今月の音遊人
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今月の音遊人:馬場智章さん 「どういう状況でも常に『音遊人』でありたいと思っています」
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2023.5.1
8歳でサクソフォンを始めてから、すでに20年以上のキャリアを持つ馬場智章さん。演奏から作曲まで多岐にわたる音楽活動を展開する馬場さんに、音楽や楽器と触れ合う楽しさをうかがいました。
自分で曲を書くこともあって、普段からさまざまな音楽を聴いています。僕自身はジャズを演奏することが多いですが、古いビバップやコンテンポラリー系も聴くし、ジャンルで言えばヒップホップやR&B、クラシックもポップスも聴きます。その日の気分やその時々で聴きたい音楽が変わるタイプです。
だから、「一番」となると難しい質問ですが、子ども時代だとマイケル・ブレッカーですね。小学2年生でサックスを始めた当初はアルトで、5年生でテナーに転向したんですが、それがどうもしっくりこないなと感じていた時、同じジャズクラブにいたドラマーの石若駿に「かっこいいんだよ」と教えてもらったのがブレッカーでした。彼の演奏を聴いて初めて「テナーいいかも!」と思ったんです。特によく聴いていたのは『アフリカン・スカイズ』。この曲がとにかく大好きでした。あと、ジブリ作品が好きなので、最近だと久石譲さんの楽曲も聴きますね。久石さんご自身で演奏されるための音楽と、ジブリ作品をはじめとする映画音楽では、きっと作り方や作品として違いがあるのでしょうが、映画音楽の中にも久石さんならではのちょっとした遊びのようなものがみえる気がして、たびたび聴いています。もしかすると、僕が作る音楽も久石さんの影響を何かしら受けているかもしれません。
「音」は日常にあふれているもので、それを整えたものが「音楽」でしょうか。ミュージシャンとしてはある一定の理論に当てはめて音楽を作り込むこともありますが、理論以外に環境音のようなものも音楽には必要で、演奏する環境や空間によって、その場所に合う音楽があると思うんです。特にジャズは、楽譜に書かれていない偶然生まれてくる音も含めておもしろいですね。同じ日の同じ場所、同じプログラムでライブをしても、お客さんによって会場や音楽の雰囲気がまったく変わってくるんです。そういう空気感や緊張感も音楽を左右するものだと思うので、「音」と「音楽」は違うもののようでとても親和性がある、どちらもなくてはならないものだと感じています。
同じ楽譜であっても別の人が演奏するとまったく違う印象になるし、できあがった曲をどう演奏するかによっても、聴こえ方は違ってきます。そうやって皆さんに聴いてもらう音楽を作って、仕上げていく過程の一つ一つを楽しめる人が「音で遊ぶ人」なのかな。特に、レジェンドプレイヤーと呼ばれる方たちは、楽譜や奏法などにとらわれることなく、演奏しているその瞬間が生き生きとしています。きっと自分の置かれた状況を楽しんでいるんでしょうね。それはまさに「音遊人」ですし、僕自身もどういう状況でも常に「音遊人」でありたいですね。
全部いいですよ(笑)。あえて言うなら、たくさんの方々と触れ合う機会が持てることです。ジャムセッションに行くとおじいさんから中学生までいらっしゃるし、年齢や性別、国籍を問わずに仲良くなれたりつながれたりするのはすごくおもしろいです。僕は中学3年の時にバークリー音楽大学のサマースクールに参加して、世界中から集まった同年代の人たちと5週間寝食をともにしました。当時の僕を含め、英語が話せない人が多かったですが、音楽を共通言語としてコミュニケーションがとれていました。この経験がミュージシャンを志すきっかけにもなりましたね。楽器や音楽はずっと続けていけるものだと思っています。ただ、楽器は始めてから楽しくなるまでに少し時間が必要なので、そこはある意味ハードルなのかもしれません。でも、少し弾けるようになるとグッとおもしろくなってくるんです。また、音楽や楽器は歴史的にも興味深いものです。僕は北海道出身ですが、音楽を始めてからアイヌの音楽や文化に惹かれるようになりました。音楽や楽器に親しむ中で、音楽以外にも興味を持つことが増えましたね。
馬場智章〔ばば・ともあき〕
北海道出身。小学2年生でサクソフォンを始める。2005年、タイガー大越氏により開催されたBerklee College of Musicタイアップの北海道グルーブキャンプを受講し優秀賞受賞。2011年にバークリー音楽院に全額奨学生として入学。2016年には『報道ステーション』のテーマ曲を自身も所属するバンド「J-Squad」で手がけ、UNIVERSAL MUSIC JAPANよりアルバムを発表。2020年に自身初のリーダーアルバム『Story Teller』、2022年4月に2作目となる『Gathering』をリリース。劇場版アニメ作品『BLUE GIANT』では主人公・宮本大の演奏を務めた。
オフィシャルサイト
文/ 高内優
photo/ 阿部雄介
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