Web音遊人(みゅーじん)

井上鑑・鈴木秀美

井上鑑が父から引き継ぎ、伝えていきたいこと。コラボレーションコンサート「TOKYO INSTALLATION 2022」/井上鑑・鈴木秀美インタビュー

作編曲家、ソングライターとして活躍を続ける井上鑑。チェロ奏者であり、近年は指揮者としてもステージに立つ鈴木秀美。長年にわたり国内外で幅広い活動を展開している2人だが、その接点はずいぶん幼い頃だったという。
「鑑さんのお父様であるチェリストの井上頼豊さんは、僕が9歳で初めてチェロを触った時の先生なんです。当時はご自宅へレッスンにうかがっていたので、お互いの名前を知ったのも早い時期でした」
そう振り返る鈴木に対して井上は「秀美さんをはじめ、いろいろな人が弾くチェロの音が聴こえてくるわけで、そうすると話題にも上るんですよ」と笑う。
「細かくたずねることはありませんでしたが、誰々がコンクールに出るとか初めてリサイタルを開くといった話は自然と耳に入るんです。その後も、皆さんが演奏家として歩まれる姿に興味を持って見ていました。ですから、秀美さんと僕は少し珍しい関係かもしれませんね」

演奏スタイルが異なるからこその魅力

そんな縁ある2人が、2022年10月18日(火)にヤマハホールで開催される「-井上鑑 TOKYO INSTALLATION 2022- Birds of Tokyo『願いを乗せて飛び立つうた』」で久々に共演する。これは、1986年に発表された井上のソロ作品『TOKYO INSTALLATION』が2022年春に再発売されたことをきっかけに、「今、伝えたいことをもう一度かたちにする」というテーマで行われるコンサートシリーズのひとつ。同年11月22日(火)、23日(水・祝)にブルース・アレイ・ジャパン(東京都目黒区)、11月30日(水)にトッパンホール(東京都文京区)でも開催され、会場ごとにゲストが替わる。ヤマハホールでの公演には鈴木とともにマレー飛鳥(バイオリン)、古川展生(チェロ)という弦の名手が揃う。
「ピアノを含めて、ヤマハホールは弦の響きがとてもいい。さすが楽器をつくっているヤマハの空間だなと思います」(井上)
「響かないとつまらないし、響き過ぎてもよくない。そのバランスがいいホールですよね。演奏すると実感します」(鈴木)
最終的な構成を詰めるのはこれからとしつつも、井上は「3人の演奏スタイルが異なるからこそおもしろいんです。アレンジャーとしての僕は、例えて言うなら手書きの地図を皆さんに託すようなもの。そこからどんな道を歩いてくれるのか、全員で一緒に歩いた先にどんなものが見えるのか。今から楽しみです」と言う。それを受けた鈴木も「この4人は今回が初顔合わせ。この日だからこその演奏になるのは間違いありません」と頷いた。

井上鑑・鈴木秀美

写真左から、鈴木秀美、井上鑑

作品の背景を紐解くプログラム

プログラムは『「コル・ニドライ」のテーマによる変奏曲』『リチェルカーレ的前奏曲』といった古典や近現代作品にインスパイアされた曲と井上のオリジナル楽曲がひとつにつながり、作品の背景を紐解いていくような構成になるという。また、当シリーズタイトルからもイメージされる『鳥の歌』も予定されている。井上は、伝説的チェリストであり人道主義者でもあったパブロ・カザルスが世界に歌いかけたこのカタルーニャ民謡を、さまざまな音楽家たちが俳諧連歌のように歌い交し合うウェブサイト「連歌・鳥の歌」の代表でもある。
「カザルスを愛し、想いを受け継いだ頼豊先生は、演奏会でこの曲をコンサートの最後に必ず弾いておられました。鑑さんが今、そのメッセージを引き継ぐことはとても意味のあることだと思います」(鈴木)
「現在の状況として“人間の未来はどうなるんだろう”ということについて、リアリティを持って考える人が増えたと思うんです。カザルスが生涯を通して伝えようとしたことを引き継ぎ、伝え直すという意味でも、やはり大切な曲ですね」(井上)
4人から生まれる一期一会のハーモニーに期待はふくらむばかりだ。

井上鑑・鈴木秀美

-井上鑑 TOKYO INSTALLATION 2022-
Birds of Tokyo 「願いを乗せて飛び立つうた」

日時:2022年10月18日(火)19:00開演(18:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金:5,000円(全席指定)
出演:井上鑑(ピアノ、キーボード、ボーカル)、マレー飛鳥(バイオリン、ボーカル)、鈴木秀美(チェロ)、古川展生(チェロ)
詳細はこちら

photo/ 阿部雄介

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:西村由紀江さん「誰かに寄り添い、心の救いになる。音楽には“力”があります」

7933views

壷阪健登

音楽ライターの眼

ジャズの新時代を拓く瑞々しいリリシズム/壷阪健登ソロ・ピアノ・コンサート“Departure”

1051views

サイレントブラス

楽器探訪 Anothertake

“練習”の枠を超え人とつながる楽しさを「サイレントブラス」

3843views

アコースティックギター

楽器のあれこれQ&A

アコースティックギターの保管方法やメンテナンスのコツ

3759views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

8983views

調律師 曽我紀之

オトノ仕事人

演奏者が望むことを的確に捉え、ピアノを最高のコンディションに整える/コンサートチューナーの仕事

3160views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

7023views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3013views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

30438views

Red Pumps BIGBAND

われら音遊人

われら音遊人:出自がさまざまなメンバーと、誰もが楽しめる音楽をビッグバンドで

339views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

すべては、あの日の「無料体験レッスン」から始まった

5286views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29635views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12294views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14692views

スティーヴ・ヴァイ

音楽ライターの眼

スティーヴ・ヴァイがバイカー仲間の亡き友と作った『ヴァイ/ガッシュ』が発表

1485views

オトノ仕事人

大好きな音楽を自由な発想で探求し、確かな技術を磨き続ける/ピアニストYouTuberの仕事

44556views

上海ブラスバンド日本支部

われら音遊人

われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド

2113views

STAGEA(ステージア)ELB-02 - Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンで初めてオーディオファイル録音機能を装備

13119views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

22268views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

8441views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バイオリンの購入ポイントと練習のコツ

19721views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

8581views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9889views