです。鎮魂歌にもなれば、ラブソングにもなり得る。音楽、歌詞の解釈は絶対にひとつではないし、今回はガラシャとマリー・アントワネットという劇のテーマがあって、そのあとでみなさんにどんなふうに響くのか……」

川井郁子レギュラー番組TOKYO FM『Unframed notes』でのひとコマ

ところで、今回の舞台タイトルには『序奏』の字が躍る。川井はその先も見据えているのだ。
「今回いろいろなチャレンジがありますが、さらに積み上げていきたいものが見えてくると思います。ガラシャと一緒に成長していけたらなという思いを込めて」
極めて挑戦的かつ実験的。これまで体験したことがない音と他分野の化学反応の集大成に、そしてその先に大いに期待が高まる。


川井郁子 舞台「月に抱かれた日」ガラシャとマリー・アントワネット(予告編)

■インフォメーション

川井郁子デビュー20周年音楽舞台&コンサート
第一部 『月に抱かれた日・序章』~ガラシャとマリー・アントワネット~
第二部 川井郁子 with 5 STARs コンサート

●東京公演
日時:2021年12月10日(金)~12日
会場:新国立劇場 中劇場
●大阪公演
日時:2021年12月28日(火)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
詳細はこちら

特集

Web音遊人 - 牛田智大さん

今月の音遊人

今月の音遊人:牛田智大さん「ピアノの練習をしなさい、と言われたことは一度もないんです」

61745views

ドイツ・グラモフォン ベスト・オブ・ベスト

音楽ライターの眼

2018年に創立120年を迎えるドイツ・グラモフォンの歴史を俯瞰する名演集

5223views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に

13418views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バイオリンの購入ポイントと練習のコツ

17622views

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

8498views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

楽器のデモンストレーション、解説、管理までをこなすマルチプレイヤー/楽器博物館の学芸員の仕事(前編)

10453views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

9168views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

2387views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

17914views

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

われら音遊人

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

7828views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

7250views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

27651views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

10812views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

13618views

ヴァイオリンの街―クレモナの魅力

音楽ライターの眼

ヴァイオリンの街―クレモナの魅力

15860views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

7803views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1192views

【楽器探訪 Another Take】演奏に集中できるストレスフリーのキイメカニズム

楽器探訪 Anothertake

演奏に集中できるストレスフリーのキイメカニズム

5556views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

9997views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5059views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

22201views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

5418views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

8795views