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映画『ランディ・ローズ』〜オジー・オズボーンとの関係が生み出したギターの陰翳
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2022.10.7
映画『ランディ・ローズ』(原題『Randy Rhoads: Reflections Of A Guitar Icon』)が2022年11月11日(金)より全国ロードショー公開される。
オジー・オズボーンの初期ソロ・キャリアを支えたギタリストとして『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』(1980)『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』(1981)というヘヴィ・メタル史上最高峰の名盤アルバムに参加しながら、1982年3月19日、25歳の若さで亡くなったランディの人生を辿った映像ドキュメンタリー。その出生からギターへの目覚め、最初のプロ・バンドのクワイエット・ライオット、オジーのバンドでの活躍、飛行機事故での早すぎる死までを1時間半に集約している。
まず重要なのは、本作はオジーと奥方でありマネージャーのシャロン・オズボーンからの協力が得られていない“非公認”作品だということだ。そのため『クレイジー・トレイン』『ミスター・クロウリー』『アイ・ドント・ノウ』などランディの名演を聴くことは出来ないし、オジー&ランディによるライヴ・パフォーマンスの“定番”といえる1981年のTV番組『アフター・アワーズ』からの映像も使われていない。よって、ランディのことをまったく知らない初心者が彼の音楽に触れてみようと突然本作を見ても、その全貌は見えてこない。
とはいっても、そもそもランディ・ローズの映画を見ようという人の大半は既に前述したオジーの2作は聴いているだろうし、万が一聴いたことがないならば、ヘヴィ・メタルの“必聴盤”に触れる絶好のチャンスだ。基本さえ押さえておけば、『ランディ・ローズ』はさまざまな驚きと喜び、そして感動をもたらしてくれる。
本作の見どころといえば、まず貴重なライヴ映像の数々だ。ランディが在籍していた頃の初期クワイエット・ライオットといえば『静かなる暴動 Quiet Riot』(1978)と『暴動に明日はない Quiet Riot II』(1979)が本国アメリカでリリースされず、日本盤LPのみが発売されたが、ほとんどが会場据え付けのカメラあるいは家庭用8ミリカメラとはいえ、これほど多くのライヴ映像が撮影されていたことに驚かされる。1980年、既にオジーのバンドに加入していたランディがクワイエット・ライオットのステージに限定復帰した映像も見ることが可能だ。オジーとのライヴも、客席からの盗み撮りに近い8ミリ映像ながら、歴史的にきわめて貴重なフッテージだ。
そんな“動くランディ”を補うのが、膨大なスチル写真だ。ライヴやバックステージでの写真からプロモーション・ショット、家族やガールフレンドとのプライベート写真まで、有名なものからまったく見たことのないレアなものまでが次々と登場する。
本作のもうひとつのセールスポイントは、ランディと交流のあった家族や友人、ミュージシャン、彼から影響を受けたアーティスト達へのインタビューだ。クワイエット・ライオット時代の盟友ケヴィン・ダブロウ、フランキー・バナリ、ルディ・サーゾ、ケリー・ガルニ、ドリュー・フォーサイスをはじめ、ランディをオジーに紹介したデイナ・ストラム(スローター)、ランディ加入前にオジーが白羽の矢を立てていたゲイリー・ムーア(アーカイヴ映像)、当時のオジーのライヴを見て感銘を受けたと語るダグ・アルドリッチ(ディオ、ホワイトスネイク他)、ランディが亡くなった後任の候補に挙がっていたジョージ・リンチ(ドッケン)、そしてブルース・キューリック(KISS)、ジョエル・ホークストラ(ホワイトスネイク)、ジョン・ドネイ(アンスラックス)、ドウィージル・ザッパらの談話を通じて、ランディのギタリスト像・人間像を浮き彫りにしていく。今回新規に収録されたものではないが、オジーがランディを語るアーカイヴ映像もフィーチュアされており、生前のランディのインタビュー音声も聴くことが出来る。
2004年、ランディのハリウッド“ロックウォーク”殿堂入りセレモニーでオジーと共にレミー(モーターヘッド)とイングヴェイ・マルムスティーンが出席していたり、エンド・クレジットで一瞬だけトム・モレロ(レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン)がギターを弾いていたり、ちょっとしたカメオ出演も楽しい。
2022年、ランディが亡くなって40年が経つが、彼の音楽は聴き継がれる。長年廃盤だったクワイエット・ライオットの初期2作が遂に正規再発(たぶん)されてファンを喜ばせている一方で、やはりオジーの悪魔的=“黒”とランディのクラシカルで繊細=“白”のイメージの対比が生み出す陰翳が奇跡的なコンビネーションを創り出したことを実感させる。
オジー・オズボーンはランディ死後も活動を続け、新作アルバム『ペイシェント・ナンバー9』を発表したところだ。インタビューではしばしばランディが言及され、オジーの中で今もなお彼が生き続けていることを窺わせる。
映画『ランディ・ローズ』は彼の生きた25年とその音楽のセレブレーションであり、そのギターが輝き続ける存在証明なのである。
2022年11月11日(金)から新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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文/ 山崎智之
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tagged: 音楽ライターの眼, オジー・オズボーン, ランディ・ローズ
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