今月の音遊人
今月の音遊人:藤田真央さん「底辺にある和音の上に内声が乗り、そこにポーンとひとつの音を出す。その響きの融合が理想の音です」
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“THE GATE”の日本ツアーを続けている野瀬栄進にボクがメールで質問した内容は3つ。それぞれの回答をまとめながら、ジャズにおけるデュオについて考えてみたい。
あらかじめ断わっておきたいのは、ボクには野瀬栄進にジャズのデュオを代表して語ってもらうつもりはもちろんなく、彼自身がデュオに対して抱いているイメージを探ることができればいいと考えていたことと、このやりとりは公開する予定でいると伝えていたこと。
では、最初の質問から。
1.デュオは野瀬栄進というピアニストになにをもたらしてくれたと考えますか?
この問いに対して彼は、「ベースがいないことで、リズムもハーモニーもその場の状況で変えることができるので、その点でこのデュオに魅力を感じました。曲によっては“扉が開いたような感覚”があったので、それでバンド名を“THE GATE”(=「門扉」の意)にしました」と解説してくれた。
また、ボクが彼らのライヴで感じていた“(野瀬栄進は)ソロとデュオを原則的に分けて考えていない”という部分に関しては、実は、ソロあるいは3人以上の編成で演奏する曲とデュオの曲は「分けている」ことを明かしてくれた。その理由は、「デュオではより自由に演奏できるものを選んでいる」からだという。
より自由である演奏者の意識が、リスナーであるボクに、ソロと“分けて考えていない”ようなイメージを与えたとも言えるのではないだろうか。
“デュオではより自由”という意味については、パーカッションというセクションの特性があったようで、「より細かいリズム、そして大きいグルーヴを重視できるようになりました」という感想から、やはり対立図式ではなく補完する位置関係がこのデュオに大きな効果をもたらしていたことがうかがえる。
2.デュオに関するピアノという楽器の有利/不利をどう考えていますか?
これに対しては、彼はデュオに関して“有利/不利”を考えてはいないとして、デュオだからできることにフォーカスしていることを明かしてくれた。編成数が少ないということは音数が少ないことであり、やれることが減ることを意味するわけだけれど、彼は逆に、自由度が増すことでオーケストラのようなサウンドへの挑戦が可能になることを指摘している。
要するに、不利に見える点を裏返せば有利になりえる、ということだ。
3.ジャズにとってデュオはどんな存在意義があると思っていますか?
非常に大雑把な質問で、インタヴュアーとしては反省しなければならないのだが、野瀬栄進は真摯に答えてくれた。曰く、デュオにかぎらずどんなユニットでも、それにしかできない表現が重要で、それを求めるかぎり“存在意義”がある――という持論を語ってくれたのだ。
そのうえで、デュオは2人という最小編成のバンドであり、だからこそ信頼関係の占める割合も多くなること、また継続してこそ掘り下げられる音楽的要素も多く、それだけに「2人のケミストリーがばっちり合った瞬間に、この2人でしか表現できない領域に達することができる」のだと、武石聡という理解者を得て続けてきたからこその“デュオ感”で、この質問に対する答えをまとめてくれた。
次回は2017年後半の話題作2枚を取り上げ、新デュオ論のまとめへと向かっていきたい。
<続>
富澤えいち〔とみざわ・えいち〕
ジャズ評論家。1960年東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる生活を続ける。2004年に著書『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)を上梓。カルチャーセンターのジャズ講座やCSラジオのパーソナリティーを担当するほか、テレビやラジオへの出演など活字以外にも活動の場を広げる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。『井上陽水FILE FROM 1969』(TOKYO FM出版)収録の2003年のインタビュー記事のように取材対象の間口も広い。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。
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文/ 富澤えいち
tagged: ジャズ, デュオ, ジャズとデュオの新たな関係性を考える
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