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ピアソラと、ピアソラ以外──あなたは“本当のタンゴ”を聴いたことがありますか?/小松亮太インタビュー

世界的に有名なバンドネオン奏者であり、2021年にはタンゴ解説書の決定版とも呼べる『タンゴの真実』(旬報社)を上梓したことでも話題の小松亮太が2022年5月26日(木)、ヤマハホールに登場。チェリストの古川展生を迎え、バイオリン、コントラバス、ピアノからなるバンドとともにタンゴの真髄を聞かせる。

ピアソラ以外を聴くことで、ピアソラを知る

2022年はピアソラの没後30周年ということで、プログラムには『ブエノスアイレスの冬』『天使のミロンガ』『コラール』『リベルタンゴ』といったピアソラの名曲たちが並ぶが、同時にタンゴの歴史を作ってきたピアソラ以外の作曲家たちの作品が入っているのがユニークだ。

「まずチェロがフィーチャーできる曲を中心に選びました。ピアソラ以外の作品を聴くことで、ピアソラを知ることができるプログラムになっていると思います。よく“ピアソラはタンゴに革命を起こした”と言われますが、ピアソラが闘っていた“伝統的なタンゴ”がどのような音楽だったのかがわからないと、ピアソラを本当に理解したことにはならないですよね。
近年はクラシックの音楽家がピアソラを取り上げる機会も増えましたが、その多くはピアソラが独自の境地を確立した1980年代以降の作品です。でも僕が関心を持っているのは、ピアソラが既存のタンゴと闘っていた1940〜60年代の作品。“ピアソラなんかタンゴじゃない!”と言っていた先輩たちは、じつはすごいことをやっていた。彼らの存在なくしてピアソラは生まれなかったわけです」

古川との共演曲には、ピアソラのほかにプラサ『ダンサリン』、ロビーラ『エバリスト カリエーゴに捧ぐ』、コランジェロ『夢のすべて』といった作品が入っている。タンゴ・ファン以外にはなかなか馴染みのないこれらの作曲家について、小松の言葉で解説してもらった。

「プラサはピアソラより歳下のバンドネオン奏者で作曲家。アニバル・トロイロ楽団やオスバルド・プグリエーセ楽団などのアレンジャーとしても活躍しました。ピアソラより下の世代には、ピアソラの影響を受けた作曲家が少なからずいるなかで、プラサはその影響下にはなかった人ですね。
ロビーラもピアソラより歳下のバンドネオン奏者/作曲家ですが、モダンジャズやクラシックの要素をタンゴの世界に取り入れ、ピアソラの影響下にあったと言ってもいいかもしれません。ただピアソラと違ったのは、確信犯的に売れなくてもいい音楽を作り続けたこと。唯一、『エバリスト カリエーゴに捧ぐ』だけはオスバルド・プグリエーセ楽団が演奏していたことで有名になりました。
コランジェロは今も現役ですが、ピアソラの息子世代にあたるので、ピアソラの要素は意識せずとも身体のなかに入っているでしょうね。アニバル・トロイロ楽団のピアニストだった人で、作曲家としてはポップテイストあふれる曲をたくさん書きました」

ピアソラ・ブームの前と後

いっぽう、古川が出演するパート以外では、ピアソラの偉大なる先輩たちの作品の数々も演奏される。

「ビジョルドの『エル・トリート(仔牛)』は、まだタンゴにバンドネオンが定着していなかった時代の曲なので、バイオリンとコントラバスとピアノだけで演奏します。ビジョルドは作曲家としてだけでなく、作詞家やエッセイストとしても活躍しましたが、彼が作った曲でいちばん有名なのは『エル・チョクロ』です。
トロイロとピアソラの合作による『コントラバヘアンド』は、タンゴ史上はじめてコントラバスをフィーチャーした曲。“コントラバスしながら”という意味ですね。
ピアナの『悲しいミロンガ』は、もとは歌が入る曲です。ピアナはかつてのブエノスアイレスには黒人がたくさんいたはずだということを仮想現実的に考えて、黒人の世界観を歌った曲をたくさん書きました」

小松の話を聞いていて強く感じるのは、タンゴ界の第一線で活躍しながらも、同時にタンゴを客観的に見て、ときには批判も辞さないひたむきな姿勢である。

「僕がこの仕事をはじめた20歳ぐらいのころ、ライブにいらしたお客さまは年配の方が多く、もう少し若年にも聴いて欲しいと思い、ジャズクラブやワールドミュージック系のライブハウスに出演させてもらえるよう経験を積み、ようやく少しずつ若い世代のお客さんが増えていきました。そうしたら、そこにピアソラ・ブームがきたんですよ。ギドン・クレーメルやヨーヨー・マをはじめクラシックの演奏家がこぞってピアソラを取り上げるようになり、そこでタンゴ界も一気に変わってしまいました。ピアソラ・ブームの前は“ピアソラはタンゴじゃない。あれはいけません”だったのに、ブーム後は“ピアソラがあればいい。それ以外の昔のタンゴには興味ありません”と。あまりに極端ですよね」

ピアソラも、その上の世代も下の世代も、それぞれがしのぎを削って発展してきたタンゴの歴史。その熱量に触れられる今回のコンサートは貴重な機会になるだろう。

■公演インフォメーション

Elegant Time Concert~上質な時間を貴方に~
アストル・ピアソラ没後30th Anniversary 小松亮太 Homage to Piazzolla(ピアソラへのオマージュ) -featuring 古川展生-

日時:2022年5月26日(木)14:00開演(13:30開場)
会場:ヤマハホール
料金:コンサートのみ:5,000円/ドリンクセット:5,700円(限定数)チケットはすべて税込・全席指定

ドリンク

※ドリンクセットにはコンサートチケット料金・ヤマハ銀座店1F「NOTES BY YAMAHA(Café Stand)」でのドリンク代が含まれます。

出演:小松亮太(バンドネオン)、古川展生(チェロ)、近藤久美子(バイオリン)、田中伸司(コントラバス)、熊田 洋(ピアノ)
曲目:A.ピアソラ/ブエノスアイレスの四季 より ブエノスアイレスの冬、リベルタンゴ、J.プラサ/ダンサリン、E.ロビーラ/エバリスト・カリエーゴに捧ぐ、J.コランジェロ/夢のすべて ほか
公演の詳細はこちら

■優待チケットの特別販売

本公演の優待チケット(来場チケット:優待価格4,500円/定価5,000円)を計10名様分ご用意いたしました。ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。
※ご応募の際は、ヤマハミュージックメンバーズの会員登録(登録無料)が必要です。
応募締め切り:2022年5月8日(日)23:59まで
応募はこちら

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