Web音遊人(みゅーじん)

電子ピアノ

お客様の声で実現!電子ピアノのメトロノーム音の改善を目指して

さまざまな声が寄せられる「お客様コミュニケーションセンター」は、世の中の動きが顕著に表れる場所といえます。
今回は高齢のお客様のお問い合わせがきっかけで改善に取り組んだ、電子ピアノ搭載のメトロノームのベル音について、「お客様コミュニケーションセンター」の平井大生さんと、電子楽器事業部の尾藤栄里子さんに聞きました。

お客様との対話で得た知見を活かして

「お客様コミュニケーションセンター」では、時代の要請に合わせた対応を常に意識しています。電話やメールなどさまざまなお問い合わせ方法を用意するとともに、Web内の「よくあるお問い合わせ」のコンテンツを充実。スマートフォンが当たり前の世代は自ら検索、解決する方が多くなりました。
一方で、電話でのお問い合わせは高齢のお客様が目立つようになりました。そのため、より伝わりやすい話し方を意識するなどコミュニケーションの取り方を工夫しています。
「音声が聞こえにくい方に対して高い大声で話すのは逆効果。トーンを抑えた声で、はっきりと発音するほうが聞き取りやすいのです」(平井さん)
そうした知見を得ていた時期に、高齢のお客様から同じような内容のご相談が複数件寄せられました。
それは、電子ピアノに搭載されているメトロノームのベル音が聞こえにくい、あるいは聞こえないというものです。しかも『チーン、カチ、カチ、カチ』と拍を数える音のうち、『チーン』という強拍だけが聞こえにくいようでした。不具合を確認するためにベル音を鳴らしてもらうと、その音は電話口でも大きくはっきり聞こえます。
「一般的に、年齢とともに1,000Hz以上の音が聞こえにくくなるとされています。そして、お客様との対話から得た経験からも、高い音が聞こえにくいことが原因だろうという結論に至りました」(平井さん)
これまでは気がつかなかった問題が掘り起こされ、改善に向けた取り組みがスタートしたのです。

お客様コミュニケーションセンターの平井大生さん(左)と電子楽器事業部の尾藤栄里子さん(右)

お客様コミュニケーションセンターの平井大生さん(左)と電子楽器事業部の尾藤栄里子さん(右)

“本物の音”を届ける

「お客様コミュニケーションセンター」ではお客様の声を開発部門や商品企画部門にフィードバックし、改善や開発に役立てています。メトロノームのベル音の問題も関連部門に報告し、改善を依頼しました。
「私たちは、ヤマハ以外の電子ピアノに搭載されている電子音ならば聞こえるという情報も得ていたので、電子的な音に変えることで問題は解決するのでは?と考えたのですが……」(平井さん)
しかし、開発部門、商品企画部門としては、モノづくりに対する強いこだわりがあります。
「ヤマハの電子ピアノに搭載されているメトロノームの音は、実際のメトロノームの音を収録した“本物の音”です。アコースティックに迫る音や弾き心地を追求し開発をしているので、メトロノームの音もまた、それに追随するベストなものを届けたいという思いがありました」(尾藤さん)
また、電子のメトロノーム音を追加しても、それは真にお客様のためになるとはいえません。なぜなら、追加したメトロノーム音を選ぶという操作が増え、結局は使われないことも想定されたからです。
煩雑な操作をすることなく、“本物の音”を届ける──尾藤さんらの挑戦が始まりました。

お客様コミュニケーションセンターの平井大生さん(左)と電子楽器事業部の尾藤栄里子さん(右)

まず、実際に高い周波数が聞こえにくい方に協力いただいて、さまざまな音で、聞こえ方を確認する作業が行われました。 そして、徹底した音の分析へ。楽器の音や話し声など、私たちが日常耳にする音のほとんどは、複数の異なる周波数の成分から構成されています。メトロノームのベル音も成分をコントロールすることで、問題の解決を目指したのです。
「ご協力いただいた方が聞こえた音に含まれる成分を分析し、メトロノームの『チーン』という音にその成分を入れてみました」(尾藤さん)
試行錯誤を重ねた結果、“本物の音”を活かしつつ、聴覚の状態によらず聞き取りやすいメトロノームのベル音が完成しました。
また以前「電子ピアノのある鍵盤の音が聞こえにくい」というお客様の声があり、アプリに鍵盤ごとのチューニングができる機能を入れたこともありました。
「必ずしも、お声をいただいてすぐに反映できるものばかりではありませんが、新しい技術が生まれれば解決できることはあり、常に気にかけています」(尾藤さん)
「もちろん、お客様からご要望・ご意見をいただいても、お応えすることがむずかしいこともありますが、常にあきらめたくないという気持ちはもっています」(平井さん)
最前線で得たお客様の声を関連部門に伝え、製品開発の取り組みを加速させることも「お客様コミュニケーションセンター」の大きな役割なのです。

photo/ 湯浅立志

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