今月の音遊人
今月の音遊人:挾間美帆さん「私は音で遊ぶ人のために作品を作っているのかもしれません」
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一本の映画を観たような充実感。自分たちにしかできないエンターテインメントを/葉加瀬太郎、西村由紀江、柏木広樹インタビュー
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2024.4.16
葉加瀬太郎(バイオリン)、西村由紀江(ピアノ)、柏木広樹(チェロ)という、長年にわたり第一線で活躍している3人により2019年に結成されたNH&K TRIOが、2023年に続いて2回目となるコンサートツアーを開催。3人だからこその演奏を全国へ届けており、来たる2024年5月11日、12日にはパシフィコ横浜国立大ホールで千秋楽を迎える。
学生だった10代のころから交流のあった3人が「NH&K TRIO」を結成したのは2019年のこと。以来、八ヶ岳高原音楽堂を舞台にサマーリゾート・ミュージック・コンサートを開催し、大盛況を収めてきた。2023年3月には約3年の月日をかけて制作した記念すべきデビューアルバム『Adagio』をリリース。NH&K TRIOとしての活動が本格的にスタートした。
「3人で演奏していると、とにかく居心地がいいんですよ。これはとても大切なこと。一緒に演奏できる、音楽が生み出せるというワクワク感は本当に素晴らしいです」と葉加瀬が言えば、「これが30代のころの私たちだと意見がぶつかり合って揉めたかもねってよく話すんです。それぞれの活動の中で経験を積みながら年齢を重ねたことで、視野も広くなったんでしょうね。だからこそ、今こうしてトリオとして集まれたことに運命すら感じます」と西村がほほ笑む。
絶妙で理想的なバランスともいえる3人の関係性は、ステージ上での演奏にも表れるのだそうだ。
「ほぼ緊張しないんですよ。本来の僕はものすごいあがり症なのに、この3人だと至って平常心でいられるし、大丈夫だと思える」(柏木)
「ドラムのようにリズムをキープする楽器がなくても、私たちならどうにかなるよねって」(西村)
「お互いに信頼しているからですよね。なんとかなる、なんとかしてくれると思える。3人だと怖くないんです」(葉加瀬)
個々のキャリアと活動を大切にしながらも、「自分たちにしかできない音楽を突き詰めていきたい」というNH&K TRIO。2023年に続いて2回目となる全国ツアーが2024年4月5日の東京・立川ステージガーデンを皮切りにスタートした。
アルバムを携えて行われたある種“お披露目”の前回のツアーでは、数千人規模のホールで室内楽を演奏、パフォーマンスするためのトライが行われた。そのひとつが大ビジョンを使った映像とのコラボレーションである。演奏される楽曲からインスパイアされたイマジネーションあふれる映像がスクリーンに映し出され、照明演出とも相まってその曲の世界に入り込むような感覚を観客は堪能した。
「どうすれば3人で数千人を前にしたエンターテインメントを作れるのかと考えていたことが、ひとつの形になりました。インストゥルメンタルの音楽だからこそ、より際立つ演出かもしれませんね。2024年はさらに進化した3人の新たな姿をお見せできると思います」(葉加瀬)
それは、八ヶ岳高原音楽堂のコンサートで演奏を積み重ねてきたアストル・ピアソラの『ブエノスアイレスの四季』を『春』から『冬』まで通しで披露するというもの。
「組曲として『四季』を聴いていただきます。30分近い時間を3人のみで演奏しますから非常に高い集中力が必要ですが、それ以上にやりがいがあります。僕らなら、観客の皆さんに楽しく聴いて、観ていただくことができるはずだから……ぜひ挑戦したかった」(葉加瀬)
「最初に『冬』を演奏して以来、太郎は『いつか通しでやるぞ』と言い続けていました。その日がついにやって来たということですね」(柏木)
演奏の前には、「ずっと彼のことが大好き」と言う葉加瀬によるピアソラの人となりや楽曲の成り立ちなどについての丁寧な解説が入り、ブエノスアイレスで撮影されたあざやかな映像が楽曲への没入感を深める。柏木が言う「NH&K TRIOのコンサートだからこそ得られる新しい体験」が味わえるに違いない。
「3人で演奏する前半と、第一バイオリンと第二バイオリン、ヴィオラ、コントラバスが加わる後半、コンサート全体を通じて一本の映画を観たような充実感を持っていただけるように練り上げました。世界中を探しても僕たちにしかできないエンターテインメントをぜひ楽しんでいただきたいです」(葉加瀬)
全国ツアーに先駆け、葉加瀬と柏木によるNH&K TRIO初の書き下ろしシングル『moderato』が2024年3月27日に配信リリースされた。moderato は“中くらいの”“中庸の”という意味の速度記号だが、それは「心地よい」とも言い換えられるかもしれない。穏やかで柔らかいそのメロディーを作曲者のふたりは「僕らから由紀江ちゃんへのラブレター」と笑う。
また、同日発売された楽譜集『NH&K TRIO Adagio Vol.1/Vol.2』は、第38回日本ゴールドディスク大賞「インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞したファーストアルバム『Adagio』と配信シングル『Adagio~2023~』を加えた全14曲がピアノトリオ編成で収載されている。ボウイングや表情記号などはレコーディング時の楽譜を元にしているが「楽譜を手にした皆さんが自由に演奏してくれていいんです」と口を揃える。
「時とともに楽曲の解釈は変わるし、それにつれてボウイングなども変化します。日々変わるものなんですよ」(柏木)
「バイオリン弾きにとってフィンガリングとボウイングは命です。けれど、それらを変えてみることで、見えていなかった曲の側面に気づくこともある。だから絶えず楽譜を書き直しています。そういう意味で、お手本ではあるけれど“皆さんご自身の楽譜”にしてほしいですね」(葉加瀬)
「楽器を演奏される方であれば、『Adagio』を聴きながら、たとえばバイオリンのパートを弾いてみてください。そうすると、こんな弾き方をしてるんだ!とか、楽譜には書かれていないニュアンスが感じ取れるはず。それもこの楽譜集の楽しみ方のひとつだと思います」(西村)
3人による音のおしゃべり、極上のハーモニー。あなたもどうぞご一緒に。
NH&K TRIO スーパーチェンバーミュージック 〜moderato〜
2024年
5月5日(日)福岡サンパレス
5月6日(月・休)熊本城ホール メインホール
5月8日(水)ロームシアター京都 メインホール
5月11日(土)、12日(日):パシフィコ横浜 国立大ホール
詳細はこちら
『葉加瀬太郎・西村由紀江・柏木広樹 NH&K TRIO Adagio Vol.1 / Vol.2』
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日:2024年3月27日
料金(税込):各3,000円
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