今月の音遊人
今月の音遊人:今井美樹さん「私にとって音楽は、“聴く”というより“浴びる”もの」
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【鑑賞券プレゼント】“あの曲”だけは弾いてはいけない。昭和末期、バブル華やかなりし夜の銀座で、ふたりのピアニストの運命が翻弄されていく。映画『白鍵と黒鍵の間に』
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2023.9.12
いまジャズ映画が熱い。世界一のジャズプレーヤーを目指す青年を描いたアニメ映画『BLUE GIANT』のヒットに続き、現役のジャズミュージシャンであり、エッセイストとしても活躍する南博の青春回想記をベースにした映画『白鍵と黒鍵の間に』が2023年秋に公開される。南がピアニストとして銀座を渡り歩いた3年間を、監督の冨永昌敬と脚本の高橋知由が大胆に一夜の出来事にアレンジ。しかも、主人公を“南”と“博”というふたりの人物に分けることで、現実と幻想の間を駆け抜ける奇想天外なエンターテインメントに仕立て上げられている。
ふたりのピアニストを一人二役で演じ分けているのは、いまや日本映画界に欠かせない実力派スターの池松壮亮。ジャズファンはもちろん、音楽好きにとっても見逃せない映画である。
舞台となるのは、バブル景気に沸く銀座のキャバレーと高級クラブ。欲望と札束が飛び交う夜の街で、将来を夢見る若きジャズマンの希望と葛藤が交錯する人間模様が、どこか夢の中のような架空の昭和感を醸しつつ巧みに描き出されていく。
ふたりの主人公のうち、ひとりはジャズマンになるという希望に満ちた博。ジャズが弾ける場所を求めて、高級クラブのハウスバンドを目指している。一方の南は才能にあふれ、高級クラブを掛け持ちするピアニストであるものの、ろくに音楽を聴かない酔客たちの前で演奏する毎日にウンザリし始めていた。
ある夜、銀座では格下になるキャバレーでピアノを弾く博の前に、刑務所を出所したばかりの謎の男が現れる。そして男にリクエストされるまま、博は『ゴッドファーザー 愛のテーマ』を演奏する。しかし、それは決して弾いてはならない曲だった。この曲をリクエストできるのは銀座界隈を牛耳るヤクザの会長だけであり、しかもその曲を演奏できるのは唯一、会長のお気に入りである南というのが暗黙の掟。博が掟を破ることで、南も巻き込まれていき、ふたりのピアニストの運命に加え、銀座の夜までも大きく狂わせることになってしまう。
博と南を取り巻く俳優陣も個性豊かである。博の大学時代の先輩で、南のバンド仲間でもあるピアニスト千香子役に、NHKドラマ『大奥』の演技も絶賛されている仲里依紗。刑務所から出てきたばかりのチンピラ“あいつ”役には、『ヒメアノ~ル』『前科者』の森田剛が扮し、銀座を仕切るヤクザの会長は松尾貴史が好演している。
そして劇中の演奏シーンを盛り上げるのが、博と互いの音楽観を認め合うK助役で映画初出演の松丸契。パプアニューギニア出身で米音大卒業後、近年東京の音楽シーンで活躍している気鋭のサクソフォン奏者である。さらに、アメリカ人の歌姫として登場するのは人気ミュージシャンのクリスタル・ケイ。松丸とともに繰り広げる演奏は、本作のハイライトシーンのひとつになっている。
初のピアニスト役を演じるために、池松は半年間スタジオに通い、『ゴッドファーザー 愛のテーマ』を必死で練習し、本曲の演奏シーンは全て池松自身の手によって行われている。全く違和感なく演じているのは、池松の計り知れない役者魂のなせる技であろう。
なお、池松が弾くピアノはヤマハ製で、冒頭のキャバレーでの博の演奏シーンでは電子ピアノが、メインの舞台となる高級クラブでの南の演奏シーンではグランドピアノがそれぞれ使用されている。
映画の中で、ピアノの演奏について「ノンシャラントに」という台詞がたびたび登場する。これは佐野史郎が演じる、博と千香子の大学時代の恩師の言葉であり、「凝り固まらず好い加減に」という意味にとればよいだろうか。ジャズセッションのように心の向くままの演奏が、人の心を捉えるという教えらしいのだが、本作のストーリーもふたりのピアニストの間でノンシャラントに進んでいく。
最後に池松のコメントを紹介しよう。
「時代の移ろいの間に、沈黙や静寂の隙間に、人生の隙間に、音楽があること、映画があることをこの作品は言葉よりも雄弁に、優雅に、独創的に、時にユーモアを交えて語ってくれます」
そして「ぜひ映画館で浸って、酔いしれて、心の隙間を埋めてもらえることを願っています」と結んでいる。
原作:南博『白鍵と黒鍵の間に』(小学館文庫刊)
監督:冨永昌敬 脚本:冨永昌敬 高橋知由 音楽:魚返明未
出演:池松壮亮 仲里依紗 森田剛 クリスタル・ケイ 松丸契 川瀬陽太
杉山ひこひこ 中山来未 福津健創 日高ボブ美 佐野史郎 洞口依子 松尾貴史 / 高橋和也
2023年10月6日(金)テアトル新宿ほか全国公開
Ⓒ2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会
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