Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:馬場智章さん

今月の音遊人:馬場智章さん 「どういう状況でも常に『音遊人』でありたいと思っています」

8歳でサクソフォンを始めてから、すでに20年以上のキャリアを持つ馬場智章さん。演奏から作曲まで多岐にわたる音楽活動を展開する馬場さんに、音楽や楽器と触れ合う楽しさをうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

自分で曲を書くこともあって、普段からさまざまな音楽を聴いています。僕自身はジャズを演奏することが多いですが、古いビバップやコンテンポラリー系も聴くし、ジャンルで言えばヒップホップやR&B、クラシックもポップスも聴きます。その日の気分やその時々で聴きたい音楽が変わるタイプです。
だから、「一番」となると難しい質問ですが、子ども時代だとマイケル・ブレッカーですね。小学2年生でサックスを始めた当初はアルトで、5年生でテナーに転向したんですが、それがどうもしっくりこないなと感じていた時、同じジャズクラブにいたドラマーの石若駿に「かっこいいんだよ」と教えてもらったのがブレッカーでした。彼の演奏を聴いて初めて「テナーいいかも!」と思ったんです。特によく聴いていたのは『アフリカン・スカイズ』。この曲がとにかく大好きでした。あと、ジブリ作品が好きなので、最近だと久石譲さんの楽曲も聴きますね。久石さんご自身で演奏されるための音楽と、ジブリ作品をはじめとする映画音楽では、きっと作り方や作品として違いがあるのでしょうが、映画音楽の中にも久石さんならではのちょっとした遊びのようなものがみえる気がして、たびたび聴いています。もしかすると、僕が作る音楽も久石さんの影響を何かしら受けているかもしれません。

Q2.馬場さんにとって「音」や「音楽」とは?

「音」は日常にあふれているもので、それを整えたものが「音楽」でしょうか。ミュージシャンとしてはある一定の理論に当てはめて音楽を作り込むこともありますが、理論以外に環境音のようなものも音楽には必要で、演奏する環境や空間によって、その場所に合う音楽があると思うんです。特にジャズは、楽譜に書かれていない偶然生まれてくる音も含めておもしろいですね。同じ日の同じ場所、同じプログラムでライブをしても、お客さんによって会場や音楽の雰囲気がまったく変わってくるんです。そういう空気感や緊張感も音楽を左右するものだと思うので、「音」と「音楽」は違うもののようでとても親和性がある、どちらもなくてはならないものだと感じています。

今月の音遊人:馬場智章さん

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

同じ楽譜であっても別の人が演奏するとまったく違う印象になるし、できあがった曲をどう演奏するかによっても、聴こえ方は違ってきます。そうやって皆さんに聴いてもらう音楽を作って、仕上げていく過程の一つ一つを楽しめる人が「音で遊ぶ人」なのかな。特に、レジェンドプレイヤーと呼ばれる方たちは、楽譜や奏法などにとらわれることなく、演奏しているその瞬間が生き生きとしています。きっと自分の置かれた状況を楽しんでいるんでしょうね。それはまさに「音遊人」ですし、僕自身もどういう状況でも常に「音遊人」でありたいですね。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

全部いいですよ(笑)。あえて言うなら、たくさんの方々と触れ合う機会が持てることです。ジャムセッションに行くとおじいさんから中学生までいらっしゃるし、年齢や性別、国籍を問わずに仲良くなれたりつながれたりするのはすごくおもしろいです。僕は中学3年の時にバークリー音楽大学のサマースクールに参加して、世界中から集まった同年代の人たちと5週間寝食をともにしました。当時の僕を含め、英語が話せない人が多かったですが、音楽を共通言語としてコミュニケーションがとれていました。この経験がミュージシャンを志すきっかけにもなりましたね。楽器や音楽はずっと続けていけるものだと思っています。ただ、楽器は始めてから楽しくなるまでに少し時間が必要なので、そこはある意味ハードルなのかもしれません。でも、少し弾けるようになるとグッとおもしろくなってくるんです。また、音楽や楽器は歴史的にも興味深いものです。僕は北海道出身ですが、音楽を始めてからアイヌの音楽や文化に惹かれるようになりました。音楽や楽器に親しむ中で、音楽以外にも興味を持つことが増えましたね。

馬場智章〔ばば・ともあき〕
北海道出身。小学2年生でサクソフォンを始める。2005年、タイガー大越氏により開催されたBerklee College of Musicタイアップの北海道グルーブキャンプを受講し優秀賞受賞。2011年にバークリー音楽院に全額奨学生として入学。2016年には『報道ステーション』のテーマ曲を自身も所属するバンド「J-Squad」で手がけ、UNIVERSAL MUSIC JAPANよりアルバムを発表。2020年に自身初のリーダーアルバム『Story Teller』、2022年4月に2作目となる『Gathering』をリリース。劇場版アニメ作品『BLUE GIANT』では主人公・宮本大の演奏を務めた。
オフィシャルサイト

photo/ 阿部雄介

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

八代亜紀さん

今月の音遊人

今月の音遊人:八代亜紀さん「人間だって動物だって、音楽がないと生きていけないと思います」

10196views

音楽ライターの眼

ブラームス国際コンクール、日本人初優勝のバイオリニスト中村太地が3大Bに挑む

8076views

v

楽器探訪 Anothertake

弾く人にとっての理想の音を徹底的に追究したサイレントバイオリン™

6592views

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぼう電子ピアノ「クラビノーバ」3シリーズ

2841views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

11428views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

2375views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

10413views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

6044views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10056views

われら音遊人

われら音遊人:ただ今、バンド活動リハビリ中!

7885views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

5196views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25170views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12386views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12885views

音楽ライターの眼

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが2020年、復活/トム・モレロのギターの原点を探る

6167views

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

6033views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:バンドサークルのような活動スタイルだから、初心者も経験者も、皆がライブハウスのステージに立てる!

7877views

楽器探訪 Anothertake

ピアニストの声となり歌い奏でる、コンサートグランドピアノ「CFX」の新モデル

4823views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

21007views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

だから続けられる!サクソフォンレッスン10年目

4845views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

7495views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7454views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29943views