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今月の音遊人:曽根麻央さん 「音楽は、目に見えないからこそ、立体的なのだと思います」
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胸に迫る!映画をこよなく愛した武満徹の新たな決定版『波の盆 武満徹 映像音楽集』/武満眞樹インタビュー
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2022.10.6
tagged: 武満徹, NHK交響楽団, 尾高忠明, 波の盆 武満徹 映像音楽集
日本を代表する作曲家であり、「世界のタケミツ」と称される武満徹。その作品はオーケストラ・ピースから映画音楽、舞台音楽、ポップ・ソングや電子音楽まで多岐にわたる。独特の響きは「タケミツ・トーン」と呼ばれ、世界中を魅了。2021年に没25年を迎えてなお、輝きを失うことなく国内外の多くの音楽家によって演奏され続けている。
2022年夏にリリースされた『波の盆 武満徹 映像音楽集』は、武満徹が愛した映画、テレビのために作曲した作品を集めたアルバム。名曲の数々がNHK交響楽団による貴重な新録音で収録され、聴き手を圧倒的感動の世界へと誘う。本作で選曲に協力されたご息女の武満眞樹さんに、武満徹の音楽の魅力やエピソードをうかがった。
幅広い作品を残した武満徹だが、とりわけ映画などの映像作品をこよなく愛していたという。
「父は、そもそも映画が大好きな人でした。B級、C級といわれるものも含めて、とにかく映画を観ることが好きだったんだと思います。映像を通してさまざまな世界を見られるのが楽しかったようです。母も映画好きなので、食卓では延々と映画の話が続き、子どもだった私は“この人たち大丈夫?”と思っていました。映像作品に関わること自体が趣味のひとつのようでしたね」
眞樹さんが、そんなエピソードを語ってくれた。また、映画やテレビのための音楽を制作する際は、コンサート作品を作曲するときとは明らかに違った雰囲気だったことも覚えているという。
「スケジュールがあるので、集中度やバタバタ度が全然違いましたね。でも、とにかく楽しそうでした。製作スタッフのひとりとして、仕事ができることが喜びだったのでしょう。ふだんの作曲はひとりで行う孤独な作業ですが、映像作品にはいろいろな人が関わっていて、チームワークでやっていくことが嬉しかったのだと思います」
今回リリースされたアルバムには、そんな武満徹の映像音楽に対する思いが詰まった6曲が収録されている。
「父は、映像音楽は音楽だけで成立するものではなく映像と一緒になって、はじめて完成するものという強い意識を持っていました」
武満徹は、音楽だけを独立させて演奏することは作曲の段階ではまったく考えていなかったという。
「それでも、曲によってはコンサートのひとつの作品として編集できるだろうと考えたようです。オーケストラ用に編集した作品がいくつかあってスコアも残っていました。今回のアルバムは、映像作品のサウンドトラックとは違うそれらを演奏、録音していただきました」
珠玉の名曲が収録されたアルバム『波の盆 武満徹 映像音楽集』。タイトルにも冠された『波の盆』は、1983年に放送された倉本聰原作、実相寺昭雄監督のテレビドラマのテーマ曲だ。明治期にハワイ・マウイ島へ渡った日系移民を描いた感動作に武満徹の美しい音楽が寄り添う。
「父が亡くなってから、“家族の葬儀にこの曲をかけたいのだけれど……”という問い合わせがたくさんありました。人は死んでいくけれどそれが最後ではなく、生き残った者には希望があるということを伝えてくれる音楽だと思っています」
また、1981年に放送された吉永小百合主演のNHKドラマ『夢千代日記』のテーマ曲も武満音楽を代表する名作。大ヒットした市川崑監督の映画『太平洋ひとりぼっち』では、数多くの武満作品に取り組んできたギタリスト鈴木大介ら豪華演奏陣によるセッション・レコーディングを実施した。1995年にスイスのグシュタード・シネミュージック・フェスティバルで初演が行われた『3つの映画音楽』は、武満徹が自作の映画音楽『ホセー・トレス』『黒い雨』『他人の顔』の3作品を自身が弦楽オーケストラ用に編曲した作品だ。
これらの楽曲の新録にあたり、指揮を務めたのは数多くの武満作品を振り、武満徹とも親交が深かった尾高忠明。管弦楽はNHK交響楽団による演奏で、武満×尾高×N響という至高の組み合わせが実現した。
「父は熱い思いはあるけれど、いつも飄々としているんですよね。ドロドロしたところがなくて、周囲にすっと溶け込む水彩絵の具のような人でした。人間好きで友だち好きでロマンチスト。嫌なことがあっても常に未来を夢見ていて、希望を捨てない。できあがったアルバムを聴いたとき、そういった父の一面が音楽に表れているなと思いました」
そんな人柄と映画に対する静かな情熱を映し出した作品だからこそ、聴き手の胸に迫るのだろう。
「現代音楽を難解と感じられている方も多いと思いますが、今回の映像音楽集が興味を持っていただくきっかけとなれば嬉しいです。また、このアルバムに収録されている映像音楽はもともと映画やテレビなどのすばらしい映像があるものなので、それぞれの音楽と一緒になった映像作品も観ていただく機会があればと思います」
映像を観た後に、再び音楽を聴く。また新鮮な感動が味わえるそんな聴き方もおすすめだ。
発売元:キングレコード
発売日:2022年7月20日
価格:3,300円(税込)
ダウンロード、ストリーミングはこちら
文/ 福田素子
photo/ 平舘平(2枚目)
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tagged: 武満徹, NHK交響楽団, 尾高忠明, 波の盆 武満徹 映像音楽集
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