今月の音遊人
今月の音遊人:AIさん「本当につらいときも、最終的に救ってくれるのはいつも音楽でした」
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音楽が感情を伝える力になる!動画や写真をアップロードするだけで、カンタンにBGMが作れるスマートフォンアプリ「AmBeat」
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2023.3.10
いまやスマートフォン一台あればSNSやYouTubeで自分の表現を世界に発信できる時代。最近では動画で日常の様子を発信する“Vlog”が人気で、日々世界中で魅力的なコンテンツがアップされている。テーマ性の気軽さから、すでにVlog作りを楽しんでいる人もいるだろうが、撮影はできてもBGMまで自作するという人は、そうは多くないはず。
そんな人におススメなのが、動画や写真をアップロードするだけで簡単にBGM付きのビジュアルコンテンツが作成できる、スマートフォン用アプリ 「AmBeat」だ。
音楽の専門知識がなくてもBGMが作れる、まさに夢のようなアプリの誕生のきっかけになったのは、音楽を使った表現やコミュニケーションをもっと気軽に楽しみたいという想いからだったと、研究開発統括部感性計測グループの下薗大樹さんは語ってくれた。
「私は普段から合唱などいろいろ音楽をやっているんですけど、仲間とのコミュニケーションを深めるのには時間がかかるなと思っていて。SNSなどを使って、もっと気軽にやりとりして、お互いの距離を縮められるような、そういう世界がつくれたらいいな、という思いから着想を得ました」
“手軽さ”がコンセプトなだけに、操作はいたってシンプル。スマートフォンの中の動画や写真をAmBeatにアップロードするだけで、BGMが自動で作成できる。
「写真や動画からオブジェクト(物体)を抽出して、そのオブジェクトにまつわるシチュエーションやイメージを推定し楽曲を作る、という仕組みです。例えば犬とか山が映っていれば牧歌的なミドルテンポくらいの曲ができますし、車とか動きのあるものであればアップテンポな曲ができあがるという感じですね」(下薗さん)
さらに、キーワードや文章を加えることで、より好みのBGMが生成されるようになると、音響事業本部クラウドビジネス推進部の安立直之さんが説明してくれた。
「例えば夕焼けを見て“きれいだ”と感じる人がいれば“さみしい”と感じる人もいるように、同じものを見ても感じ方はそれぞれで異なりますよね。AmBeatは映っているものに対してどう感じているかをキーワードや文章で入力すれば、“その絵や文章にふさわしい音楽”を大量に学習したAIが解析して、より感情に添ったBGMの生成を実現しています」
「ヤマハでは楽器を作るにあたって“弾きやすい”とか“たくさんの音色を出せる”といった機能的な価値だけじゃなく、“情緒的な価値”も大切だという考えがあります。それを製品開発に取り込みたいというモチベーションから、感性や感覚というものを言語化し、それを科学的に分析するヤマハ独自の「感性研究」が生まれました。このAmBeatにもその感性研究の成果がいかされているんです」(下薗さん)
音楽自体の生成には、ヤマハの電子楽器などに搭載されている自動伴奏機能のエンジンを応用しており、ロックやR&B、スイングジャズ、エレクトロダンスなど約500種類の音楽パターンがベースとなっている。また、テンポやコード進行などをアプリ上の簡単な操作でアレンジできるので、より自分好みのBGMに仕上げられるのだ。
「アレンジというと専門的な知識が必要に思われますが、インターフェイスも直感的でわかりやすいので、コードやテンポの変更なども、感覚的な操作でおこなうことができます。また作りながら試し聴きをして、何度でも作り直してイメージどおりのBGMに仕上げることが可能です」(下薗さん)
専門知識がなくても音楽が作れるのはありがたいし、月に10曲までなら無料でBGMを作成することができる(月額500円(税込)のプレミアムプランは曲数無制限で作成可能)ので、これはかつてない魅力的なサービスと言えるだろう。しかし“かつてない”からこそ、開発には長い時間と労力がかけられたそうだ。
「このサービスは既存のものを改善するというものではなく、存在しないもの作り出すという色合いが強かったので、まず“こういう価値があるんだ”ということを社内で説明する難しさがありました。そこからスタートし、技術面をひとつひとつブラッシュアップしていった感じですね。」(下薗さん)
過去に例のない挑戦だっただけに、リリースされたときは感無量だった。その一方で、予想していなかった使い方が実践されていて、驚くと同時にAmBeatの可能性を感じたと下薗さんは語る。
「ライブ配信のBGMにAmBeatを利用している方もいるそうです。現状リアルタイムで音楽を生成することはできないのですが、例えば小さなウィンドウに動画や画像を出してAmBeatで生成すれば、音楽を再生しながらお話をするという使い方はできますね。ほかにも“今日食べたご飯”に音楽を付けてSNSにアップしている方がいたりして。自然の風景にBGMを付けるのは想定していましたが、ご飯にBGMを付けるのはおもしろいなと思いました。使い方としてはそういったSNSやVlog用のショート動画がスタンダードだと思いますが、AmBeatは歌詞を入力すればボーカロイドの音声で歌わせることもできますので、おもちゃ的に使っても楽しいかなと思いますね」
もちろんAmBeatを生み出した本人たちも、AmBeatを気軽に活用して楽しんでいるそうだ。
「残業をせずに定時で業務を終了しましょうという日には、カエル(帰る)の写真にせつないメロディーを付けて、社内チャットツールにアップしてみました」(下薗さん)
「私は家族の写真でBGMを作って、遠くに住んでいる実家の親に送ってみました。娘の誕生日の様子が写った写真だったのですが、音楽付きなので“賑やかで楽しい”という反応がありましたよ」(安立さん)SNSやVlogでAmBeatを活用すれば、よりオリジナリティの高いコンテンツが作れるようになるだろうし、LINEなどのアプリで写真や動画を送るときにBGMを添えれば、感情も伝わりやすくなりコミュニケーションがさらに深まるだろう。
「個人的には、遊びのときにこそ感情というものをのせたくなるという気がしていて。それをよりリッチに伝えるパワーが音楽にはあると思いますので、ぜひそういう使い方をしてほしいですね」(下薗さん)
音楽が感情を伝える力になる。その力を誰でも手にすることができる。まさに“音”で“楽”しむことを、AmBeatは実現してくれるのだ。
写真や動画をもとに、あなただけのBGMをつくることができるアプリです。作曲の知識がなくても、言葉にできない感情や雰囲気を音楽で表現することができます。
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文/ 飯島健一
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