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音楽のヒストリオグラフィーが描き出す知的エンターテインメントの世界
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2023.9.13
tagged: Life with Music, 松本直美, ミュージック・ヒストリオグラフィー ~どうしてこうなった?音楽の歴史~
鮮やかでポップな表紙と、好奇心を刺激する『ミュージック・ヒストリオグラフィー』のタイトル。見た瞬間に手に取りたくなる一冊が登場した。「どうしてこうなった?音楽の歴史」(副題)と言われたら、もう読まずにはいられない。パラパラとページをめくると、たくさんの図版に興味をそそられ、巻末近くではBTSの写真も発見。これはいったいどんな本なのだろう?
ヒストリオグラフィーとは、ヒストリー(歴史)とグラフィー(書くこと)が合体した言葉で、「歴史を書くこと」を意味する。「音楽史を別次元から斬っていくことをねらいとしていることから、タイトルにこの言葉を使った」のだという(「はじめに」より)。著者は、歴史的音楽学の研究者としてロンドン大学ゴールドスミスカレッジ音楽学部で教べんをとる松本直美。学生たちからしばしば「なぜ音楽史を学ばなければならないのか」と問われることがあるとか。きっと日本にも、同じように思う人がいることだろう。そこで、「これまで書かれてきた音楽史を見つめ直し、なぜこれを学ばなくてはならないかを明らかにしていこう」とまとめられたのが本書だ。
「音楽の知識がない、そもそも音楽史に興味がない、学校の音楽の授業が嫌いだった、という人も楽しめるような本を書きたいと思いました。そのために、楽譜や音楽の専門用語をできるだけ使わずに執筆することにしたのですが、実はそれがとても大変でした(笑)」
その苦労の理由は、これまでの音楽史がどのように捉えられてきたかを洗いざらい明らかにした「パートⅠ」を読むとよくわかる。さらに、音楽史の書かれ方の変遷を追う「パートⅡ」、音楽史の将来を考える「パートⅢ」へと、音楽のヒストリオグラフィー的考察は続く。その全編に満載されているのが、「へえ~」と感心したり、クスッと笑えたりする多彩なエピソード。「読みやすくしたい」と盛り込まれたおもしろい話の数々が、読者を音楽史の世界にグイグイと引き込む。
「学校の授業って、先生の雑談のほうが楽しかった思い出がありますよね。そんなイメージで楽しんでいただけるのではないかと思います」
本書は、「音楽史の何が問題なのかを共有する本」と松本は語る。歴史そのものは変わらないが、変化する時代に沿った視点で見直すと、さらなる発見や新たな歴史のつながりが浮かび上がる。
多面的な視座によって、まったく新しい音楽史の世界を見せてくれる本書。この斬新な知的エンターテインメントの世界にぜひ出会ってほしい。
『ミュージック・ヒストリオグラフィー ~どうしてこうなった?音楽の歴史~』
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
料金:2,200円(税込)
詳細はこちら
文/ 芹澤一美
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