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ール・マッカートニー写真集~1964年、僕たちは台風の中心にいた~

ポール・マッカートニー自身が撮影と解説 ~ビートルズの素顔と本質が詰まった写真集

「1964年、僕たちは台風の中心にいた」(日本語版副題より)──この中心にいたのはザ・ビートルズ。1964年は、彼らがリヴァプールからロンドン、パリ、アメリカへと続くツアーの先々で旋風を巻き起こした年だ。その旅を、アートの才能もあったポール・マッカートニーが自身のカメラで撮り続けた。近年、偶然に発見されたその写真(その多くがモノクロ写真)をポールが厳選。解説も執筆した『ポール・マッカートニー写真集』の日本語版が発売された。
「滞在していたプラザ・ホテルの通用口から脱出した後に何とか撮影した」(まえがきより)という表紙写真が象徴するように、ビートルズは確かに台風の目だった。自分たちを追いかける人や自分たちに向けられた好奇の目を捉えた写真の数々がそれを物語る。アイドル全盛期だったビートルズが、台風の中心から何を見て、何を感じていたのか。それがポール自身の率直な文章によって明かされていく。

メンバーたちの無邪気な姿、車中での居眠り、メイク中の様子など、珍しいオフショットも満載。「ポールが撮るからこそ、ふだんはなかなか見せない表情をしている。これまで見たことのない写真ばかり」と、その希少性を強調するのは日本語版の監修を担当した藤本国彦。
「四人は仲がよく結束力があって、急に売れても自分たちを見失っていなかった。写真からもそれを感じ取ることができます」

さらに興味深いのはポールが働く人々に目を向けていること。
「解説にもあるとおり、ポールは労働者階級の出身で、いわゆる普通の人々への視線、視点を持っていた。それがよく表れていて、ポールが当時、何を残そうとしていたかがわかります。ビートルズは権威的ではなく、ユーモアがあって、笑いで全部を乗り切っていくようなバンドでした。そのビートルズの本質が記録された貴重な写真集です」

だからこそ言葉の言い回しひとつひとつにもこだわって監修した。
「英語では同じ言い方でも、例えばポールはふだんから丁寧な受け答えをするし、ジョンはどちらかというとラフな言い方。それが日本語になったとき、キャラクターが出たほうが伝わりやすいと思い、そうしたニュアンスを大切にしました」

デビューから半世紀以上を経た今でも色あせない彼らの魅力とともに、歴史の空気感も織り込まれていて、写真の持つ力を実感する、大注目の写真集。あらゆる世代の方にぜひ手にしてほしい。写真集とともに、開催中の写真展も見逃せない。

■ポール・マッカートニー写真集~1964年、僕たちは台風の中心にいた~

著者:ポール・マッカートニー(撮影・解説)
監修:藤本国彦
訳者:荒井理子
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
料金:14,300円(税込)
詳細はこちら

古川忠義〔ふるかわ・ただよし〕

藤本国彦〔ふじもと・くにひこ〕
東京生まれ。音楽情報誌『CDジャーナル』編集部を経て2015年よりフリーに。著作は『ビートルズ216曲全ガイド』『ゲット・バック・ネイキッド‒1969年、ビートルズが揺れた22日間‒』ほか多数。映画『ザ・ビートルズ: Let It Be』ほか字幕監修も多数担当。相撲とカレーと猫好き。

 

photo/ 菊池健

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