今月の音遊人
今月の音遊人:H ZETT Mさん「音楽は目に見えないですが、その存在感たるやすごいなと思います」
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オーディション番組『スター誕生!』をきっかけに高校生で歌手デビューし、圧倒的な歌唱力で人々を魅了してきた岩崎宏美さん。歌手生命の危機となる病気の発病など、波乱に見舞われることもあった岩崎さんですが、音楽について語る様子は実に明るく楽しそう。元気をくれる歌声のように、語る言葉にもエネルギーがこもっています。
ジャクソン5の『ABC』でしょうか。我が家は、姉と妹の良美と三姉妹そろって童謡を習っていたのですが、親は音楽に縁がなかったので、家の中で常に音楽が流れているような環境ではありませんでした。ステレオは一台だけあったのですが、私や妹がレコードをいじると針を傷つけるからと触らせてもらえず、姉が聴きたい曲しか聴けませんでした。
なので、小学校5年生の時に学校の行事で長野県の菅平高原に行って、ジュークボックスを聴けるのがうれしかったんです。目をつぶって選ぶと、流れてきた曲が『ABC』。衝撃的な格好良さでした。洋楽をほとんど知らなかったからもう夢中で、スピーカーの前に体育座りして聴き入ってしまいました。「ファファンファンファファーン」という高音の歌声は、男の子が歌っているのか女の子なのか分かりませんでしたが、それが、マイケル・ジャクソンだったんです。同級生の女の子が「このレコードうちにあるんだ、うちでは誰も聴かないからあげる」と言ってくれて、それからは本当によく聴きましたね。マイケルとは同い年ということもあり、中学生の時は結婚したいと思っていたくらいです。ベッドの横に「マイケルの好きな飲み物……パンチ」などと、雑誌で見た情報を書いてみたり。「パンチ」って何だったんでしょう?(笑)。コーラスでも何でもいいから、彼のそばで働いてみたいと思いました。中学3年生の時、初めて見た洋楽のコンサートは、姉に連れていってもらったジャクソン5の武道館公演。その時のマイケルは変声期で、私の知っている声ではなかったけれど、兄弟で助け合いながら色んなパートに振り分けて歌ってくれて、すごく素敵でした。
家にいて疲れている時は、声の入っている音楽はあまり聴かないかもしれないですね。声を聴いてしまうと、職業柄つい体が反応してしまうんです。だから、クラシックだったりハワイアンだったり、ボサノバみたいなものだったり、メロディーだけで心が安らぐ音楽を聴きますね。
私は体調が少し悪くても、自分の声の調子が良いと元気になれます。本当に声が健康のバロメーターだなあと思います。
ハワイアンが好きになったのは、16歳の時に初めてハワイに行った時です。『スター誕生!』でハワイ大会があり、私は新人コーナーに出演するために連れて行ってもらいました。海外に行くのは初めてだったので、パスポートも飛行機も初めてでした。ハワイに到着して飛行機を降りると、花のレイをかけられて、ほっぺにチュッとされて……。お花の匂いがして湿気もなくて、こんなきれいなところがあるんだ、と感動しました。そのときに思ったことが「老後はここで暮らしたい」。16歳なのにね(笑)。そんな夢のような楽園は、どこの場所に行ってもハワイアンが流れていました。実にリラックスできる音楽だなあと思いました。
それはもう、私の同業者でしょう。みーんな、楽しんでいますよね。もちろん私もそうですし、ステージに立ってパフォーマンスをする人だけではなくて、ディレクターなど影で支えてくれる人もそうですね。音に携わる仕事ができることを、私は誇りに思っています。歌は、小学校2年生の時から習っていて一番続いているお稽古事なので、それを職業にすることができて本当にうれしいです。他に、何にも取りえがないですから。
レコーディングは大好きですね。私がいなくなった後も形として残るものだから、みんなでとても大切に作り上げています。でも、私がもっとも楽しんでいる瞬間はコンサートの時です。お客様の反応が生で聴けるのは、やっぱり嬉しいものです。そのために日頃から喉に気を使って、いい声が保てるように頑張っています。いつ何が起こるか分からないですが、自信がある限りは歌い続けていきたいです。
岩崎宏美〔いわさき・ひろみ〕
1975年、『二重唱(デュエット)』でデビュー。当時から抜群の歌唱力を誇り、『ロマンス』『思秋期』では数々の賞を受賞。1982年、火曜サスペンス劇場主題歌『聖母たちのララバイ』が130万枚の大ヒットを記録するなど、歌手として着実な実績を上げていく。一方でミュージカルやドラマなどでも多彩な才能を発揮。特に、『レ・ミゼラブル』のファンティーヌ役は、歌手人生において大きな影響を与えた。2015年にはデビュー40周年を迎え記念アルバムのリリースやコンサートを開催。2017年8月に4年ぶり29作目となるオリジナルアルバム『Hello! Hello!』発売。同年、映画『美女と野獣』実写版ではポット夫人の吹替を担当。
岩崎宏美オフィシャルサイト http://www.hiroring.com/