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さらなる高みへ──奏者としての節目と新たな挑戦/小林愛実インタビュー
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2022.2.22
9歳にして国際的なピアニストとしてデビューした小林愛実。常に注目の存在としてキャリアを歩みながら、妥協することなく自らの音と向き合ってきた彼女の音楽は進化し続けてきた。2013年からフィラデルフィア・カーティス音楽院に留学し、2015年の第17回ショパン国際ピアノコンクール(以下 ショパンコンクール)で日本人唯一のファイナリストになった小林は、2021年(第18回)に第4位入賞。そんな小林が2022年3月に「小林愛実 ピアノ・リサイタル 2022 Beginning of the future」を開催する。
サブタイトルの「Beginning of the future」には、「これから」という意味が込められているという。これはショパンコンクールの凱旋コンサートではなく、ショパンコンクールを経て新たなスタートを切るという想いが込められている。
「ショパンコンクールではとても光栄な賞をいただきましたが、ピアニストとしてこれがゴールというわけではありません。むしろここから始めなくてはいけないと思っています。今回のプログラムにはショパンだけでなくシューマンやシューベルトを入れました。私の新たな部分をお聴きいただけると思います」
プログラムの前半にはシューマンの『アラベスクハ長調 op.18』、シューベルトの『ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調』(D958)が並ぶ。曲目からも小林の新しい挑戦に対する意欲が感じられる。
「シューマンは何度か演奏しました。でも、シューベルトについては勉強してきたものの、演奏会で弾くのはほぼ初めて。実は大好きな作曲家で、“いつかやりたい”と思っていたのですが、好きだからこそなかなかできなくて……。ショパンコンクールを終えてひと段落したことで、自分の中でひとつのターニングポイントを迎えられた感じがしたので、これからのことを考え、自分の好きな作曲家や作品を演奏していこうかなと思いました」
シューベルトのピアノ・ソナタは全21曲あるが、今回第19番を選んだのはなぜだったのだろうか。
「これはアメリカに留学して最初の年、18歳のときに初めて受けた、シューベルトの後期の3大ソナタのマスタークラスで演奏した曲なんです。それまでシューベルトの作品は即興曲や小さなソナタくらいしか弾いたことのなかった私が急遽受講することになったマスタークラスだったので必死でしたが、弾きながらなぜか不思議と安心感があったんです。そして同時にすごく“好きだな”とも感じていて……。いま、新たなスタートを迎えるにあたって、この18歳のときの体験を思い出したので、このタイミングでぜひ弾いてみたいと。またこの曲はハ短調のソナタですが、シューマンのアラベスクがハ長調なので調のつながりもとても自然なんですよ」
シューベルトはとても好きだと話してくれた小林だが、今回プログラムの最初を飾る、シューマンについてはどう感じているのだろうか。
「シューマンの作品はとても好きですし、相性がいいとも感じています。これからまたいろいろと取り組んでいきたいと思っているところなんです」
リサイタルの最後を飾るのはショパンの『24の前奏曲』。小林はこの曲をショパンコンクールの第3次予選で演奏しており、多くの人々を魅了したことは記憶に新しい。やはり注目せずにはいられない作品である。
「とても大切な作品ですが、今回のリサイタルで演奏したら、この曲とはしばらくお別れかなと思っています。これからはさらに色々な作曲家の作品に取り組んでいきたいので」
確かにプログラムには小林の“これから”への強い想いと意欲が感じられる。今後は独墺の作品が中心になっていくのだろうか。
「まだはっきりとは決めていませんが、そのようになると思っています。あと、バッハも弾きたいですね。実は、人前で演奏することにどこか怖さを感じていて避けていたんです。でも、やっぱりバッハを弾ける演奏家ってかっこいいですし……(笑)。プログラムに入れていこうと思っています。目標の一つですね。ほかにも、シューベルトなど、いろいろと弾きたいものがあります。録音も視野に入れ、いろいろと練りたいと考えています」
サントリーホールでのソロリサイタルはデビューリサイタル以来だという小林。今回のリサイタルは、大変な快挙を成し遂げながら、さらに新たな目標に向かってまっすぐ歩み続ける小林にとって本当に大きな節目となるだろう。常に自身の音に向き合いながら真摯に演奏を届けてくれる彼女の“これから”に、期待せずにはいられない。
日時:2022年3月17日(木)19:00開演(18:00開場)
会場:サントリーホール
料金:6,000円(税込・全席指定)
曲目:シューマン/アラベスクop.18、シューベルト/ピアノ・ソナタ第19番 D958、ショパン/24の前奏曲 op.28
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文/ 長井進之介
photo/ Makoto Nakagawa
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tagged: ピアノ, インタビュー, 小林愛実, リサイタル
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