Web音遊人(みゅーじん)

海外ブランド製品からノベルティまで、日本の市場に出る前に必ず行われる「品質管理」とは?

総合楽器メーカーとして、さまざまな楽器やオーディオ製品などを製造しているヤマハ。一方で、日本国内では自社製品だけでなく、世界の著名ブランド製品の取り扱いも行い、音楽シーンの多様なニーズに応えています。
そうした海外ブランド製品を日本の市場に送り出す際に欠かせないのが品質管理。その役割を担うカスタマーサポート部「CS・品質企画課」の伊藤晃範さん、鈴木雄貴さん、水戸瑞季さんに業務内容を伺いました。

本体から取り扱い説明書に至るまで70項目にもおよぶチェックを実施

「ベーゼンドルファー」や赤いステージピアノで有名なスウェーデンの「ノード」、アメリカの注目ギターブランド「ブリードラブ」、イギリスのギターアンプメーカー「マーシャル」など、ヤマハが取り扱っている海外ブランドは40社以上。その製品は、鍵盤楽器から弦楽器、ドラム・パーカッションなどの楽器からプロオーディオ、譜面台やスタンドにいたるまで多岐にわたります。
こうした製品は輸入してすぐに販売されるわけではなく、「CS・品質企画課」による厳しいチェックを経なければなりません。
「海外にはそれぞれの法規制などがありますが、さらに日本の法令や社内基準をクリアするためのチェックを行っています。一連のプロセスを踏んだものだけが出荷されています」
主にアコースティック楽器を担当する鈴木さんは、そう話します。
品質管理とひと言でいっても、機能・操作性、耐久性、そして安全・衛生面、環境面などさまざまな視点からの管理が必要。法律や規制など必ず満たさなければならない条件は大前提ですが、ほかにもトータルで約70にもおよぶ細かな項目において厳しいチェックを実施しています。
「対象となるのは製品本体だけでなく、容器包装から保証書、取り扱い説明書まで製品に関わるすべてです」(鈴木さん)
例えば、容器包装に記載されたリサイクルのための識別マークは、誰もが一度は目にしたことがあるでしょう。そうしたマーク表示の管理も「CS・品質企画課」の役目です。また、アフターサービスに関わるパーツ供給や修理の実施方法、顧客サポートの実施手順が決まっているかなども出荷前の重要な検査事項です。

CS・品質企画課で使用している「製品評価シート」。製品ごとに細かくチェック項目が記されている。

さらに、電子楽器やオーディオ製品では、電気用品安全法や電波法の順法が必須。輸入業者であるヤマハミュージックジャパンは定められた手続きを履行し、適切な技術基準への適合確認をしなければなりません。遵法性の確認ができたうえで、電気用品安全法に関わる「PSEマーク」や電波を使う機器に対して電波法に適合していることを証明する「技適マーク」を表示する必要があります。
「電気用品安全法では基準適合確認が義務づけられていますが、製造元が提供するさまざまなレポートを精査し、電気的安全が担保されているかを確認。その基準も頻繁に更新されるため、その都度改訂に応じてチェックする必要があります」
そう話すのは、電気系製品を担当する伊藤さん。海外とのやり取りでは、お国柄もあって調整に苦労するケースもあるそう。いわば、日本に流通する“お墨付き”を与えているのが「CS・品質企画課」なのです。

nord(ノード)のステージピアノの背面。電気用品安全法の基準をクリアした証であるPSEマークと、輸入事業社名(ヤマハミュージックジャパン)を記したシールが貼られている。

ノベルティにも妥協を許さない品質管理を

もうひとつの重要な業務は、イベントなどで配布されるヤマハのノベルティの品質管理です。ヤマハのロゴが入ったクリアファイルやボールペン、カップといったノベルティグッズのほか、コンクールで贈られるメダルなど、扱う製品は多種多様です。
これらについても輸入製品同様、約70項目におよぶ厳密なチェックを行っています。例えばお客様が口にするカップでは、食品衛生法に基づき、有害物質が溶け出さないかといった安全性を確認する溶出検査を外部に委託し、実施。クリアファイルに使用される印刷用インクなどについても、ヤマハの基準を満たしているかを確認しています。
「製品によって、求められることや状況は異なります。使用するお客様やシーンを考え、必要項目以外の試験を独自に考えて行ったりもしています」
ノベルティ担当の水戸さんの、そんなきめ細やかな配慮も品質を支えています。

クリアファイルやハンドタオル、ふせんなど、ノベルティグッズの種類はいろいろ。すべて、厳密なチェックを経て使用される。

輸入品、ノベルティともに、サンプル品、もしくは製造元が提出したさまざまな資料をもとに最初のチェックが行われます。その後、初ロットで国際基準の品質規格にのっとった抜き取り検査を実施。二段階のプロセスを踏み、徹底チェックしています。
「業務は、営業部門とも連携して進めています。製品を早く世に送り出したい気持ちは営業も我々も同じですが、何よりも安全が第一」(鈴木さん)

品質管理とは安全基準や規格をクリアするだけでなく、お客様の期待に見合うかどうかの精査まで含めたもの。だから、お客様の満足のため、決して妥協を許さない──。それが「CS・品質企画課」の基本であり、矜持でもあるのです。

photo/ 澤島宏明

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:清水ミチコさん「歌モノのネタができることは自分にとって強みです」

今月の音遊人

今月の音遊人:清水ミチコさん「ピアノをちょっと絶ってみると、どれだけ自分に必要かわかります」

20356views

音楽ライターの眼

AIジャズの嚆矢は20年前の東京ザヴィヌルバッハだったんじゃなかろうか?

3376views

楽器探訪 - ステージア「ELC-02」

楽器探訪 Anothertake

持ち運び可能なエレクトーン「ELC-02」、自由な発想でカジュアルに遊ぶ

30617views

サクソフォンの選び方と扱い方について

楽器のあれこれQ&A

これからはじめる方必見!サクソフォンの選び方と扱い方について

56138views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:和洋折衷のユニット竜馬四重奏がアルトヴェノーヴァのレッスンを初体験!

4731views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

弦楽器の“健康診断”から“治療”、健康アドバイスまで/弦楽器の調整や修理をする職人(前編)

14525views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

22558views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10745views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

30652views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:人を楽しませたい!それが4人の共通の思い

6501views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

4531views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9968views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

8648views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8409views

ジャズとロックの関係性

音楽ライターの眼

コルトレーンってビートルズ・ナンバーを演奏してなかったんだっけ?──再び

5198views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

8467views

われら音遊人

われら音遊人:ただ今、バンド活動リハビリ中!

7885views

v

楽器探訪 Anothertake

弾く人にとっての理想の音を徹底的に追究したサイレントバイオリン™

6592views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

23987views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

5196views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

3021views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2970views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9968views