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「音楽があるから世界が美しい」そこを目指すフランスのピアノ指導とは/船越清佳インタビュー
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2022.9.2
tagged: ブックレビュー, 船越清佳, 子どもに「続けたい!」と言わせるピアノレッスン
フランスでのピアノ指導の体験をもとに、生徒がピアノを続けられるレッスンとはどんなものかをわかりやすく具体的に解説した、『子どもに「続けたい!」と言わせるピアノレッスン』が興味深い。著者は、フランスでの指導歴が20年あまりというピアニスト、船越清佳。高校卒業後にフランスに留学し、以来、フランスを拠点にピアノ指導を行っている。『ピアノ嫌いにさせないレッスン』(2013年刊)を加筆・修正し新たに出版された本書は、日本の感性とフランスの芸術性や国民性を融合しながら、音楽を好きになるピアノ指導の核心に迫った一冊だ。
日本では民間の音楽教室で行われている楽器のレッスン。しかしフランスでは、子どもから大人まで、希望者は各市にある市立音楽院でレッスンを受けられるという。船越はそのピアノクラスを担当し、現在も30人以上の生徒を指導している。
「生徒さんが小さい頃から大学生や大人になるまで毎週会って、一緒にピアノを弾く時間を共有してきました。皆さんすごく楽しんでレッスンを続けていて、なかには親子共演を目標にピアノを始めた親御さんもおられます。その年月を振り返り、どのような指導が生徒にピアノを続けさせる原動力となるのか、私の経験や考えをまとめました」
教え始めた頃は「完璧に弾かせることに気を取られていた」という船越。しかし、自身が指導を受けたすばらしい師や、感性豊かな同僚たち、納得できるまで質問する生徒たちと交流するうちに、「いきいきと演奏にチャレンジするからこそ成長できる」と気づいた。そこに気づけたのは「生徒から学んだことが大きかった」と語る。
「音楽は人がよりよく生きるために必要なもの。ピアノを上手く弾くこと以上に大事なことがあります。ピアノを入り口として音楽以外の芸術にも興味を広げて、豊かに音楽を続けてほしい。ピアノがさまざまな世界とつながるきっかけになれば、という思いで執筆しました」
本書には注目ポイントがもうひとつ。「高度なレベルで仕事と音楽を両立させているアマチュア音楽家」のコラムだ。ライターとしても活動する船越が、イタリア大使の大江博氏、医学博士の江里俊樹氏、また自身の生徒の高校生など、バラエティに富む4人にインタビュー。それぞれが語る「なぜ自分はピアノを続けるのか」の理由は、船越が各章につづった指導法の裏づけにもなっている。
ピアノ指導法というテーマが、フランスから日本を俯瞰する視点で書かれた本書。読み進めるにつれ、自然と視野が開かれるのがわかる。指導者はもちろん、音楽を学ぶ人、その保護者、そしてすべてのアマチュア音楽家はぜひご一読を。
『子どもに「続けたい!」と言わせるピアノレッスン ~音楽嫌いにさせないフランスの指導~』
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
料金:1,980円(税込)
詳細とご購入はこちら
文/ 芹澤一美
photo/ 横田安弘
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