Web音遊人(みゅーじん)

Clavinova(クラビノーバ)

ピアノメーカーだから実現できたリアルな音とタッチ~ヤマハ電子ピアノ「クラビノーバ」の進化の軌跡

ピアノの表現力に重きを置いた「CLPシリーズ」、多機能性にこだわった「CVPシリーズ」、アプリとの連携で楽しむ「CSPシリーズ」を三本柱に、幅広いモデルが揃うクラビノーバ。2023年に40周年を迎えたクラビノーバが、ヤマハ電子ピアノの中核ブランドとしてどのように進化してきたのか、ヤマハミュージックジャパンの山内友貴さんに聞いた。

最新技術を駆使した電子鍵盤楽器として登場

クラビノーバの初代モデル「YP-20/30」が発売されたのは1983年。当時は団地住まいの人が増え、習い事としてピアノの需要が高まった時代。音量調節ができて場所を取らず、アコースティックピアノに比べて手の出しやすい価格のクラビノーバは一躍人気となった。

「初期のころのモデルはヤマハ独自のFM音源を搭載し、音色の切り替えや打鍵の強弱で音色・音量に変化をつけるタッチコントロール機能が画期的でした。今からすると簡易的な機能ですが、当時のチラシなどを見ると、電子ピアノのエンターテインメント性を前面に打ち出していたようです」(山内さん)。

Clavinova(クラビノーバ)

クラビノーバ第1号機の「YP-30」(1983年発売)。アコースティックピアノと比較して、電子ピアノならではのエンターテインメント性が持ち味だった。

その後、1985年にCVPシリーズの初代モデル「CVP-7」、1986年にCLPシリーズの初代モデル「CLP-50」が登場。長きにわたってCVP/CLPシリーズの二本柱で進化を遂げていった。

Clavinova(クラビノーバ)

初期のクラビノーバを牽引した、CVPシリーズの初代モデル「CVP-7」(1985年発売)(左)と、CLPシリーズの初代モデル「CLP-50」(1986年発売)(右)。

「技術の進化とともにモデルチェンジを重ねてきたクラビノーバですが、ひとつターニングポイントを挙げるならば、2017年に登場した『CSPシリーズ』です。ガイドランプで打鍵の位置とタイミングを示す機能『ストリームライツ』を搭載し、クラビノーバとして初めて“ピアノ未経験者”にスポットを当てたのは大きな出来事といえます」(山内さん)

Clavinova(クラビノーバ)

クラビノーバ40年の歴史において、ターニングポイントとされるCSPシリーズ。アプリを使って好きな曲の伴奏譜を作成できる機能「オーディオトゥースコア」(左)や、ガイドランプが次に弾く鍵盤と打鍵のタイミングを示す機能「ストリームライツ」(右)で、経験を問わず演奏する楽しさが得られる。

ピアノメーカーだから実現できたリアルな音とタッチ

クラビノーバが支持されてきた理由は、本格的な音とタッチ。特に音については、ピアノメーカーとしてヤマハが最もこだわってきたところだ。

「サンプリング技術が進化しても、“いい音”がなんたるかを知らなければ音の良し悪しの判断はできません。アコースティックピアノづくりのノウハウがあり、かつ音響・オーディオ部門も備えるヤマハだからこそ、最適な音づくりをしてこられたのだと思います。また、各分野のひとつひとつの技術が高いだけでなく、それらをマッチングさせることで、ピアノを弾く奏者に心地良い音が届くように開発してきたのもヤマハのこだわりです」(山内さん)。

CLP/CVP/CSPの最新シリーズでは、単に音が良いだけでなく、奏者のタッチに合わせてグランドピアノのハンマーの動きや弦の響き・共鳴までもが再現されるようになっている。

「最新のクラビノーバは、タッチの細かいところまで音に反映されるため、主にクラシック音楽の演奏で求められる繊細な感情表現も可能です。上級者ほど、多彩な音色変化を楽しめると思います。また同時に、うまく弾けないところはそのとおりの音が鳴ります。私も趣味でピアノを弾くので実感しますが、実力どおりの音が返ってくるので、弾いていて改善すべきポイントに気付きやすく、効率的に練習できます」(山内さん)

Clavinova(クラビノーバ)

CLP/CVP/CSPシリーズの全てのモデルに搭載されている「グランドエクスプレッションモデリング」。タッチによる音の微妙な違いを再現する技術で、上達に合わせて表現できる音色が広がる。

時代の変化とニーズに合わせて進化し続ける

録音機能で自身の演奏を聴き返したり、内蔵されているレッスン曲を片手パートずつ再生することができたり、Bluetoothで手持ちのスマホ・タブレットとつなげて楽しさを広げたり、デジタルならではの機能もクラビノーバの魅力だ。

「全てのモデルにおいて、ヤマハ『CFX』とベーゼンドルファー『インペリアル』という、ふたつのコンサートグランドピアノの音を内蔵しています。また、CLP-700シリーズでは歴史的なフォルテピアノの音を使って、モーツァルトやショパンの意図を汲み取るような表現を楽しむことができます。通常ならば触れられないピアノの音を、ボタンひとつで鳴らせるのはクラビノーバならではです」(山内さん)

Clavinova(クラビノーバ)

手持ちのスマートデバイスに無料アプリ「スマートピアニスト」をダウンロードすることで視覚的に操作できる。

2023年6月にはCVP-900シリーズ(CVP-909CVP-905)、8月にはCSPシリーズの新モデル、「CSP-275」「CSP-255」が登場。モデルチェンジした両シリーズともに、さらに磨きをかけたヤマハ「CFX」とベーゼンドルファー「インペリアル」の新音源を搭載。CVP-900シリーズはペダルの機能が向上したことに加え、操作ボタンのLEDもよりスタイリッシュな色使いとなり、使いやすくなった。

Clavinova(クラビノーバ)

自宅のインテリアに合わせて選べるカラーバリエーションも。写真は、CSPシリーズの新モデル「CSP-275」のホワイトウッド調。

「ピアノといっても楽しみ方は人それぞれで、時代によって楽器に求めるものも変化してきています。これからもピアノの表現力は追求していきますが、スマートデバイスやアプリが当たり前となった時代にCSPシリーズが生まれたように、ピアノや音楽の楽しみ方に合わせてクラビノーバは進化し続けていきます」(山内さん)

ピアノ演奏の目的や好みに合わせて、CLP/CVP/CSPシリーズの中から自分に合ったモデルを見つけることができるクラビノーバ。これからもピアノづくりのノウハウと最新技術を取り入れ、世界中の人をワクワクさせるシリーズ・モデルが生み出されていくだろう。

クラビノーバ製品サイト

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:渡辺香津美さん「ギターに対しては、いつも新鮮な気持ちでいたい 」

5869views

壷阪健登

音楽ライターの眼

ジャズの新時代を拓く瑞々しいリリシズム/壷阪健登ソロ・ピアノ・コンサート“Departure”

1728views

【楽器探訪 Another Take】人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

12390views

楽器のあれこれQ&A

エレクトーンについて、知っておきたいことや気をつけたいこと

26747views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

13951views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

8674views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

14191views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11325views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

20607views

われら音遊人 リコーダー・アンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:お茶を楽しむ主婦仲間が 音楽を愛するリコーダー仲間に

8454views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6088views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

31927views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

18093views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8862views

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase15)ブルックナー生誕200年、「交響曲第3番」第1稿の怪物性、ワーグナーファンの受難

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase15)ブルックナー生誕200年、「交響曲第3番」第1稿の怪物性、ワーグナーファンの受難

1508views

打楽器の即興演奏を楽しむドラムサークルの普及に努める/ドラムサークルファシリテーターの仕事(前編)

オトノ仕事人

一期一会の音楽を生み出すガイド役/ドラムサークルファシリテーターの仕事(前編)

15770views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

6206views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカを進化させる「クリップ」が誕生

18008views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

6050views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

あれから40年、おかげさまで「音」をはずさなくなりました

4959views

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ

楽器のあれこれQ&A

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ機種

27861views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11325views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26627views