今月の音遊人
今月の音遊人:藤田真央さん「底辺にある和音の上に内声が乗り、そこにポーンとひとつの音を出す。その響きの融合が理想の音です」
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一流ピアニストの本音、素顔が垣間見られる、渾身のインタビュー集の第二弾!
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2015.10.28
tagged: ピアノ, インタビュー, ピアニスト, クリスチャン・ツィメルマン, ウラディーミル・アシュケナージ, エフゲニー・キーシン, テオドール・パラスキヴェスコ
台湾と聞いて、クラシックが盛んな国というイメージを抱く人は少ないだろう。だが近年は、台湾国家交響楽団、台北市立交響楽団など急成長するオーケストラがいくつも生まれ、国際的に活躍する音楽家が増えているなど、クラシック熱が高まっている。『ピアニストが語る! 音符ではなく、音楽を!』は、そんな台湾出身の音楽ジャーナリストが世界のピアニストに体当たりで行ったインタビューをまとめたもので、大きな反響を得た前著の第二巻となる。
前著では旧ソ連、東欧のピアニストを中心に、社会主義国の政治・教育や、学派・ピアニズム(ピアノの奏法)の系譜について深い話が語られ、まるで歴史書を紐解いているようだった。第二巻でも同様の話は語られているが、取材対象者の半数がフランスのピアニストで、クリスチャン・ツィメルマン、ウラディーミル・アシュケナージ、エフゲニー・キーシンといった有名どころが並んでいるからか、インタビューはまた違った広がりを見せている。
そのひとつが、今回登場する多くのピアニストが、学派やピアニズムはあまり重要でないと考えていることだ。パリ国立高等学院の教授を務めるテオドール・パラスキヴェスコが「歴代の名演奏家は自身の個性と経験を学派の中に加え、それぞれが独立した一派を築いています」(本書より)と言うように、同じ学派の同じ教師に教えを受けても演奏スタイルは違って当たり前。事実、優れた演奏家ほど唯一無二の表現力を持っているものだ。
また多くが口を揃えるのが、演奏技巧は不可欠だが、大切なのは作曲家が意図したことをいかに読み取り表現するかで、演奏技巧はそのために必要なもののひとつである、ということだ。「技巧は音楽を表現するための道具に過ぎず、私は音楽を表現するために奮闘し続けているのです」(本書より)というキーシンの言葉に代表されるように、一つひとつの音をクリアに弾けたとしても、音楽を奏でることができなければ何の意味もない。本著のタイトルにもあるように、音楽家が追求すべきは「音符」ではなく「音楽」なのだ。
この本の素晴らしさは、ピアニストの本音や素顔が引き出されており、政治が音楽に与えた影響、コンクールの内幕、現代の音楽界が抱える問題など、通常はカットされてしまいそうな内容も、ほぼそのままの形で掲載されていることにある。なお、2007年に台湾で出版された原書には55名のインタビューが収録されており、最終的に全四巻の訳本が出版される予定という。ピアニストの魂のこもった言葉を受け止めるには読み手の体力、精神力を要するが、第三弾を手に取るのが今から待ち遠しい。
『ピアニストが語る! 音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第二巻』
著者:焦 元溥(チャオ ユアンプー)著 森岡 葉訳
発売元:アルファベータブックス
発売日:2015年4月15日
価格:3,700円(税抜)
ご購入はヤマハミュージックWeb Shopの本書のページをご覧ください。