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今月の音遊人:小曽根真さん「音楽は世界共通語。生きる喜びを人とシェアできるのが音楽の素晴らしさ」
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音をとおした旅に誘う。晩秋にふさわしいロマンティックなプログラム「三都物語Vol.9」/トリオ ソ・ラインタビュー
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2023.10.10
ピアニストの谷川かつら、バイオリニストの瀬川祥子、チェリストの水谷川優子によるピアノ三重奏団「トリオ ソ・ラ」。ニューヨーク、パリ、ベルリンの三都と東京に活動の拠点を持つ3人が、その特色を生かした独自の企画でピアノ三重奏の新たな世界を切り拓いている。
2013年4月に東京でベートーヴェン『三重協奏曲』のソリストとして出会った3人が意気投合して結成した「トリオ ソ・ラ」。翌2014年、東京で開催した「三都物語Vol.1」は、才色兼備の名手たちの意欲的なプログラムが大きな反響を呼んだ。
「とにかく気が合って、『三都物語』として1回目のコンサートをやってみたら評判がよく、3人が暮らしている場所にちなんだ作品から出発して、ピアノトリオ定番の名曲だけでなく、歴史に埋もれかかった作品を発掘したり、女性作曲家にフォーカスしたり、山根明希子さんに日本のわらべ歌を素材にした作品を書いていただいたり、レパートリーは時空を超えて大きく広がっています」(水谷川)
「トリオ ソ・ラ」というユニット名は、3人の名前のイニシャルSKY(空)とフランス語の音名のソとラに因み、三都に離れていても大空のもとで音楽が繋がっているようにとの思いを込めて命名された。
「コロナ禍で演奏会がなくなったとき、あらためて3人の絆の強さを感じました。ベースに友情があるんです。私たちは絶対これで終わらないと信じていました。2021年のひさしぶりのコンサートは、チャイコフスキー、ペルト、ピアソラという凄いプログラムで、それぞれがコロナ禍のなかで向き合ってきた思いをぶつけ合い、2022年には昼夜2公演で、ベートーヴェン、ブラームスのピアノ三重奏曲に加えて、フランスとアメリカの女性作曲家の知られざる名曲などを取り上げました」(水谷川)
2024年に活動10周年を控え、2023年11月16日(木)、東京文化会館小ホールで「三都物語Vol.9 ~三都から神来月の東京へ~」を開催する。中心となる曲目は、プログラム後半のシェーンベルク『浄夜』のピアノトリオ版。
「シェーベルクというと現代音楽と敬遠されがちですが、作品4という初期の創作で、『グレの歌』と並んで有名なロマンティックな作品です」(瀬川)
「私の最初の留学先、オーストリアの作品。ウィーンでピアノトリオ版を初めて聴いたとき、いつか絶対に弾きたいとずっと思っていました。シェーンベルクのお弟子さんのピアニスト、シュトイアーマンが編曲したので、バイオリンやチェロの素敵なメロディがピアノに持っていかれたりしていますが、ピアノトリオとして美しい形に仕上げられています」(水谷川)
「私も大好きな曲なので、ワクワクしています。弦楽六重奏のイメージを保ちながら、ピアノとしてのアイデンティティも主張できるので楽しみです。この曲は、弾いていると話しかけてくれるんです」(谷川)
プログラムの前半は、瀬川の最初の留学先のロシアの作曲家、ラフマニノフの『悲しみの三重奏曲第1番』、そして谷川が暮らすアメリカの女性作曲家、エイミー・ビーチの『ピアノ三重奏曲』。
「ラフマニノフが19歳のときに書いた三重奏曲の第1番は、単一楽章の15分ほどの作品ですが、抒情と哀愁に満ちたメロディが魅力的です」(瀬川)
「エイミー・ビーチは、幼い頃から驚くべき才能を発揮し、女性がまだ社会的に活躍できなかった時代に、ピアニストとしての活動は控えたものの、外科医の夫の理解に支えられ作曲に打ち込み、ミサ曲や交響曲など大規模な作品を含めて多くの作品を残しています。夫の死後は、ヨーロッパで演奏活動を繰り広げ、その作品がベルリン・フィルによって演奏された最初のアメリカ人作曲家にして女性作曲家なんです。『ピアノ三重奏曲』は晩年の作品で、ブラームスを思わせる作風のなかに北米の民族音楽、イヌイットのメロディが夢見るように現れたり、第3楽章では汽車が走るような描写があったり、風景が眼に浮かぶような素敵な曲です」(谷川)
「2023年7月にベルリンで演奏したんですが、耳の肥えたお客様たちにも好評でした。イヌイットの素材も、リスペクトを持って洗練された形で入っているので、聴きやすかったようです。祖国を離れてアメリカに渡ったシェーンベルク、ラフマニノフの作品と共に、ロマンティックで深いストーリー性のあるプログラムになったと思います」(水谷川)
このトリオの演奏をサポートするのは、ヤマハのコンサートグランドピアノCFX。
「CFXは大好きなピアノです。車にたとえると、ロールス・ロイス、フェラーリのような王者の風格があります。アクセルを少し踏み込むだけで自由自在に動いてくれて、気持ちがいいんです。繊細な表現にも対応してくれますし、音色が多彩なので、どのようにバイオリンとチェロのサウンドとブレンドして音楽をつくろうかと、とても楽しみです」(谷川)
「今回は、私たちのトリオの演奏をデビュー当初から聴いてくださっているヤマハの曽我紀之さんが調律を担当してくださるので、ものすごく安心感があります。私は何度もピアノとのデュオでお世話になっていて、CFXを輝かせる素晴らしい調律に、いつも驚かされています。曽我さんを4人目のソ・ラのメンバーとして巻き込んでいきたいですね」(水谷川)
「気がついたら10年。2024年にはアルバムを出したいなと思っています。作曲家たちが、それぞれ生きた場所で物語を語っているようなアルバムを。私たちのコンサートは、音楽をとおした旅なのです」(水谷川)
「この10年、それぞれいろいろ学び、経験してきたことを糧に、トリオとして発展していく新たな一歩を踏み出したいです」(瀬川)
日時:2023年11月16日(木)19:00開演(18:30開場)
会場:東京文化会館ホール
料金:S席5,000円 A席4,000円 学生3,000円(すべて税込)
出演:トリオ ソ・ラ:谷川かつら(Pf)、瀬川祥子(Vn)、水谷川優子(Vc)
曲目:シェーンベルク:浄夜(ピアノ・トリオ版)、ラフマニノフ:悲しみの三重奏曲第1番、ビーチ:ピアノ三重奏曲
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オフィシャルサイトはこちら
文/ 森岡葉
photo/ 宮地たか子
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tagged: 水谷川優子, 瀬川祥子, 谷川かつら, トリオ ソ・ラ
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